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フィクションが視た終了のお知らせ

 タイムリミット 残り113時間25分


 二時間の仮眠を経た一同は。

「じゃ、お前ら準備はいいな? モヘンジョ、やってくれ」

「──解除」

 

 再びタラプ島に舞い降りる。

 モヘンジョが指を鳴らすと──城が崩れる。

 跡には視界に森が広がった。暗い夜の中に、眩い日差しが差し込んでいる。

 ──朝がやってきた。戦争の幕上げだ。


 ハルマンは一歩踏み出すと…跪いた。両手を合わせる。そして──祈りを捧げた(詠唱する)


「──嗚呼、我ら新魔族の母語たる真祖様よ」

 さながら聖なる救世主イエスに。

「──卑しい下等生物たる醜い我が明日の為」

 平伏す敬虔な信徒のように。

「──どうか。絶対の力を。一欠片だけでも」

 降臨を祈祷した。

「──我に貸してください──ワイルドカード! 起動────ッ!!」


 途端──吹き荒れるエーテルはタラプ島を飲み込む。

 耳を劈きながら、視界を揺らしながら、魂を狂わせながら。

 ふ──────と。エーテルの波が収まった時。ハルマン(ここ)に、()()()()()()()

 ──其れは終末の象徴。

 初めて相対したあの時と、同じ雰囲気を纏う。


 切り札(ワイルドカード)。それは特別な人のみが使う事ができる──所謂、必殺技。

 人によって内容は違う。ハルマンの場合だと、『真祖化』と呼ばれるもの。自身に真祖を降ろし、真祖と同様の力を行使する事ができるようになる。

 ただし、真祖の力は絶大ゆえに。

 効果は三十分。副作用(デメリット)として。魂を削り、一ヶ月間昏睡する事になる。

 しかし──! ここで魔法薬(ドーピング剤)を飲む事で()()()()()()()()()()!!


「──旅する死者よ、誤謬の道を歩め。ショロトル」

 空に骨のドラゴンを召喚したと共に、ハルマンは羽ばたいた。


 そして二分と経たないうちに、イアソンがつけている腕輪が赤く光り出す。

「……ハルマンからの報告だ。大黒泥人形は、それぞれ残った拠点を守っているとの事。

 好都合だな。俺達は予定通り南の拠点を攻め落とす!」

 だが一転──目を伏せる。


「──ま、()()()()()()()()()()()()

 自嘲気味に、イアソンは笑った。


 一同は草木を縫いながら進んでいく。

 そして──


「──ふん。来るの当然、ね!! 挨拶代わりに死にやがれ!! ね!!」

 南の拠点に到着。赤リボンを付けた大黒泥人形が、一同を見つけた瞬間に攻撃を仕掛ける──!


 土砂崩れに等しい泥人形の死骸が、勇者達に襲いかかる。

 巻き込まれたらひとたまりも無い……のだが。


 イアソンは、躱そうと身体を構える勇者の肩を叩いた。

「変に動かない方がいい。巻き込まれるぞ」

「……え?」

 避けなければ死骸の土砂をモロに喰らうのは自明の理だろうと。

 逆に制止され唖然とする勇者の上空を。



 ─────一筋の閃光が横切った。



 その閃光は死骸を押し返すどころか、地面ごと抉りながら大黒泥人形の方へ進む。

「あったんないーーね!!」

 右に移動することでなんとか逃れた大黒泥人形。


 ──だが、それだけでは止まらない。

 槍を模った無数の黒雷が追い討ちを始める。


 圧倒的だった。

 なにせ、黒雷はただ掠るだけで。

 山が湧き立ち、海が燃え、空が割れて崩れ落ちて。

 ──空間が引き裂かれる。

 それにより生じた幾千のポリゴンと、捻れ狂った時間が、世界を壊し始めた(バグらせた)


 天地崩壊の如き光景を創り出すとは、一体どれ程の力が必要なのか。きっと、天文学にも匹敵する程必要だろう。

 しかし──黒雷は衰えを知らない。

 全く。そう、全く勢いを落とさない。

 つまりは……まさか、()()()()()()()()()()()()()──ということか。


 気になった勇者は、ふと、空を見上げた。

 そして、諒解する。

「──あ、本当に世界とはその程度なんですね」


 赤き空に鎮座するハルマン(真祖)は。

 顔色一つ変えずに、淡々と魔法を放つ。

 一方で、可憐な顔を歪ませて逃げ惑う大黒泥人形。

 はて、これを見て、”()()()()()()()()()()()()()()

 ──どうみてもそんな訳がなく。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 ……まさに不条理。

 実際に見たわけではないが、おそらく入念に準備しただろう泥人形達の努力の結晶が。

 たった一人に潰される。

 だが、ぶっちゃけ──世の中そんなもんである。

 才ある者が蹂躙する。

 世界とは概ねそのような仕組みになっていて──然るに!

 不条理そのものである《真祖》が、不合理に、理不尽に勝利する事にいかなる矛盾があるものか!?




