診察室へようこそ
10月ももう少しで終わる頃、うっかり風邪を引いてしまった。
気温が急に下がったにも関わらず、窓を開けて昼寝していたのが原因だと思う。
ストックしていた市販薬でも飲んで、さっさと治そう。
そう思っていたのだが、棚に置いてあったのは空箱だった。
また市販薬を買うか、それとも病院に行くか。
悩んだ結果、今回は病院に行くことにした。
近くに病院はあるのだが、俺は少し離れた病院に行くことにした。
近くの病院の医師が、なんか胡散臭いからだ。
本当に診察してくれているのか怪しい。
とりあえずで判断し、薬を処方しているんじゃないか。
そんな悪評が出回っている。
そんな近所の病院に対し、少し離れた病院は最近開院した新しい病院だった。
「問診票に記入をお願いします」
新しい病院の受付のお姉さんはとても美人だった。
お姉さんだけでなく、開院したてということもあり、視界に入る全てが綺麗だった。
今度から体調崩したらここに通おう。
そんなことを思ってしまうくらいには好印象だ。
順番を待っている間に、何人かが名前を呼ばれて診察室に入っていく。
ちょっと気になったのは、誰も戻ってこない、ということだった。
一般的には、診察室に入り医師の診察が終わったら、また同じ扉から出てくる構造だ。
だが、ここはそういうシステムではないのかもしれない。
別の扉から出ることで感染対策をしている、なんてこともあるのかもしれない。
もしそうだとしたら、しっかり考えられている病院だなと思った。
「◯◯さん、診察室にお入りください」
俺の名前が呼ばれた。
診察室の扉をノックして、失礼します、と言いながら入室する。
中には若い男性の医師が座っており、扉の傍には女性の看護師が立っていた。
俺は促されるままに椅子に座り、どうしましたか? という医師の問いに答えた。
その時だった。
首筋に強烈な痛みが走ると同時に、意識が──
□ □ □
患者の男がその場に崩れ落ちる。
男の背後には、扉の傍に立っていた看護師の女が立っていた。
その手には、高圧の電流をバチバチと発生させるスタンガンが握られていた。
「この患者は風邪の症状か。ならAの倉庫に入れておけ」
医師が問診票を見ながら看護師に指示を出す。
すると、看護師は崩れ落ちた男の両脇を抱えながら、引きずって奥の部屋へと消えていった。
「なかなかに良い仕事を思いついたもんだ」
医師はその場で大きく伸びをした。
ただ座っているだけの医師の役も、なかなか疲れるものだった。
この病院では、患者を診察室に入室させてはスタンガンで意識を消失させ、奥の部屋に運んでいた。
奥の部屋にはさらにいくつかの扉があり、患者の健康状態によって振り分け、放り込む倉庫になっていた。
病院というのは仮の姿。
その実態は、人身売買および臓器売買の仕入業者だった。
医師役の男は机の上にマイクで次の患者を呼び出す。
ノックの後に扉が開いた。
さぁ、次の品物はどんな状態だろうか。
医師役の男は口元を歪に吊り上げた。
病院選びは慎重に。




