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フィクションが視た巨人

 さて、今度は長く走るため、先程よりもスピードを落として走る。

 ……しかし、加速する。

 速くなっていく足、苦しくなっていく息。

 このまま速くなっていけば足が故障するだろう。

 ──しかし、それでもと。加速していく。

 ついには先程と──いや、()()()()()()()()()


 ──何故か? 愚問だろう。


()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

「だ・か・ら! 黙って走れ! うるさいだろ!!」

「ピロさん! 看板はまだですか!? そろそろ……限界がっ!」

「あとちょっとニャ! だから気張るニァ!!」

 背後から差し迫る脅威から逃れようと、息も絶え絶えに走るアルゴーナウスの一員と、


「わぁ〜、圧巻の景色ですね」

『君さ、もう少し緊張感をね……』

 アンデットだから体力という概念が無い勇者は、全速力で駆けながらも余裕そうに。

 首を後ろに回して、背後の景色をまじまじと観察していた。


 それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 鉄の鎧と棍棒を装備し、

 宙に浮くブロックを踏み鳴らす一糸乱れぬ行進は、さながら軍のよう。

 直径何十メートルもある複数の琥珀の双眼が、一同を狙い定めていた。


 遡ること数時間前──一同は新たなマスを進むこと一分。そう、僅か一分にして、奴らに見つかり今に至るまで追いかけ回されていた。


 ──さて、その巨人軍の内の一体が、棍棒を振り下ろす。

 知覚した一同は右隣のブロックに回避。


 棍棒を叩きつけられたブロックは細々と粉砕され、奈落に落ちていく。

 エーテルは流れていない──すなわち魔法を一切使わない様子見の一撃は、容易く足場を壊せると。

 落ちゆく欠片を見てそう結論づけたイアソンは歯噛みする。


「──ざっけんな()()()()()()()()()()()()、なんでこんな所にいるんだよ!」

「お言葉ですが…っ、()()()()()()()()()……」

 メディアは息が詰まりながらも応える。


「ようやく! 確信しました──ここは…空想建築境界…っ! モヘンジョさんと同じ。心象風景を…っ、仮想世界として創る……魔ほ」

「おーけいおーけい理解した。つまり術者は心に巨人を飼ってるやつって事だ──……なんでよりにもよって臑毛生えてるおっさんなんだよ」

「そいつおっさんなんでしょニャ」

「──えぇ……そんなやついたっけなあ?」


 疑問符を飛ばしながら過去を思い返すイアソンに、目を輝かせる者が一人。


「あの、イアソンさん!」


 勇者だ──輝く橙の瞳をイアソンに向けて、無邪気に興奮している。


「つまり、あの巨人さん達はこの空間でしか会えないと言う事でございますよね!」

「え……ああ、まぁそうだな」

 戸惑いながらも頷いた途端、勇者は身を震わせる。

 そして────


「──闘いましょう!!!」


 高らかに宣言し、


「嗚呼、あれは貴重です! 可能性の塊です! 三千世界を探し回っても砂粒程度も無いもの──! 御伽噺の住民なのでしょう!? この機会を失えばもう二度と会えないかもしれません!」


 己の願望を素直に告白すると、


「──それに、かれこれ数時間走っておりますが、一向に撒ける気配がありません。ここいらで立ち向かうべきなのでは?」


 両手を合わせ、的を射た提案をする。

 ──現状維持では、体力が持たない人類(皆様)にとって不利になるだけですよ、と。

 体を労わる──だが。


「──────ない。()()()()()


 イアソンは首を横に振った。

 ──ただの意地ではない。傲慢でもない。

 正確に裏打ちされた理論と、


 ──────()()()()()()()()()()()


「不思議に思わなかったか? 何故、たった一分で見つかって追いかけ回されているのか」

「……たまたま、では? 鉢合わせただけでしょう?」

「そうじゃない、あいつらの背丈をよーく見ろ」


 指摘された通りに、勇者は観察する。そして、


「……なるほど。我々はだいたい時速83キロ、一分で走れる距離は1.992キロメートル……。一方で巨人さんの背丈は、目視500メートルはあるでしょう。加えてここは遮蔽物の無い世界───」

