光
「やぁやぁやぁやぁ皆々様、見えてるかい?
いや、聞こえているかいと言った方がよさげな気もするが、やはりココは見えているかいと問いかけるべきだと思うし、そう問いかけさせて貰ったよ。
初めましての方がほとんどだろうけれども、中には僕の有名さ故、実は初めましてじゃない人がいちゃったりもするかもしれない。けれどもやっぱり初めましての人の方が多いんだから、僕の自己紹介を聞いてもらおうじゃぁないか。
僕の名前は日乃本光輝。
日本のあいだに乃あり、光り輝く僕があると覚えてくれたまえ。
いい名だろう?
僕もそう思う。
おっと、そんな(何やってんだこいつ?)みたいな目で見ないでくれたまえよ。興奮してしまうたろう?
僕はねぇ、常々感じていることではあるんだけど、人の怪訝そうな視線ほど興奮出来るものはないと考えているんだ。
視線の先に僕がいて、その人の視界の、そして意識の大半を僕が占める。
その人にとって今その時一番の想い人こそが僕であり、その時僕はその人の家族より友人より恋人よりも何よりも考えられているわけだよ。
素晴らしいよね?興奮するだろう??
反応があればさらに最高だ。
自分の一挙一足一動作の全てに反応してくれた人は反応してくれたんだろうし、僕が人の心を占拠し動かしたという事実だけでもはや絶頂モノだよね。
…そうそう、その視線だ。
その視線の君は今、僕を見て、僕を感じて、僕が原因で、そんな視線をしたわけだろう?
すなわち、僕は今まさしく人の心を動かし、行動に移させているわけだよ。
あー、泣かないでほしい。
君のその涙の原因は僕以外であっちゃいけない、君の涙は余すところなく僕のものだぜ!
あ、ここ口説き文句ね。
まぁココまで見てくれてわかった通り、僕は天才だ。
性癖の話を出来るってのは天才以外の何物でもないだろう?
なんてったって、自分自身という人間の嗜好を完璧に理解した上で、それを分析しなくっちゃァいけないわけだから。
自分の好き嫌いすらわからない脳みそが残念な人達だってごまんといるわけだからね。
あぁ、諸君らをバカにしているわけではなく、あくまで僕自身を褒めたたえてるだけだから気にしないでほしい。
ほらそこ喧嘩をするな。
その、怒りと恐怖が入り交じったような視線を受け止められるのは僕だけだぞ?
八つ当たりはよしたまえ。
学歴も凄い。
流三大学の名前くらいは、日本国民である君たち諸君のことだ、知らないわけはあるまい。
おっと、そこのロシア系美少女には分かりづらい話だったかな?
いやしかし、いい高校いい大学と人生の崖と呼べるような段階をこうもホップステップジャンプと乗り越えてしまう自分には自分でも驚きを禁じざるをえないよね。
おっとそこ、見えてるぞ?
どうせ不満をぶつけるなら、僕の股間にぶつけたまえ。
一瞬で逝ってしまったら謝るから。
ほら!
っと、この上さらにイケメンでもあるわけだ。
すらっと細い一重まぶたに高すぎない鼻、包み込むようなKISSが出来る唇に子供受けする輪郭ともう完璧だろう?
いやー日本の女性がもう少し積極的になってくれれば彼女も30人ほどできそうな気はするんだがね?
奥ゆかしき大和撫子たちはみんな僕という財産を個人で保有することに負い目を感じているのかいっこうに付き合ってはくれないよ。
イケメン特有の悩みってやつだね。
あぁ、その目が実に心地いいよ?
そんな僕に、更に100人に1人しか持ちえない異能がついたら、コレはもう完璧じゃぁないのかな?
いやいや、そんな完璧超人なんて流石に…
理想とは実現しないから理想なんだ…
そう思うのも理解出来る。
大いに理解出来る。
しかし、天は僕という人間に二物どころか万物を与えてくれたらしい。
そう、僕は『異能者』だ。
驚いてくれたね?
まさかそんな完璧人間がいるなんて…という心の声がビンビンつたわる視線に込められているのが感じられるよ。
僕もビンビンさ!
そう。ようやくだ
ようやく、僕の異能をお披露目する時が来た。
とは言っても、君たちの視線を見る限り既に気がついている人がほとんどなのだろうし、これ以上勿体ぶるのもよしておこう。
僕の異能は…コレだッッッ!!
((ボロン…ピカー
そう、コレが僕の異能
その名も『光』だ。
この地球を照らす太陽のごとき光は僕の股間を完全に覆い隠し、その全貌を隠し続ける。
お宝とは、厳重に隠されていればいる程その価値の証明となる。
すなわち、光によって完全に防御されているこの僕の股間の価値というのは以下ほどのものか…証明終わり。照明だけに
この股間の定義は、なにもイチモツだけじゃなくとも、陰毛や穴にまで適応されるし、理論上陰毛を伸ばしまくれば僕そのものが太陽になれる日もくるかもしれないね。
そして、この光、今もLEDライト程度の光ではあるが、僕の興奮度合いと共にさらに大きくなる。
『興奮』すると『光』が『大きく』なる。
大事なことだから2回言ったよ?
あぁ、そういえばLEDを例に出した意味だけど、みんな、コレからはLEDライトの光を見る度に僕の股間を思い出すことになるだろうと思うと、あ、ほら、硬度が上がった。
おっと、僕としたことが誤字をしてしまったようだね。『光度』が上がったんだ。
いやぁ、女性諸君のガンとしてこちらを向かないその視線がすごくいいねぇ。
高貴なモノを直視できない大和撫子は大好きだ。
まぁ、LEDライトを直接みる馬鹿はいないだろうからどっちもどっちなのかな?
しかし、それも些事。
今現状、この場において最も有用な人間とはすなわち僕であり、君たちは僕を放置するしかない。
僕がどれほど疎ましくても、この出口も、明かりすらない洞窟で、唯一の光源たる僕をどうこうできるはずがない。
わかるだろう?
僕は現状、鍾乳洞の出入口が埋まってしまったという不幸を最大限利用して、僕自身の性癖を満たしたいんだよ。
おっと、だからといって女性諸君に体を差し出せだとかそういうつもりは一切ないよ?
なんせ、いざ本番になると元気なこいつは途端にしょげてしまう性質でね。
お店もろくにつかえやしないというわけさ。
いや、お店で面倒な客だなーという内心のヘドロを必死に隠してにこやかな顔で接客してくるお嬢さんも筆舌に尽くし難い興奮があるのだがそれはまぁいいだろう。
では、コレから僕は少し離れた所で自分語りでもしているから、君たちは少々遠巻きに、遠慮がちに、キチガイを見る目で見続けてほしい。
あぁ、僕の興奮状態はいまかなりのものだから、多少離れたところで僕の威光がなくなることもないし、安心してくれたまえ。」