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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

しあわせなかぞく

作者: 黒村行人

こんにちわ。過去作品となっております。高校の課題用に提出した作品となっております。

 痛い。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたい

 汗と血と何かで視界が歪む。逃げよう、とすら浮かんでこない脳に吐き気を覚えながらもこの空間に何かがいることだけわかる。

 怖い。本能が狂い叫ぶ。この何かが明らかにヒトではないのだと。

―なんで、なんで思い出せないのよ?四肢切断までしてるのに。早く私を見なさいよ!―

 何かが何かよくわからないことをほざいている

 視界が歪む。何も考えられない。


 どうしてこうなった


 思 い、出 せな、い


 脳のいずれかが欠如でもしているのだろうか。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 痛くて堪らない筈なのに僕の脳は思考を続けたがる。この場から逃げ出したいが一向に足が動かない。あれか。人間は大事な時に限って筋肉が硬直してなんたらこうたら。

 

 ―キヲクを遡るしかなさそうね。少々荒っぽいけどコレがこの子のため。早く私を思い出して―


 くだらないことを考えているうちに僕の意識は暗闇の中に下っていった。


 ******************

 

 列車にゆらりゆらりと揺れながら僕は溜息を吐く。

「つぁ・・・なんか緊張する」

 と、隣に座っていた我が可愛い弟が口を開いた。

「兄ちゃん何緊張してんだよ。俺はめっちゃ楽しみなんだけど!」

 しまった、口に出してしまっていたか。

「だがしかし、可愛い弟よ。人生楽しいだけで生きていったらアホになるぞ。僕のようにな」

 どうだこの世界最強の自虐ネタ。これで我が可愛い弟も爆笑不可避な筈…

「いや、兄ちゃんはもともとアホだから関係ないし」

 一蹴された。兄ちゃん泣いちゃっていいかい。

 心の中でムンク並みの悲鳴を叫びながら僕らを乗せた列車は目的地へと向かって走っていった。


 父と母が亡くなった原因は至って普通の交通事故だった。残された僕と弟は、こんな大都会で、ましてや中学生の弟と高校生の僕とでは暮らしていける筈がなかった。そんな渦中、僕らに手を貸してくれたのは隣のおじさまだった。

 文面だけでは胡散臭さレベルマックスだが、赤の他人という訳ではない。もともと父の古い友人でたまたま近くに住んでいたらしい。僕が生まれる前から家族ぐるみでの付き合いで、僕からしたら最早家族である。

 しかし、そのおじさまは仕事が忙しく、僕らの面倒は見れないと。だから僕らはおじさまに彼の故郷の島に行きなさいと言われた。こんな話こそ胡散臭さレベルマックスなのだが、当時の僕らには肉親など思い当る節もなかった。

 だから、頼るしかなかったのだ、おじさまに。


 「兄ちゃん!駅着くよ!次フェリーだからマジ楽しみ!」

 我が可愛い弟の声に僕は意識の奥底から戻った。そうかもう駅か。

列車を降りると、次はどうやら島へ直通だというおじさまの知り合いの方のフェリーに乗せてもらって島に行く予定だ。

知り合いの方というのは大丈夫な人だろうか。

酔わないといいな。


「・・・ッ、ゥゥウェグアァェゥエエエ」

「兄ちゃん大丈夫?人間が出していいレベルの気持ちの悪い声を軽く越えちゃってるよ」

 知り合いの方は少々毒舌だが優しい方だった。ただ、今思うことがあるとするのならば、運転がめちゃくちゃ荒かった。

「ッ・・・僕はもう駄目だお前だけでも生きろ可愛い弟よ・・・」

 そうか、これが僕の遺言か。悪くないのかもしれないな。

「兄のいねぇと、その我が可愛い弟とやらが嫌な思いをするだろうがよ。わかったならさっさと死んだふりをやめて起き上がれ」

 くっ、正論すぎて死んだふりをしているこっちの方が恥ずかしくなる。

 と、だんだんと島らしき影が見えてきた。

そんなに大きな島には見えない。んあれ、意外と建物無いっすけど。流石にコンビニが無いとかないよね?

