本日のお題 3 (ぬるい作品です)
こひらわかさんの本日のお題は「ラベル」、ぬるい作品を創作しましょう。補助要素は「ライバル」です。 #njdai http://shindanmaker.com/75905
「はあ、めんどくせえな」
彼は、持っていたペンを無造作に置いた。
隣に座っている彼のライバルは、正しい姿勢を崩すことなく、目の前のラベルに流麗な文字を書き入れている。
「なあ、お前、よくそんなにきっちり出来るよなあ」
声をかけられた彼のライバルは視線を向けることなく、だがしかし、手を止めて律儀に彼の言葉に返事をした。
「この仕事は、僕らにしか出来ない仕事だから」
「だってよお、何で俺らがやらなきゃいけないんだよ」
「そう決まっているから。それと、後で困るのは君だよ」
そう言うと、彼のライバルはラベルを書く作業に戻った。
「まじでめんどくせえ。どうせすぐ消えるものなのに、どうしてこんなことやらなくちゃならんのさ」
「それは、定められているものだからだよ」
ほわあと欠伸をした彼は、部屋に入ってきた監督者の姿を目にすると、途端に姿勢を正した。
「二人とも、精を出していますか? またあとでまとめて取りに来ますから、それまでに仕上げておいてくださいね」
「はいっ、わっかりましたあ」
彼が元気よく返事をする。
監督者がいなくなると、彼は椅子の背にもたれて、だらりと姿勢を崩した。
「神様って、めんどくせえな」
「僕と君、どちらかの世界が滅ぶ予定なんだ。僕は、創ったものを監督者に壊されたくは無い。だから君が創った世界には負けるつもりは無いよ」
そのラベルには、彼とライバルにしか読めない文字が書かれている。
ライバルの象形文字のようなそれをざっと眺めると、彼はペンを取り、真っ白いラベルに文字を書き入れる作業を再開した。
『俺の世界。地球。適当に繁栄して、最後は人間の過ぎたテクノロジーで滅ぶ。逃げた人間が、あいつの世界に逃げ込んで、そこで血みどろの争いを繰り広げる。』
そこまで書いて、彼はラベルをぐしゃりと丸めた。
「まあ、俺は、どうでもいいんだけれどね」
そう言いつつ、彼は適当に文字を走らせる作業に戻ったのであった。
【了】