フィクションが視た集結
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「よし、お前らしりとりしようぜ」
甲板に寝転がっているイアソンが、朗らかに遊びに誘う。
……断っておくが、決してふざけているわけではない。……たぶん。
つい先ほど新たな命令に辿り着いたのだ。そしてその内容はこう。
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東に十マス進みなさい
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その間の命令が無効になるのはアルジュナが確認済み。現在ビマーナに乗車中。
よって、暇になったのだ。
……そう思い返すと、やはりふざけているのかもしれない。
「いいニャよー、”りんご”」
「ふふ”ゴリラ”」
「では”ラッパ”で♪」
「……”ぱふぇ”」
と、ガッバースが返してイアソンの番、だがイアソンは黙り込んだ。
少し口を尖らせ、言葉を漏らす。
「……つまらん。なんだろ……普通すぎる。普通すぎて飽きる」
「しりとりとはこういうものじゃない?」
アルジュナが吐いた正論に、
あゝだがしかし、と首を振る。
「ふっ、追加ルールだ。最近あった面白い話で返してもらおう」
「単語ではなく、文ですか?」
「そうだ」
この追加ルールに困ったのは勇者。
なにせ語れる過去が無いからだ。
すわどうしたものか、作り話を即興で語るか降りようかと思案。
「じゃ、言い出しっぺの俺がお手本を見せてやろう」
名無しの心境を意に介さぬイアソンが語るは。
「───”『エレンガント〜♡ ニャ』とか言って近づいた先には、白猫ではなくビニール袋と判明すると、怒りのままにビニール袋を八つ裂きにしたはいいものの、虚しさが溢れて『ごめんニャビニール袋ぉぉ!!』と街中で叫んだピロークテーテ”、と」
「殺すぞ。どこで知った」
ピロークテーテは憤怒した。許すまじと。
疑問と殺意が前後して可笑しな言葉を紡いでは、いつの間にか取り出した銃をイアソンに突きつける。
なのにイアソンはヘラヘラと笑う。
「いやいやいやお前さー、俺ってばあの時いたんだわ。でも街中で奇声あげる奴が知り合いとか知られたくないってゆーかさ引いたんだよ。
いや〜〜〜……でも、ほら……地を這う姿は可愛かったぜ?」
「───なんのフォローにもなってねぇのニャァアア!!!」
「ギャァアアアア!!!!」
かくしてしりとりは杞憂に終わった。
イアソンの断末魔を背景に、ブリュンヒルデは一言。
「もしかして──イアソンさんてアホなんじゃ……」
───黙っていればいいものを……
そもそも大半はピロークテーテの奇行を今まで知らなかったのに。
苦笑する。どうして口を滑らせたのか……
「ふん、あいつは生粋のアホだ」
割って入ったのは、しりとりに加わらなかったアスクレピオス。
「──とてつもなく分かりやすい。緊張したらやたら堅い言葉を使うし、高圧的な態度を取る。リーダーとしての威厳を見せたいたいんだろうな。
だが、警戒を解くと素を見せるんだ。ポンコツなお調子者め」
本当に好ましくないなら、イアソンの元で医者をしないだろう。
口では悪く言うも、目は笑っていた。
「こんなのだから、いろいろ面倒ごとが起きたのだ…………まぁ」
だが、アスクレピオスは急変する。
心底不快そうに、そして軽蔑するようにブリュンヒルデを睨みつける。
「───貴様よりは、アホではないな」
「……そう」
唐突な罵倒に、ブリュンヒルデは目を細め、悪態をつく。
「──いきなり罵倒するとは、一体全体どういう了見で?」
「は? そんなもの決まっているだろう、”何故ビマーナに生命線が無い?” この戦艦は一体何を積んでいる??
「あらあら、その件は作戦会議にお話したでしょう? 覚えてないので??」
「……作戦会議? 何を話したのですか?」
このギスギスとした空気を変えたいのはもちろんのこと。
シンプルに気になる勇者は首を突っ込んだ。
「……なんてことないわ。予算や情報をすり合わせて作戦を立てただけよ」
アルジュナの発言に、被せるようにブリュンヒルデが説明する。
「そう。そこで移動手段について議題が出まして、そこで私はビマーナについて話しました。えぇ、間違いなく確実に」
「それで、何故医務室は無いのでしょう?」
「構造上仕方ない犠牲でした。
こちらはビマーナには戦闘能力と移動能力を求めていたのです。けれども実際自作してみると、これがどうにもうまくいかず、それ以外削がざるおえなくなってしまい。
加えて機体が大きいのは、導線や回路を詰め込んだからです。こんなのなので燃費も悪く、実用に向きません。先刻まで運用しなかった理由です」
要するにカローン・ナウスと同じ原理である。
「ちょっと待ってくださいよブリュンヒルデさぁん!?」
──唐突に。羽交締めされているイアソンが、高らかに叫んだ。
「──なんか聞く限りビマーナの燃費うんぽこらしいが!? 底尽いたらどうすんの!?」
「……それはもちろん──歩きですよ。
あと今まで稼働していたので三十分後には使い果たすかと……」
「あ。終わったわ」
イアソンは終幕を悟った。
つぅと、一筋の涙が流れる。
そんなイアソンを、メディアは見ていられなかった。
「イアソン様イアソン様、この不肖メディアが疲れを感じさせない魔法、おかけましょうか?」
「ははっ、それどうやって作用すんの?」
「脳を破壊して走ったという記憶と感覚を消すんです。幻覚魔法です」
「メディアさん、それはね、洗脳魔法」
「界隈では幻覚魔法です」
……いた仕方ない判断だった。
罰が悪そうに、アスクレピオスは目を逸らしつつ謝罪する。
「そ、そうか。すまなかった」
「……まあ、いいですよ。でもお医者様、焦りすぎでは……?」
その途端、嘔吐するようにアスクレピオスは自嘲した。
「────名無しの体調を忘れたのか?」
「──あっ」
ブリュンヒルデは勇者とアスクレピオスを交互に見やる。
「まさか、まだ治療方法が──」
「──してない。してないんだ。この世界には何も無い以上、何もできなかった。仮説は無い……根拠も無い……」
弱々しくなっていく言葉尻。
苛まれていく責任感。
こればかしはアスクレピオスに非は無い。
殺風景で何か見出せなんて無理な話。
「顔を上げてください、責めている訳ではありません。こちらにできる事があれば何でも……」
「─────その必要は無い」
背筋を震わす冷淡な言葉が響いた。
一斉に振り向いた。
声の持ち主はリチャードだった。
そしてその背後には、時空の亀裂、モヘンジョとサラディン、その他見知らぬ人々が約二十名。
「おお、モヘンジョだな!! よくやってくれた!!」
「……皆、揃ったか」
Aチームの合流を超えて討伐隊全員集結。
まさに歓喜的な出来事だ。
ただ── 名無しは、笑えない。
「その必要は無い──とはまさか」
「そのまさかだ。お前とモヘンジョは、今すぐに死ぬといい」
そして──剣を引き抜いて、
「術者はモヘンジョ
コソ泥は名無し。
そうなんだろう?」
Q.なんで投稿こんなに遅れたの?
A.矛盾を見つけて修正したから。
前回、描写ミスがありました。
これを機にプロットを見直すと、何ということでしょう。
他にもあったわチクショウ。台無しだよ。




