恐怖に立ち向かう勇気
どうも、さすらいの小説家です。
今回、とても頑張りました。
それでは、本編をどうぞ。
あれから二週間。俺は全く親方に稽古をつけてもらっていない。
いや、違う。俺が避けているんだ。また、あの時みたいな思いはしたくなかったからだ。
あの時俺は、何も考えることができなかった。今までなかった突然の出来事。通用していた技や行動が全く通じなかった。そして、あの親方の本気《マジ》な顔。
いつもガハハと笑っている親方の顔があの時だけは違った。
そして、初めて向けられた殺意。足がすくんで動けなくなるような濃い、濃い殺意が向けられた。
その顔が剣を握るたびに俺の頭によぎる。俺はその感覚と向き合うのが怖く、親方との稽古をさけていった。
「マルク。今日もやらないのか?」
「ああ。今日はちょっと用事が…」
また、嘘をついてしまった。しかし、この嘘は親方には見え透いている。恐怖に立ち向かえず、ただおびえているだけの俺を親方は見破っている。
そう言って家に帰ろうとした俺に、親方は一言告げて去っていった。
「お前が勝手に落ち込んで、ビビッて、しょげるのはいいけどよ。その尻拭いをしている奴がいるって事を忘れんなよ。」
俺は半分聞き流しながらその言葉を受け止めた。そしてそのまま帰路についた。
ふと、夕焼けを見上げた。そのとき、人だかりが目に入った。
(何だ?)
俺はとりあえず近づいてみることにした。するとそこには、さっきまで見ていた光景が目に入った。そう、俺の仕事場だ。さっきまで俺が仕事をしていたところに他の担当の人がいたのだ。
(何してるんだ?)
「あっ、マルク。どうしたんだ?」
「いや、そっちこそなにやってんだ?」
「俺はさっき親方に頼まれた仕事をやってるだけだよ」
「そう、なのか」
このことか。親方がいっていたのは。でもまさか、本当に迷惑をかけていたなんて…。
「あっ、そうだ。お前今暇か?」
「ああ、暇だが」
「なら、ちょっとこれを親方に届けてくれないか?」
「えっ…」
「なんかまずかったか?あっ、そうか!お前、親方に怒られたのか!それだったら無理して持っていく必要ないぞ」
「べ、別にそんなんじゃねぇよ!」
そういって彼の荷物を受け取り、親方の方へ向かった。
~親方の部屋にて~
俺は恐る恐る親方の部屋に近づいた。しかし、何か物音が聞こえる。何か、鉄を打ちつけているような…。
階段を上るにつれ、音が強く聞こえる。俺はそっと部屋を覗いた。そこで俺はあるものを目にした。
それは、折れてボロボロになったはずの俺の短剣だった。
なぜかその剣がきれいになっている。いや、元々の物よりも質がよく頑丈そうに見えた。
「そこにいるんだろ?マルク」
ギクッ。もしかしてと思ったけれど、本当にばれていたとは。俺はあきらめて親方の下に向かう。
「俺に何のようだ?」
「あっ、えっとこれを渡せって言われて」
「やっと届いたか。」
「どういうことだ?」
「まあ、そこに掛けろ」
俺はそこにあった椅子を手元に寄せ、座った。なにやら親方が何か見せてくれるらしい。
親方は小包を開け、黒い塊を取り出した。
「これがなんだか分かるか?」
俺が分からないという顔をすると親方は続けて語りだした。
「これはファフニールの鱗だ。これでもうわかるだろ?」
そういうことか。この世界のファフニールの鱗には『精霊魔法』が宿っている。別に精霊魔法が宿っているのはこの鱗だけではない。他にもさまざまなドラゴンの鱗が魔法を宿している。
ファフニールの鱗の精霊魔法は鉄製のものと混ぜるとより頑丈で強力な武器にすることができる。いわゆる、『強化魔法』というやつだ。
つまり親方は、俺の武器を直していたのだ。
(親方…)
これじゃだめだ。親方は俺にやり直すチャンスを与えてくれているんだ。俺がここでやる気を出さなきゃ何も始まらない!
「親方!!!」
「その様子だと元に戻ったみたいだな」
「親方…。ごめん!俺、今までずっといじけてて…」
「前がどうであれ、今がちゃんとしてればそれでいいんだよ。それで?もちろんやるんだろ?この新しい『ニールソード・暗』を使って!」
「ああ!」
こうして俺は完全復活した。
この小説は不定期に投稿していきます。