3本足のカラス
奏が八雲の店をでると、辺りはすっかり暗くなっていた。スマホを見ると19時を回っていた。店に着いたのは17時くらいだったけど…。
(そんなに長居をしたかな?)
気にはなったが、何せ寒い。あまり深く考える余力はなく、奏は肩をすくめ帰ろうとした。
「うわぁ!」
足元に何かがいるのに気がついた。
カラスだ。まさに闇夜のカラスで気がつかなかった。
「ビックリした…」
驚く奏とは反対に、カラスは微動だにしない。
(街中のカラスは人慣れしてるんだな)
「寒いんだからさ、カラスも早く家に帰りなよ」
奏はカラスに手を振ると足早にバス停へと向かった。
(さっきのカラス…足が3本あった?)
まさかね。
奏が八雲の店の前であったカラスは、じーっと奏の後ろ姿を見ていたが見えなくなると、店の扉をくちばしでコツコツつついた。
しばらくすると八雲が扉を開けて顔を出した。
カラスは180cmある八雲を見上げると
「フンッ」
と言うと、ピョンピョンと店の中に入ってきた。
店内は本棚が邪魔で飛べたもんじゃない。
「あれが佐倉の番人か。まだ若いが使えるのか」
しゃべった。カラスがしゃべった。
八雲はヒョイとカラスを抱き上げると、カウンター奥に入っていった。店内側からだと本棚に隠れているがカウンターの奥は6畳ほどの広さがあった。
灯油ストーブが焚かれ、傍には古いロッキングチェアが置かれている。
八雲は3本足のカラスをチェアに乗せた。
「奏の番人の免状を届けてくれるかい」
先ほど奏が血判を押した紙をたたみ、さらに和紙で包むと表に墨で何やら書いた。
それを「はい」とカラスに差し出す。
3本足のカラスはヒョイと足を1本持ち上げそれを掴んだ。
「八雲、茶と菓子くらいだしてもてなせ。ワタシは鬼界から来たばかりだぞ。労え」
くちばしを世話しなく動かし捲し立てる3本足のカラスの言葉を「はいはい」と聞き流しながら持ち上げる。
「おい、八雲。せめて…」
店のドアを開け、3本足のカラスを空へと放る。
「こらー!八雲ーー!」
カラスは羽をバタつかせながら夜空へと消えていった。