 細かな矛盾に気がつく。


「───何故、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、また、()()()()()()()()()()()()()()

 その問いの答えは───

「───()()()()()()()()()()()()()()()()()、のですね」

「そういうこった」


 そして───この事実がある事を示す。


空想建築境界(この世界)、マスごとに世界が断絶されているんだよ」

 それにより断絶されているから通れない。壊すも何もない。また術者の規定により、命令をこなすと橋を架ける事ができるのだ。


「あの巨人どもは、このマスから出られやしない……例えるとNPCって奴か?」


 

 

「という事を踏まえ! 問おうじゃないか名無し(ネームレス)よ────()()()()()()()()?」


 勇者を見つめた途端、空気が凍りついた。

 問ているはずなのに、『NO』も『YES』さえ発言を許さない圧力が、勇者を襲う。

 決して睨んでいる訳ではない、脅されている訳でもない。ただただ見つめているだけ。

 それだけで場を支配する。


「────かくて言おう、()鹿()()()()()()()


 フランクな言葉が、鋭利な刃物と化し突き刺さる。


「さっさと命令こなして次のマスに進めばいいものを、なんでわざわざ命を危機に晒すんだ?

 全力と同速で走る武装済み巨大体躯の集団と戦うとか……この戦闘狂め、生き残る事に全力を賭けろ」

 小さく息を吐く。

 

()()()()()()()、分かったか?」


 そう促された勇者は瞼を閉じて、何か思案すると、

「……イアソンさんの仰る通りですね、失礼いたしました」

 目を伏せた。

  


「──さて、それよりそろそろ看板が来るぞ」

 あの術者の性悪さが滲み出た憎き命令が。

「──どうせ死ねとでも命令するだろうが安心しろ?」

 先程の命令の理不尽さに現実逃避をしたけれども、突破口は見破られた。

「──対象をずらせばいいというのは判明しているからな」

 こんな子供じみた屁理屈で通るとは、大層ガバガバだな、と、

 嘲笑を深め、

「──さっさと解いてこんなとこから出るぞ」

 戦ってられるかばーかと、吐き捨てる。


 そしてとうとう、看板が視界に映る。

 そこに書いてあったのは────





ーーーーーーーー

武装した巨大な人六十八人、全員討伐せよ

ーーーーーーーー






「しゃらあああ!! 総員武装! 覚悟しろよ巨人共!!」


 ただし、命令ならば別である────ッ!!