「兄ちゃん、思ったより田舎じゃね?」

 おいこら、我が可愛い弟よ、目の前に住民の方がいるのにそれはないだろ。泣いちゃうだろ。

「こっちだって知っとるわ。コンビニがない島なんて・・・無い島なんてッッッ」

 あ、無いんだマジかどうやって生きていこう。てかなんか初めてこの人と息が合ったかも。

 そうこうしているうちに港に着いた。

「ふむ、マジでなんもないな」

「兄ちゃんのほうが不謹慎だろ」

 反論しようとしたが、自分の行動を思い返してみれば我が可愛い弟の言い分が至極当然だと気づく。少し前の自分にドロップキックしたい。

「おぉいらっしゃったかぁ。幼子は久々にみるのぉ」

 初老の老人が話しかけてきた。村長だろうか。すごい語尾伸ばしてくる村長代表みたいだな、この人は。

「さぁさぁあなたがたの家はこちらです。あいつから聞きましたぞぉ。こんなお若いのに親御さんを一気に失くしてしまわれたとはぁ。せめてここではゆったりとした時間を過ごして下さいましぃ」

 なにこの聖人みたいな人。久しぶりにここまで優しい人に出会えたからか、僕の涙腺は決壊寸前だった。

 その後、村長さんからは僕らはまだ子どもだからと、無償で家と食材を工面し、家に居るだけでいいと言われた。

 だけど、この島には学校自体が無く。僕らと同じ年齢の子どもすらいない。

 つまりは暇なのだ。僕としては我が可愛い弟が居てくれるだけでいいのだが、

「兄ちゃんといるだけじゃつまんない」

 兄ちゃん今日泣きそうになるの何度目だろうか。我が可愛い弟の頼みならば仕方ないと思い、村長さんに聞いてみたところ、畑仕事を手伝ってくれたら嬉しいという。正直、僕も我が可愛い弟もインドア派なんだが、当の本人が非常にやりたそうな目をしていたので僕らは畑仕事に勤しむことにした。

「着いたぞぉ。ここが新しい君たちの家じゃぁ」

 村長さんが案内してくれた家は、ザ・古民家という感じでなかなかの威厳を放っていた。

 村長さんによると、築百年は越えているらしい。これを聴いて我が可愛い弟は幽霊やらなんので大喜びである。尊い。

「んじゃぁ、儂は帰るとするよぉ。存分にこの島を楽しんでくれぇ」

 そういうと村長さんは去っていった。[新しく住む土地が遠くの島]というのに僕はかなりの不安を覚えていたが、どうやらそれは杞憂だったようだ。島の方々はみんな優しいし、なにより我が可愛い弟がいる。それだけで僕は満足だ。そう思いながら期待に胸を膨らまし、重苦しい扉を開けた。

「マジか・・・」

 扉の先では見渡す限りの蜘蛛の巣を埃が舞い散っていた。

「兄ちゃん、任せた♡」

「いやだめだ。流石に手伝え」

 どこまでも我が可愛い弟を甘やかせると思うなよ。僕はこの何十年も使われていなさそうな古民家にあいつがいないか心配なのだ。

 あいつは見た目だけで、中身は温厚とか言われているがそれはデマだ。知らない合間にこちらに詰め寄ってくる。名前すら出すのも憚れる、奴らに安易に手を出すともう現実には戻れない。なぜなら奴らは・・・

「兄ちゃんあっちにゴキブリおる!」

「うぐぁああああああああああああああ」

「・・・?兄ちゃん?兄ちゃぁぁぁぁぁん」

 この後僕はどうにか蘇生できました。それに、我が可愛い弟も率先して掃除を手伝ってくれました。

本当にありがとう。


「ふぅ終わった」

 いつ奴と出会うのかわからない激しい緊迫感の中、 僕らは掃除を終えることに成功した。別の意味で心配だった、トイレや水回りなどはそこまで汚いという訳ではなく、スムーズに進めることができた。本当に見違えるように綺麗なった我が家を見て、一層のことこの島での暮らしが楽しみになってきた。

「まぁ!とてもきれいになっているわね」

 籠を持ったおばさまが勝手にマイホームに入ってきた。いや、田舎だとこういうのって普通だったりするのか・・・?

