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平和の為の最終戦争

作者: 風

 彼女の名はオーロラ。暗黒を払い、光をもたらすとされている女神アウロラからとった名だ。彼女は“ラグナ


ロク”という終末戦争のために作られた機械兵器だった。オーロラを作ったのはこの私、アレス。私もまた“ラグ


ナロク”に勝つための機械兵器だった。しかし私は、失敗作。オーロラのように忠実でも対人戦闘が強いわけで


もないからだ。私は誰よりも知能が高かったので、開発者になった。何度も失敗してようやくオーロラを作り


出すことに成功した。


「オーロラ。オーロラにとって生きている価値を見いだしていることって何?」


「私は戦争に勝ち続けることです、ご主人様。」


「そういえばそうだったね。そうプログラムしてたんだった。」


「はい、何でしょうか?」


「いいや、何でもない。」


「そうですか。」


 突如、耳を塞ぐほどの大音量で鐘の音が鳴る。敵襲だ。


「オーロラ、準備。」


「はい、ご主人様。」


 オーロラとアレスは最速で戦闘の準備をする。


「準備はいい?行くよ!」


「はい、ご主人様。」

 準備といってもどうせ武器を装備するだけだ。


 機械兵器の二人は戦場に一番乗りをする。作戦はいつも通り、アレスが防御でオーロラが殲滅。至ってシン


プルな作戦だが、二人にとっては一番やり易い方法だ。


「いつも通り、防御が僕で、オーロラは殲滅。それじゃ、GO!」


 人間の目には速いと思うかもしれない。しかし、兵器としては、全然遅い。それもしょうがないことだ。


 敵の銃弾の雨を防御しながら接近すると、オーロラは敵兵に突っ込む。そして、手に持ったグングニルの槍


で敵を蹴散らす。当然、敵はなすすべもなく殺される。


 前方でなにやら魔法詠唱をしている輩がいる。当然、そいつも殺す。


「オーロラ、魔法詠唱を阻止しろ。」


「はい。目的を変更します。」


 オーロラは敵兵の後衛に向かって槍を投げ、槍と自分の位置を変更する。交換魔法だ。オーロラは斧の代わ


りに素手で殲滅を開始する。しかし、素手では範囲が狭いため、魔法詠唱の阻止は達成出来ない。


「オーロラ!退避!」


「はい。目的を変更します。」


 あと一歩遅ければ、確実に死んでいた。禁忌とされている暗黒魔法だ。機械兵器といえど、対禁忌用には出


来ていない。オーロラが死んでしまってはこちら側に勝ち目はない。


 そして、また暗黒魔法の詠唱を始める。今度は、詠唱が短い。これなら、十分防御できる。アレスは範囲防



御魔法を発動。それと同時に暗黒魔法の詠唱も終わる。発射。暗黒魔法と防御魔法がぶつかる。本来であれ


ば、暗黒魔法と接触した時点で仕込んでおいたカウンターマジックで相殺されるはずが、逆に、防御魔法が侵


食され始めてきた。アレスは魔力で強化し抗うも、防御魔法が破れ、アレスに直撃。


「!?ご主人様!」


 オーロラが走ってくる。


「大丈夫。まだ戦える。」


 そういい放つと、防御魔法の再構築を始める。


「ご主人様。敵兵がまたも詠唱を行っています。どうしますか?」


「とりあえず無視、歩兵を蹴散らせ!」


「了解。」


(詠唱が長い。しかもあの術式......召喚魔法?なんで今さら。........いや、あれは!?)


「全軍、直ちに退避!戦いを一時放棄し、後方まで逃げろ!悪魔召喚の儀だ!」


 アレスは兵の逆方向へ向かう。最前線だ。


「オーロラも退避!いまから宝具を使う!」


「......撤退を開始します。」


 オーロラが撤退するのを確認するのを確認すると、宝具発動の詠唱を始める。


「なりふり構っていられるか!軍神アレスの名をもって命ず。宝具“ブラスティックオブゴッズ”の解除、全魔力を消費し、神鳴魔法へと転位。..........全てを凪ぎ払え!」


 宝具の発動と同時に、敵軍の悪魔召喚の儀が終わる。あの悪魔は恐らく最高位だ。あのまがまがしい魔力とシルエットを見ればわかる。 


「バーサーカー!?最高位の悪魔をあそこまで変異させた!?」


 宝具がバーサーカーとぶつかる。宝具を浴びながらもその歩みは止まらない。それどころか、更にパワー 


アップしているように見える。


「魔力を吸収して自分の力に変えている!?」


 バーサーカーはアレスを殴る。その拳はとても重く、例えアレスの防御魔法を使ったとしても破られるほど


の威力を持っていた。それが直撃したアレスは無事ではない。


「ご主人様。今回復魔法を.....。」


「いや.....い...い。魔....力を、す....こし。」


「ごめ.....ん。あ....りがとう。で...も、もう無.....理そう...だ。僕は...どう...せ死ぬ。だか...ら、これ、が最


後。キミ....にこれ..をあ...げるよ。」


 そういってアレスは苦し紛れに、残りの魔力をオーロラに注ぎ、魔力と一緒にあるプログラムを始める。プ


ログラムを終えると、オーロラの目から涙がこぼれ落ちた。


「これは、人.....間の感...情。僕....からの最..初で最、後のプ....レゼ...ントだ。今日、オー....ロラの誕生日...


だろ?」


「........はい。ありがとうございます、ご主人様。いえ......アレス。」


「嬉し.....いよ。最後、にオー.....ロラの口から...僕の名....前を呼、んでくれて。これ....で安....心して死ねるよ。今まで....ありがと....う、オーロ、ラ。」


 そういい終えると、アレスは静かに目を閉じ、死んだ。アレスは最後までずっと笑顔だった。


「ありがとう。最後まで。ここまでしてもらって。あなたのおかげで.......。」


「うあああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 ーーーーーアレスが死んでから何分たったんだろうか。いや、今はどうでもいい。あの憎き悪魔を、バー


サーカーを倒してやる。アレスの分まで!


「........大丈夫。アレスの魔力とこの感情があればできる。なんだってできる!」


「全軍、その場に待機!今から私が、この戦争を終わらせる!」


 そういい放ち、バーサーカーに突っ込む。


             

               ーーーーーー1週間後ーーーーーーーー


 私は王の所に呼び出された。戦争で、今は亡き軍隊長アレスの意思を受け継ぎ、勝利したことへの勲章を授


与するとのことらしい。しかし、私は受け取らなかった。


「勲章はいりません。」


「何だと!?」


「まあ良い。」


「王よ、しかし.....」


「良いと言ったのだ。聞こえなかったのか?」


「.........」


「それで、勲章は受け取らないとは?」


「言葉の通りです、王よ。私は勲章を受けとりたくないのです。」


「そうか、ならお前の願いを聞こうではないか。国に貢献した者にはある程度まで願いを叶える事が出来


る。」


「分かりました。では、私の“永遠の伴侶”アレスを生き返らせることと、私とアレスの娘が欲しいのです。」


「貴様、機械人形の癖に強欲な!」


「分かった。ならば一週間待て。一週間後にアレスとその娘をお前の所に届けよう。」


「ありがとうございます。」



           ーーーーーーー1週間後ーーーーーーー


「アレスと娘の取り扱い説明書?こんなものは、こうして、っと。」


 取り扱い説明書はブリブリに割いて燃やす。


「アレス、アストルテ。もうご飯出来ましたよ。」


「..........え?ああ、もうそんな時間か。」


「やったー!ご飯だー!」


 こうして永遠に終わる事のない平和が訪れました。

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