第二話 観察対象「自分」
今日もお昼休みの時間になった。
昨日とは違って今日は曇りでやや肌寒い。
さっそくいつものメンバーが調子に乗って痛い行動をしている。
だが今日はそんなことどうでもよかった。なぜなら今観察したいのは“自分自身の行動”だからだ。
昨日俺は「俺も同じなのかもしれない」と言って何か悟った気になっていた。
今思い返すと死ぬほど痛い....
あんな発言、よく堂々と書けたな俺。恥ずかしすぎて、さっき一回トイレで壁に頭ぶつけた。
どうしてあんな発言をして、詩的に語ってたんだよ俺....
うわぁ、やっぱ痛ぇわ。
……いやでも待てよ。
小説家っていう職業もあるわけだし、むしろ頭よさそうだし、クリエイティブでかっこよくないか?
そんな感じで、俺は今日も教室でひとり、静かに頭を抱えていた。
観察記録:自分。
本日、軽く迷走中。
そんなことをこっそり書いたその時だった。
「ねぇ、なにそれ?w」
急に声をかけられてあやうく大声を出すところだった。声をかけたのは隣の席の鈴木だった。顔は中の上って感じ。たぶん。クラスのキャラ的にもそこまで痛いキャラじゃなくて割と好印象な子だ。
「えっ、いや別にたいしたものじゃないよ?ちょっとメモってただけといううか....」
はやく納得してどこかに行ってくれることを願った。しかしすぐに叶わぬ願いとなった。
「へぇ~“とある高校生の観察日記”って名前を付けてるのにただのメモ?w噓つかないでよ~wもしかして、小説とか書いてる妄想系男子なの?w」
明らかに笑いをこらえきれていない鈴木。
「違う違う本当に違うんだよ」
必死に否定をしたがおそらく無意味だろう。終わった....きっと今日の終礼までにはクラス全員に知れ渡るだろう。そうなったらみんなから馬鹿にされる....
「ねぇそれ読ませてよ」
「絶対に無理!!!!」
速攻でノートを机の中にしまった。
「え~つまんないなぁ」
鈴木は口をとがらせながら席について授業の準備をしていた。
授業が始まってからも心臓のドキドキは止まらなかった。
机の中のノートがまるで大きな爆弾でも入ってるみたいに感じてずっと気が気じゃなかった。
自分もいつでも観察される側にいることを感じた。
終礼が終わると誰にも話しかけられないように走って家に帰った。
帰宅してすぐにバッグをベッドに叩きつけた。
(今日は本当にしくじった....)
そんなことを思いつつバッグからノートを取り出して机に向かった。もう一度内容を読むとやっぱり痛い。それでも何故かまだ書きたくなっていた。本当は見られた以上すぐにでも破り捨てたいのに...
なんだろうこの感情。
誰にも見られたくないけど、でも読まれたらどう思うんだろうって気になってしまう。誰かに馬鹿にされても、痛いって思われても、やっぱり「面白い」って言われたい...
(あーもうこれってクラスメイトの何倍も痛くね?俺って....)
ページの端っこに今日のひとことを書き足す。
「観察記録:自分 二日目。......ダメージ大。だけど、なんか悪くない。」