 不法侵入など全く気にしていなかった我が可愛い弟が目をきらきらさせながらおばさまに問う。

「おばちゃん!その籠の中なに?」

 いや、我が可愛い弟よ、最初は挨拶ではないのか?今我が可愛い弟の後ろに隠れている僕が言えたことでは全くないが。

「はいはい、ちょっと待ってね」

 なにこのめっちゃ子供に慣れているよ的なおばさまは。これはめっちゃ嬉しいサポーターかもしれない。

 その後、おばさまから籠に入っていた新鮮な肉や野菜、調味料などを頂いた。

「どうせだったら私が今日のお夕飯作っちゃおうか」

「いえいえ、流石にそこまでしていただくわけにはいきません。もう十分嬉しいので」

 正直、おばさまのご厚意には頭が上がらないのだが、これでは我が可愛い弟とだけの時間が減ってしまう。なんだかんだ前住んでいた時もおじさまに作っていて貰ったりしていたから、僕は我が可愛い弟との水入らずの時間が楽しみだった。

「そうかい。そんなら兄弟で仲良く食べるんだよ」

 察してなのかはわからないが、おばさまはさっさと行ってしまった。神。ありがとう。

「さて兄ちゃんに料理は任せんさい!」

「え、兄ちゃん絶対下手くそだから俺が作る。そこら辺に座っといて」

 え、我が可愛い弟が料理作ってくれるんだったら反論する気ないや。そう思いながらプライドが壊滅した僕は席に着いた。

「今日のメニューは白米、豆腐の味噌汁と茄子天ぷらね。兄ちゃん茄子好き・・・でしょ」

 湯気が上がり、とてもおいしそうな料理が出来上がっていた。我が可愛い弟がどうして僕が茄子が好きと知っていたのか知らないが、とりあえずは食べてみよう。

「!う、美味い。なんだこれは。最高だよ」

「えへへ、兄ちゃんにそこまで言われると、俺、嬉しくなっちゃう。」

 衣がとてもサクサクで噛めば噛むほど茄子のうま味が溢れ出してくる。それがごはんに合うこと合うこと。そこに味噌汁を掻き込むことでより味わい深くなる。僕はもう今日何度目かもわからない涙を流した。

 その後はお風呂に入ったりしながら我が可愛い弟と同じ布団で寝ることができた。決して夜這いするとかではない。断じて!


「村長さん!僕は何をすれば?」

 次の日、我が可愛い弟のとても美味い飯を食い、僕らは仕事を探しに村長さんのところへ向かった。

「ではぁ、兄さんの方は儂らと畑仕事ぉ、弟さんの方は編みなどの内職を頼むぅ」

 という振り分けとなり、哀しいことに、僕と我が可愛い弟はしばらくの別れとなってしまった。

 その後は順調に村長さんに仕事を教えてもらい、なんだかんだ充実した時間を過ごした。

 「おぉ、もう日が暮れそうじゃぁ。兄さんはもう帰って良いぞぉ」

 はぁやっと我が可愛い弟に会える僕はその一心だった。

「はい!明日からもよろしくお願いします」

 そして僕は、浮足で我が可愛い弟の待つ家に帰った。


 家の扉を開ける。

 その刹那。


 「・・・・・・・・・・は?」

 なんだこれは。理解ができない。どうして。何故こんなことになった。怖い。悲しい苦しい。心が固くなる。気持ちが悪い。理解ができない。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。

 

 なんで?


