本の紹介45『野生の棕櫚』ウィリアム・フォークナー/著
似て非なる二つの物語で紡がれる異色の文学
これは最近読んだ本になるのですが、ヴィム・ヴェンダース監督の「パーフェクト・デイズ」という映画の作中で主人公が読んでいたことから興味を持ちました。棕櫚は「しゅろ」と読み、これはヤシ科の常緑高木のことです。
内容については事前知識なしで読み始めたのですが、一文が長く、括弧書きも多いので文章がすんなりと読み込めず、正直いって読みづらいというのが第一印象です。上手く言えないのですが、変な小説だなという感想が真っ先に浮かびました。
本作は二つの異なる物語が交互に展開するというちょっと変わった構成になっています。
苦学して医師となった青年とお金持ちの人妻の逃避行を描いた「野生の棕櫚」というお話と、洪水の救助活動のために刑務所から外に出ることになった囚人が河に流された妊婦を救助し、共にボートに乗って安全な場所を目指して旅をする「オールド・マン」というお話に分かれています。
短編集のように一つのお話が終わってから次の話に移るのではなく、片方の話の途中でもう片方の話に切り替わります。
二つの物語はそれぞれ独立しており、なぜ本作がこのような構成になっているのだろうか、その意図はどこにあるのかを考えながら読み進めることになります。
共通しているのは男女が一緒に旅をするという点ですが、それ以外の部分は対照的に描かれています。「野生の棕櫚」の主人公は医学を修めた青年と裕福な家庭の人妻であるのに対し、「オールド・マン」の方は強盗未遂で懲役15年となった囚人と素性の知れない妊婦が主人公となっています。この対処的な主人公たちが辿る道を交互に描くことで本作のテーマがより鮮烈に浮かび上がってくるという仕掛けです。
分かりやすいギミックではなく、物語のテーマを主軸として二つの独立した物語を配置しているものであり、流し読みしているとその意図を見逃してしまうと思います。何を描こうとしているのか、具体的なストーリーの背後に流れる思想のようなものに気を配りながら読み進めることが肝要な作品です。終わり




