表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蕾たち  作者: 風鈴
4/4

白む朝








「―――……もせくん、百瀬君」




遠くから、先生のしゃがれた声が聞こえる。



いつもなら、下宿先の叔母さまが通学時間ギリギリな百瀬をムリヤリ起こしてくれるのだからなんだかむず痒く感じた。



一体どうしたのだろうか、などとぼんやりとした頭のまま夢の世界で考えてみる。




「そろそろ起きなければ、目的地がもう近くだよ」


「……もくてき、ち」




ここで、漸く百瀬の瞳がうっすらと開く。まず見えたのはやはり、先生の皺だらけの面。




「もうすぐ夜が明ける。支度しようか」


「……あっ、はい」




だんだん脳が眼を覚ますのが分かった。百瀬が手櫛で頭をとかすと、短い黒糸が掌に何本かまとわりつく。些末な事だが心が揺れたのは事実で。



残っていた憐れな髪もいつしか埃共々どこかに旅立った。




「どのくらいここに滞在しますか?」




尋ねると、先生は微かに眉で八の字を作る。



それだけで返答としては十分だったが、先生は律儀にも応えようとしてくれた。




「帰るときまで、としか言えないね」




あの僅かな隙間から外を覗かなくとも、空が白んできていることは先生の白髪混じりの頭がはっきりと浮かんできていることで伺えた。



朝が待ち遠しかった。





.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