表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セラン・ブルーと幸福の少女  作者: Annabel
第2部 テュリエール王国編
80/94

22.一躍、時の人

(…さっきからどうして、こんなに見られているのかしら…?)



 宮殿の東側、白薔薇の香る庭園にて。

 白い花垣を背にフェルシアは直立していた。


 その意識のほとんどは目前のガゼボへ向けられている。そこには警護対象のハース公爵とその来賓達が談笑中だ。


 しかしフェルシアは先ほどから、己への視線が気になって仕方なかった。


 ハース公爵と語らうテュリエールの貴人を始めに、その従者も書記役も給仕のメイドも。

 現在、合わせて十以上の視線がフェルシアに突き刺ささっている。


 だが王宮入りしてからずっとこの有様だ。

 理由は不明だがテュリエール人の誰も彼も、フェルシアを見て驚いた顔をする。そのくせ皆一様に口にはしない。


 そして今や、それに気付いた仲間の隊員までがフェルシアに注目しはじめていた。何だ何だ、とまた増える目。彼女だって聞きたい。


 目の前では青空の下、翠色(すいしょく)の丸屋根と白亜の円柱が建ち、辺りを白い花びらがひらひらと舞っている。

 まるで風景画のようだ。この奇妙な事態さえなければ、もっと素直に辺りを眺めていられただろうか。


 やがて来賓を見送ったハース公爵へ、耐えきれなくなったフェルシアが尋ねる。


「…あの、マクダ様」


「ん?どうしたんだい?」


 さすがに彼も事態に気付いているはず。現状をどう思っているのだろう。


「一つお伺いしたいのですが。私は、この国に来てから何か粗相がございましたか?…私はなにやら、テュリエー(ここ)ルの皆様から大変注目されています」


 思い切って尋ねれば、ややして返されたのは。


「ああ…。うーん…、実は私にもよくわからないんだ。まあ、今は気にしなくていいだろう。君が何かをしたわけではないんだ」


 フェルシアはかすかに眉を寄せた。

 何やらなだめられたが、原因はやはり自分らしい。ますます疑問がつのる。


「あの、それは……?」


「すぐに分かるさ」


 しかしそこでまた遠くに人影が見え、二人も会話を打ち切って前を向く。


 以降、私的な話をする暇はなく。フェルシアは大きな謎を抱えたまま過ごさざるをえなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