表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

2.

「お昼だね。何か食べようか」


 準は、園内にあるフードコートを指差した。


 フードコートと言っても、ショッピングセンターにおかれているような立派なものではない。


 空の下に汚れたテーブルが置かれ、冷え切った椅子があるだけだ。


「……」


 さすがに、ここでは体が冷えてしまう。


 だからと言って、暖かい場所で食べたいというのは、園を出る以外にないのだ。


「それとも、動物園を出て、どこかの店に入る?」


 準は佐織の顔色を伺うように言った。


 園を出るにしても、まだ半分も動物を見て回っていない。佐織もそれは十分わかっているのだ。


 寒さを堪えて準に合わせるか、ここはわがままを通すべきか。


 佐織はちょっとの間考えると、ニッコリと笑ってこう言った。


「ラーメンが食べたいな」


 準は、ホッとしたように笑顔を出すと、売店へと歩き出した。




「う~ん。彼女、かなりのつわものと見た!」

「え? これまた、どうしてです?」

「“寒いけど我慢するわ詐欺”ですよ!」

「“寒いけど我慢するわ詐欺”?」

「そうです! この健気さが、相手の心を掴むんですよ」

「そんなものですかぁ」




 お昼を食べ終り、動物たちを見て回る。


 食べたせいか、大分体は温まってきたように感じる。


 二時を回った頃、二人は動物園を出ると、電車での移動となる。


 都内なのだから、電車の移動は当たり前のことだと認識すべきだろう。


 しかし、佐織は準に言った。


「免許は? 車は?」

「え? 免許はあるよ。車は……都内なら、要らないよね」

「そうなんだ……」

「だって、止めるところがないし」

「……そうだね。でも、ドライブも……いいなって」

「ドライブか……そうだね。じゃさ、今度車を借りてくるから、そしたらドライブに行こうよ」

「ううん! いいの、いいの! 別に行きたいわけじゃないから。気にしないで!」


 佐織が必死に否定して見せるが、準は逆に次のデートでは車を用意するからと約束してしまった。




「“小さなわがまま詐欺”ですな」

「何ですか、それ?」

「こうやって、チラッとわがままを言ってみて、相手の反応を見てみる。そして、引く! 見事です! こんなことをされたら、誰だって参りますよ」

「そういうものですかぁ」


 坂内は、自分だったらどうだろうと想像してみた。


 確かに、付き合いだして間がない相手なら、彼女の意向に沿うことだけを考えるだろうと思い至った。が、全てが黒鷺の言うとおりになるものだろうかと、疑問が湧き出していた。





 その後、観覧車を乗りに行ったり、海が見える場所を散歩したりと、これが暖かい季節なら最高のデートコースだったはずだが、残念なことに寒すぎた。


「今日は楽しかったぁ」


 夕食を食べ終わると、佐織は満面の笑みでそういった。


「もう、時間だから帰るね」

「え? だって、まだ」

「明日早いから。帰らないと」

「そうか、じゃぁ仕方ないね」


 時計は八時を回ったばかりだ。


「駅まで送るね」

「ありがとう」


 二人は駅へと向かう。向かう途中に、色とりどりのショーウインドーが、佐織の目を奪った。


「きれい……」


 そこにあったのは、薄ピンクに光る宝石をあしらったペンダント。


「高いなぁ……」


 佐織がショーウインドーから離れると、準は値札を確認した。





「これもまた! 相手の心理をついてきてますねぇ」

「これも詐欺ですか?」

「これは、“いろいろ詐欺”が使う手の一つですが、相手に残像として残す手法です。自分が欲しいのはこれなんだと、相手に植え付けるんですね。しかも、自分には『高いから買えない』という経済状態もそれとなく、教えている」

「そんなものですか」





 駅に着くと、二人は同じホームに立っていた。


「またね」

「次はドライブに行こう!」

「そうね」


 彼女の微笑みと同時に、電車がホームに滑り込んできた。



 家に帰り着いた佐織は、玄関から歩いた通りに洋服を脱ぎ散らかしていく。これは、父親からの遺伝らしい。


「佐織! ちゃんと洋服を片付けなさい!」


 母親の怒声が飛ぶが、全く意に介していない。


 そのまま風呂に飛び込み、化粧を落す。


 全てを風呂で済ませるのだ。


 風呂から出てくると、ボサボサ髪にノーメイク。眉は無くなり、どこの般若だと聞きたくなる。


 服装はと言えば、上下ヨレヨレのジャージ姿だ。


 その姿で、髪をドライヤーで乾かすこともなく、タオルでゴシゴシと拭きまくっている。


「お母さん、今日は夕飯いらないからね」

「食べてきたの?」

「うん」


 それだけ言うと、階段を上って行った。


 そして、自分の部屋に入ると大きく伸びをして見せた。


「あー!!! 疲れた!!!」


 かなり大きな声である。


「ネコかぶってデートしてるのも、疲れるんだよね」


 そう言うと、ドアを勢いよく閉めた。


 そのドアにつけられた小さなプレートが、閉まったドアの勢いで大きく揺れた。


 プレートにはしっかりと今の佐織のことが書かれていた。


『女 休止中!』




「素晴らしい! ここまで自分を分かっている詐欺師もなかなかいませんよ」

「そうなんですか?」

「そうですよ! あれだけ“可愛いでしょ詐欺”を繰り広げて、彼を罠にかけたのです。そして、家に帰ればまさに彼女自身だ。ドアのプレートもさすがだ!

 これぞ、詐欺師中の詐欺師ですよ!」

「これが、詐欺師の本性と言うことですね」

「いやいや、これも詐欺のひとつですよ」

「どういうことですか?」

「これはね、明日になれば又化粧をして女を再開するのです。つまりは“女止めてますよ詐欺”です!」


 黒鷺は『いい仕事をした』と言いたげに、満足そうにソファーに身を委ねた。


 坂内は内心(これじゃ、第二弾は無いな)と考えていた。


 エンディングテーマが流れると、虚しくも坂内の声が『またお会いしましょう』と発せられた。



エンド

いかがでしたか?

笑ってもらえたかな~


えぇぇぇぇ。不謹慎とか、おこ~?www


注☆全ての女性が、作中の女性と同じ行動及び思考ではありまてん!

          (`・ω・´)シャキーン

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