OTO
ドーン!ドーン!ドドンドンドーン!
知っているだろうか。体の60パーセントが水分から出来ているということを。
なぜ今更そんなことを聞くかって?
”それ”から出た振動が空気を通して僕の体の水分を容赦なく揺らしてくるからだ。”それ”が空気を揺らした瞬間僕は横綱の張り手を食らったかのような衝撃に見舞われた。その震撼は体全体に響き渡り、心臓をも、魂をも揺らし、世界を変えた。
僕の意識は振動を醸し出す”それ”に徐々に引き込まれ、徐々に薄れていく。足は地面という存在を忘れ靴が消える。瞳は目の前のものを写すだけの鏡になり、やがて”それ”以外捉えなくなった。体は感覚という感覚を忘れ振動を受け入れるだけの器になる。僕はこの空間に一人立たずむカカシになった。感情だけを持つカカシ。音に魂を感じるカカシ。そんな僕に”それ”は全力でぶつかってくる。
「俺はここにいる。ここに存在する。聞け。聞け。聞けぇ!」
と。そう声を張り上げている。僕はその叫びに魅了される。存在しないものの存在に虜になる。目が離せない。離したくない。ここにずっといたい。離れたくない。終わってほしくない。ずっと、ずっと、ずっとずっと浸っていたい。
僕はこの日音楽に抱かれたのだ。