 どうあがいても巨人達との闘いを免れない命令の前に。

 亜光速で掌返し、一同は体を翻す。


「──ふっはっは!! いいでしょう! わたくしの実力、とくとご覧あれ──!!!」


 思いがけない幸運に、勇者は嬉しがる。

 そして戦闘の足枷となるだろう己の背で昏睡しているハルマンを、代わりにおぶってもらうべく振り返ろうとするのだが。


「……ところで、誰か代わりに────おっと」


 後ろに控えている巨人が、奥から弓を引く。

 矢は豪速で放たれ、弧を描き、そして一同が立っていたブロックに突き刺さると、ブロックを粉砕する。


 華麗にまた別のブロックへ回避した勇者は、イアソン達を一瞥──


「──────ん? ん、ん? あ、あれ……おっと?」


 だが、視界に映る景色がとても信じたくなくないもので、何度も瞬きを重ねた。

 なにせ───清々しくダブルピースを決めるイアソンと、無表情のアスクレピオスが、

 仲良く同時に、()()()()()()()()()()()()()()()─────


「なぁ、アスクレピオス」

「なんだイアソン」

 遠ざかっていくブロック群に、青ざめるメディアとピロークテーテ、そして顔を伏せる勇者を眺めながら、


「なんで人類って羽生えていないんだろうな?」

「?????」


 我、人類の謎に直面したとでも、科学者のような神妙な面をしながら呟くイアソン。


「それは……人類だからだろう。ちなみに人類は大昔では羽が生えていて、ブリュンヒルデはその先祖返りだ」


 ご丁寧に答えるアスクレピオス。


「そっか……ところで俺の天才的な推理を聞いておくれよ、これ死ぬんじゃね!?」

「ふん────そうだ」

「いやぁぁぁあああ゛あ゛あ゛だっで疲れたもおおおおん!!!!!」

「おめーら以上に疲れているメディアは避けたニャよ!? 情けないニャァ!!」


 見下すピロークテーテからお叱りの言葉を受けて涙目になるイアソンを、


「今っ、たすけたすからぁ!

 ──空間固定…っ、虚数アーカイ───」


 助けようと、途切れつつも魔法を詠唱するメディア。

 しかし──ここは戦場である。

 敵が何かしようものなら、妨害するのはこれ必定。

 巨人はメディアを潰さんと、棍棒を振り下ろす。

 ──間一髪。ピロークテーテはメディアを抱え、そのまま左のブロックへ移動し回避する。


「………はぁっ、はあ! なんとかできましたっ!」

「ありがと〜メディア!! 愛してるぅーー!」

「感謝する……助かった…」


 無事、魔法を行使できたらしく、堕ちた二人の足元には、確かに宙に浮く硝子のような板が生成されていた。

 これで二人はもう堕ちないが。


「問題は巨人さん達をどうするかですよねぇ……」


 ──命令を遂行しなければ出られない。

 ……遂行したとて出られる保証は無いがともかく。


(──ただ、この大軍相手だと疲れますよね……何かいい方法思いつきます?)

『ないんだなーこれが。同士討ちさせるとか? 命令では誰が倒せとは書いてないでしょ?』

(──うーん……そちらの方が面倒……あ)


 なんだ簡単ではないか、と。妙案を思いついた勇者。


「ピロークテーテさん、このブロック壊せますか?」

「……? たぶん、できるニャよ」

「ではメディアさん、お疲れのようですが、先程の魔法、どれくらい広範囲に敷けますか?」

「え…と、五キロほどなら…」

「……意外と体力余ってたりします?」


 棍棒や矢などの攻撃を受け流しながら得た情報から、勇者は確信する。


「ならできますね。二人とも──────」


 勇者は作戦を語った。

 それにメディアは、申し訳なさそうに首を振る。


「……すみません、それだと詠唱がかかりまして……具体的には五分ほど…」


 なるほど? 五分待てと? 殺意満々の敵の前で? 足場なんて余裕綽々に壊す何百倍も大きい奴らを? 

 ──なんだ、その程度なら問題ない。

 イージーすぎる状況に思わず唇を吊り上げた勇者は、不敵に笑った。


「──それでは、わたくし囮になってきます。どうかハルマンさんをよろしくお願いします」


 ハルマンを降ろし、巨人の群れへ突撃する。


「……まじかよ」

 愕然と。

 イアソン勇者と巨人軍の攻防──違う、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 誰がどう見てもこれは一方的だ。

 本来、巨人からすれば、背丈の小さな勇者は取るに足らないちっぽけな存在でしかない。

 指先、髪束……どこかしら当たれば質量の暴力を以て勇者を潰せる。


 それがどうだ?

 ──攻撃は、そもそも当たっていない。


 なるほど? ”どんな攻撃も当たらなければ意味が無い”。

 月並みな表現だが、勇者のやっている事はまさしく()()だろう。


 だがしかし──しかしだ。

 果たして、それを”完璧”にできる人は存在するのか?