 玄関先には全身ばらばらになったモノが散っている。我が可愛い弟だったモノが。

 ナニも考えられない。思考が追い付かない。

だから僕は後ろから迫る影に気が付かなかった。

「・・・ッ。ぐぁッ!」

 ゴン。と。何かで殴られた。とても痛い。

一体何が起こったのかわからないまま僕の意識は暗闇へと堕ちていった。


********************


 刹那。僕の意識は深淵から起き上がった。痛い。全身が油で揚げられるよに痛い。

「ねえ、思い出した?」

 またあの声だ怖い。怖い。でも、そこに向かわないと僕は御終いのような気がする。恐る恐る声がする方を見る。

「・・・ッ!」

 そこには心底気味の悪い、全身黒いオーラを身に纏った女がいた。明らかに人間ではないナニかだ。

 その姿を見た途端、今までの痛みが全て飛び、耳鳴りが響き、全身の血が沸いた。それはまるで無条件の屈服を強いられるような圧が、その女から放たれていた。

「やっと見てくれた。私の可愛い坊や」

何を言っているんだ。僕は人間だ。それに僕の母親はもう・・・。

「な、まだ気づかないの?自分が人間だと言い張るつもり?じゃあなんでアンタは四肢切断されてるのに生きてるわけ?」

 え、言われてみれば確かに、そう気づいた瞬間頭に衝撃が走る。僕は、何かを忘れている。何かが、

「動揺したみたいね。あいつの術も大したことないわ。じゃあ最後にとっておきをあげる。

あなたは私、全てを蝕む堕天使の女王、デネスの息子、アレイユよ」

 衝撃の波動が僕の全身を貫く。

「ア、アァアアアアアアアアアアッッッ」

 すべて思い出した。


 僕の母、デネスは元々天使の王家の時期女王だったようだが、下級天使の男と駆け落ちし、天界から追放、つまりは堕天使になった。そして僕が生まれた。ここまで幸せな家庭を築いていたらしい。

 ターニングポイントは僕が生まれてから二年後。父が[人間の女性と幸せになります。今まで楽しかった。ありがとう]という手紙を残し蒸発したらしい。父も相当なゴミだとは思ったが、残され、裏切られた母の性格の歪みようは相当だった、執事以外の使用人を全員解雇し、自信は何もせず。部屋に籠っていた。それに僕に八つ当たりをしてきたりもした。天使というのはとても頑丈な体をしていて首を切られても死ぬことはない。だから僕は母の玩具にされた。殴る。蹴るは普通の事。ほぼ毎日人間だったら死ぬようなことをさせられた。これが僕の覚えている母の全てだった。

 最初の方こそ僕は嫌がっていたが、それが十年も続けば全てを諦め、母からのいじめも何も感じなくなり、早く死にたいと思う日が続いた。

 そんなある日、執事から提案された

「坊ちゃんももう少しで十五歳です。私は坊ちゃんが自由になって良いと思います」

 ジユウ?僕は生きているだけでジユウじゃないか。

「私と一緒に人間界に行きませんか?」

 それを聞いた瞬間、僕は呪縛から解けることができた。人間界、忘れていた。僕は人間という生き物が大好きだった。いつだって進化を続けている。天使から見ると劣等種だが、僕は人間と仲良くしたかった。父が人間に寝取られたことで我が家では、人間の話をすることを禁じられていた。だから僕は忘れていた。僕の感情が十四年ぶりに戻ってきた。

 その後、執事から綿密な計画を聞かされた。

「いいですか。私と坊ちゃんは記憶を消して、全く別の人間として生きていきます。肝心な記憶を消す理由についてですが、デネス様は記憶を覗いたり、幻影を見せたりする特殊な術を持っておられます。万が一ですが、デネス様の分体が我々の近くに居たらバレるかもしれません」

 今考えたら隣のおじさまが母の分体だったのかもしれない。付け加えて執事は、

「私の技は完璧ではありません。もしかしたら私ですら気づけない小さな隙間から見つけ出すかもしれません。それほどの力をあの方は持っていますから」

 だから執事は僕らの親となる子供のいない夫婦を見つけ、記憶を改竄し、家族に見立てるという。そして執事は僕の弟になった。

 こうなると全てわかった。僕らを幸せにしてくれると信じていた隣のおじさまは母の分体。僕らを特定した母は、義父母を交通事故に見立て殺害。そして自らの住んでいたこの島に送り出し、邪魔な弟、執事を殺した。あの村人たちは母が見せた幻術だろう。


 全てを思い出した僕は、母の力の強力さ、そしてこれからの地獄を思うと震えが止まらなくなり絶望に打ちひしがれた。もう、助けてくれる人もいない。

 天使の寿命は数千年といわれている。これからの僕は生きる希望を見つけられるのだろうか。

 ずっと探していた玩具を見つけた母が静かに微笑む。

「さあ、幸せな家族の続きをしましょう」


                  了


こんにちわ。この作品、後世の私自身の評価としては前半は滅茶苦茶良いと思うんですよね。ギャグが天才すぎる。でも後半の詰め方がバケモンすぎて私自身も理解できてなかったり。という悲しい事実は置いといて、なんでこんな遅く上げたのかと言うと、今年も小説の課題がありまして、久しぶりにWord開いてみたらこれが残っていたという。。。悲しきかな。この作品が良すぎて今年のモチベが皆無になってしまうというふざけた出来事が今現在起こっているのです。むかつくわー

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