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診察室へようこそ

掲載日:2026/10/30

 10月ももう少しで終わる頃、うっかり風邪を引いてしまった。

 気温が急に下がったにも関わらず、窓を開けて昼寝していたのが原因だと思う。

 ストックしていた市販薬でも飲んで、さっさと治そう。

 そう思っていたのだが、棚に置いてあったのは空箱だった。

 また市販薬を買うか、それとも病院に行くか。

 悩んだ結果、今回は病院に行くことにした。


 近くに病院はあるのだが、俺は少し離れた病院に行くことにした。

 近くの病院の医師が、なんか胡散臭いからだ。

 本当に診察してくれているのか怪しい。

 とりあえずで判断し、薬を処方しているんじゃないか。

 そんな悪評が出回っている。

 そんな近所の病院に対し、少し離れた病院は最近開院した新しい病院だった。


「問診票に記入をお願いします」


 新しい病院の受付のお姉さんはとても美人だった。

 お姉さんだけでなく、開院したてということもあり、視界に入る全てが綺麗だった。

 今度から体調崩したらここに通おう。

 そんなことを思ってしまうくらいには好印象だ。


 順番を待っている間に、何人かが名前を呼ばれて診察室に入っていく。

 ちょっと気になったのは、誰も戻ってこない、ということだった。

 一般的には、診察室に入り医師の診察が終わったら、また同じ扉から出てくる構造だ。

 だが、ここはそういうシステムではないのかもしれない。

 別の扉から出ることで感染対策をしている、なんてこともあるのかもしれない。

 もしそうだとしたら、しっかり考えられている病院だなと思った。


「◯◯さん、診察室にお入りください」


 俺の名前が呼ばれた。

 診察室の扉をノックして、失礼します、と言いながら入室する。

 中には若い男性の医師が座っており、扉の傍には女性の看護師が立っていた。

 俺は促されるままに椅子に座り、どうしましたか? という医師の問いに答えた。

 その時だった。

 首筋に強烈な痛みが走ると同時に、意識が──



 □ □ □



 患者の男がその場に崩れ落ちる。

 男の背後には、扉の傍に立っていた看護師の女が立っていた。

 その手には、高圧の電流をバチバチと発生させるスタンガンが握られていた。


「この患者は風邪の症状か。ならAの倉庫に入れておけ」


 医師が問診票を見ながら看護師に指示を出す。

 すると、看護師は崩れ落ちた男の両脇を抱えながら、引きずって奥の部屋へと消えていった。


「なかなかに良い仕事を思いついたもんだ」


 医師はその場で大きく伸びをした。

 ただ座っているだけの医師の役も、なかなか疲れるものだった。


 この病院では、患者を診察室に入室させてはスタンガンで意識を消失させ、奥の部屋に運んでいた。

 奥の部屋にはさらにいくつかの扉があり、患者の健康状態によって振り分け、放り込む倉庫になっていた。

 病院というのは仮の姿。

 その実態は、人身売買および臓器売買の仕入業者だった。

 医師役の男は机の上にマイクで次の患者を呼び出す。

 ノックの後に扉が開いた。

 さぁ、次の品物はどんな状態だろうか。

 医師役の男は口元を歪に吊り上げた。

病院選びは慎重に。

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