 ──知謀巡らす攻撃を、

 ──精神の機敏で揺れる不確実さを、

 ──本人の意思関係無く動く、髪の物理演算を、

 ──そしてこれらを、戦いながら数コンマで計算する。


 まさしく神業、天才の所業。


 躍動する指指を掻い潜る。不規則な髪をすり抜け、時に相殺し。

 澄ました笑顔を崩さずに捌ききる勇者を、巨人達が驚嘆を超えて怒りに震える。


 そんな信じがたい風景を目撃したイアソンは、勇者の自己紹介を思い出しては。


「……天才、か」

 ただぼぉ、と。()()()()()()()()()()()

 夢中になり、時間や周りがだんだんと狭まっていくなか。


「──── 名無しネームレスさん! こちら準備整いました!!」

「──── コッチもオーケイニァ!! あ、イアソン、ワイルドカード切ってもいいかニァ?」


「え……ああ、いいぞ」


 どうやらもう五分経ったらしい。

 メディアとピロークテーテの声により、意識を現実に戻した。


 イアソンの許可を合図にピロークテーテは、


「──束ねるは女王の栄光。これなるは譲渡されし贋作────ワイルドカード起動!!」


 詠唱するやいなや。

 パチリ──ッ! と、空気中に漂う一つの塵が雷火を放つと、他の塵が次々に連鎖しては。 いつしか硝煙が空間を満たす。

 強風により晴れた先には。

 ──世界を圧迫する五十メートルはある巨大な無数の銃だった。


「穿て!!」


 ピロークテーテの命令を皮切りに、銃口から鉛が放たれた──巨人に向けてではない。

 ──()()()()()()()()()()()()!!!


 ブロックは粉砕される。

 足場を無くした巨人は、あゝ無慈悲にも奈落へ堕ちていく。

 だが、往生際の悪い一匹が、せめて道連れにしてやろうと、イアソンとアスクレピオスに鉤爪を振るう。

 しかし、やはり世界は無慈悲なもので。


「──《第三番術式;不動断値》」

 渾身の一撃は遮られた。メディアの魔法により生じた不可視の壁によって。

 そいつは悔しそうに歯を食いしばりながら、そのまま奈落へ堕ちていった。


  勇者は巨人達が見えなくなるまで見届けた後、二人を引き上げる。


「助かったぞ名無しネームレス。そしてピロークテーテとメディア」

「やるじゃん、天才という言葉に嘘偽りは無いってか?」


 拍手までするほど感謝する二人。

 けれどもイアソンは、じわじわと眉根を下げていく。


「……? どうなされましたか?」

「あぁ、いや。……えーと」


 あー、うー、と。らしくなく唸る。

 十秒ほど経った後、口を開いた。




「ありがたいけどさ、()()()()()()()()? ()()()()()()??」



「「「「…………」」」」



 揃いも揃って一同は改めて穴を観察する。

 その穴は確かに底が見えない。ただしく奈落であった。

 それが指し示す事実とはすなわち、


 ──これじゃあ、いつ落下死するか分かんないじゃん。

 ──つかそもそも底ってあんの? 無かったらどうすんの? 餓死?? 餓死まで待つの?


 ……今更ながら、重大な穴に気付いた勇者は土下座した。

 どうも、作者です。

 まーーーた添削したいという話です。

 具体的な添削部分は、

 ・ハルマンをメンバーから外す。

 ・BチームCチームを無くし、イアソンをリーダーにさせる。

 ・カイシシンロウのくだりを無くす。

 ・タラプ島の場面ではイアソン視点で進みたい。

  などなど。

 

 ただもう添削は何回も行われておりますので、いい加減呆れるでしょう。

 完璧主義はうんち。ほんとうんち。

 だってッ! 没した文字数がだいたい十二万文字だったもんねぇ!!

 お手元のラノベ本を取ってください。それくらい没ってます。はい。こりゃあ深刻だぞ……

 

 この調子ではほんと終わらないので、添削はカイシシンロウ編を終えてからの予定です。

 話数にして四十から五十。文字数は十五万字。


 しかし、もう一度見たい方のために(たぶんいないと思うけど……)没集を作りました。

 検索避けしていますので、ホームページから飛んでください。

 題名はお蔵です。

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