本日のお題 14 (「クッションor座布団」 冷やかな作品)
こひらわかさんの本日のお題は「クッションor座布団」、冷やかな作品を創作しましょう。補助要素は「同級生or同僚」です。 #njdai http://shindanmaker.com/75905
ひや‐やか 【冷 (や)やか】
[形動][文][ナリ]
1 つめたく感じられるさま。「―な山の空気」《季 秋》「暁の―な雲流れけり/子規」
2 態度が冷淡であるさま。「―な目つき」
3 落ち着いていて物に動じないさま。冷静なさま。「常に―な傍観者でいる」
……見られた。
同僚に、しかも同じ部署の松本君にYes/Noクッションを購入するところを見られた。
「あの……」
お互い、レジ前で一瞬静止する。
(松本君、君はなぜ会社帰りにハンズになど来ているのかね。べ、別に私は彼氏と上手くいっていないわけでもHがマンネリになってきたわけでも最近お互い疲れてしなくってもいいやって関係になってきているわけでもないのよっ! そう、これは友達へのサプライズパーティーで渡すネタなんだから!)
……そんなパーティーないけど。
(焦るな、落ち着け私! しん、と、心を無にするのよ! さあ無にっ!)
「松本君、偶然ね」
「ええ」
しん……。
いや会話が止まっちゃいかんだろ自分よ!
内心焦りながらもふと松本君の手元を見ると、何やら見慣れない物体が。
それは。
「鈎針と毛糸……?」
……見られた。
同僚に、しかも同じ部署の佐々木さんに編み物セットを購入するところを見られた。
「あの……」
お互い、レジ前で一瞬静止する。
(佐々木さん、あなたはなぜ会社帰りにハンズになど来ているのですか。いやあのですね、これは母が、編み物が好きでしてね、会社帰りに買ってきてくれと頼まれたのですよ。ははは母ったら突然趣味に目覚めちゃって息子に買いに行かせるもんだから困っちゃいますよね!)
……遠方に住んでいる母にはそのような趣味はありませんが。
(焦るな落ち着け俺! 見た目は柔道かラグビーやってそうな強面でいかつい俺が、まさか家では鈎針で編みぐるみを作るのが趣味なんて言えるわけがないっ!)
「松本君、偶然ね」
「ええ」
やっとそれだけ言えた。
しばらくの沈黙の後、佐々木さんがポツリと一言。
「鈎針と毛糸……?」
その言葉に俺の背中が総毛立ったが、表面上は極めて冷静に振舞う。
が、しかし。
(うああ、気付かれたあああああ!! もうこれが会社にばれたら生きていけないい!!)
焦りながらも俺は佐々木さんが抱えているものを認識する。
「クッション……?」
クッション。
その言葉に私の背中が粟立ったが、表面上は極めて冷静に振舞う。
が、しかし。
(ひいい松本ぉ! それ以上その単語を言うなぁ! 正式名称で呟いたらお前とは金輪際口きかないからねっ!)
「お客様、どちらが先にお会計なさいますか?」
お互いはっと気付いたようだ。
私は冷静に片手を出した。
「松本君、どうぞどうぞ」
俺は無表情で片手を差し出した。
「いやいや佐々木さんこそどうぞどうぞ」
「いやここは先に」
「レディーファーストで」
「お客様……?」
そうして彼らは表面上、お互い相手を冷ややかに見つめていたのである。
【了】