「……《()()()()()()()()()……」

 プランを滅多刺しにされて半笑いしている勇者に。

 サラディンは答える。


「────んー、魔王…かな? 聞いた事ない? ()()()()()()()()()()()

「まぁ…あります」

「昔──人類の変異個体として産まれたのが《真祖》……名をシューベルト。

 彼は平凡な魔族の田舎村に産まれ、そこから数十年すくすく育っていって──」

 ──そして、唐突に。前触れなく。


()()()()()()()

「….…え?」

「うん。いろいろと凄まじかったらしいよ。世界を支配するまで一週間もかからなかった。

 支配した後、逆らう者は暴力をふるう恐怖政治を敷いた。でも、愚王という訳ではなく、言語の統一や、教育無償化による識字率の上昇。身分を問わない制度や職業選択の自由を認めた」

 すると、少々気まずそうに。


「あと、助けに降臨した混沌神様を撃退。ついでにこことぞやってきた邪神も撃退したんだ……」

『え、つまり、混沌神って澄まし顔しているけど、自分で創った子供にボコボコにされた経験持ち…ってこと?』

(──みたいですね)

『ダッサ』

 そして軽く流されたが、邪神も撃退されたって──おいおい。世界のツートップが一人の人類に負けんなよ…………


「それだけじゃない、彼は世界の常識を覆したんだ。例えば、病気の原因はエーテルの故障ではなく病菌の仕業とか。副作用無しのドーピング剤の作り方とか」

『メチャクチャやってんねソイツ』

(──異世界チートなろう主人公かな?)

 今もなお重宝される技術を確立させたとか。

 武人としてだけではなく研究者としても超一流なんですかそうですか。

 ──そこで、僕は疑問に思った。


()()()()()()()()()()()()()()


 まるで、今はいないような口ぶり……

 おいおいスーパーウルトラハイパー天才超人がどうやって死ぬんだよ、想像できない。

「そんな彼の最期はね……」

 サラディンは少々躊躇ったが、

 話した。天才が死んだ衝撃的な理由を────。






「───────自殺したんだ。こう、ぽっくりと」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ──その後、人類は喜びのあまり、《真祖》が死んだ日を一年と定めた。



「な、何故でしょう? 彼は所謂成功者ではないですか。どうしてそんな……」

「分からない。今でも学者の間で討論しているくらいだからね──」




 

 ──────その時、勇者は幻視した。

 1990年代の古ぼけたテレビ程の解像度の悪さ。

 しかし、何故か鮮明に浮き彫りに見えた。

 赤い月夜を見上げる彼の姿が──

 彼はハルマンそっくりの容姿。骸骨を散りばめた趣味の悪い服装と、緑髪を基調とした黒白のツートンカラー。

 ただ、3メートルあるだろう長すぎる髪を。

 部下たるアンデットに持たせることで。

 ”いかにもわたくし王でございます”と。

 強く主張していた。

 そんな彼は呟いた。


「──────」


 ………はて、なんて言ったのだが分からなかった。

 けども………確かに、間違いなく。

 勇者に向かって言ったのだと。

 ──────()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()





 勇者は目が疲れたので、瞬きをした。

 そしたら──幻覚は消え失せた。泡沫のように、ふわりと。


(──フィクションさん、わたくしと貴方は視界を共有していたはず。何か見えませんでした?)

『? なにも?』

(──……そうですか)


 あれは──まさか《真祖》だったのだろうか?

 だとしたら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ────という疑問は棚に置く勇者。んなこたぁどうでもいい。






「……もう、()()()()()()()()()

 《真祖》を宿したハルマンが泥人形をボコボコにしている風景を見て、一言。

「そうだな。だが、ああ見えて泥人形(あいつら)は初日の猛攻を防いだんだぞ? 意外とやれ──────あ、死んだ」

 そして追い討ちをかけるように。

 イアソンの腕輪が、青、次に黄に光る。

「Bチーム、Cチームの奴らも終わったらしい。一旦合流するぞ」


 ──と、まぁ。

 これにて! 人類の加勢して邪神の下僕を狩ろう(横取り)作戦は終了した。

 結果は──邪神の下僕(泥人形)狩る(横取りする)ことはできず!

 ()()()()()()()()()()()()()()()()!!


『どぉぉぉおおすんのさこれぇぇええ!?』

(──合流する…という話ですし、他チームに既知を広げてくれる存在がいる事に賭けましょう……ふふ。まさかこんなにも人類が強かったとは……)


 ──わたくしの侮りが敗因ですね、と。

 反省しながら、他チームの面々と合流しに歩く──────その最中だった。




 ────()()()()()()

 揺れは最高潮に達す──鉛よりも重く山が鳴り。

 鳥が姿を見せないまま甲高く囀った。

 斜面の木が激しく梢を揺らし、木の葉を雪原地帯もかくやとばかりにいっせいに降り注ぐ。


 次に起きたたのは──エーテルの竜巻だった。

 島の中央地から発生するそれを──メディアは、信じられないものを見るように。

「────ま、まさか……いえ、そんなはずは──ッ!?」

「何があった!? 報告しろメディア!」

 顔面蒼白させ。

「……そ、その」

 反芻しながら、たどたどしく答えた。




「破壊したはずの中央拠点から、邪神が降臨しようとしているのです────!!」


「「「──────ッ!?」」」

『──どういうことなの!?』


 何故を考える隙も無く。

 天を貫かんと激しく地面が隆起し始める。

 地面の膜を破り、這い出たのは不快の塊。

 膿よりも汚い水が溢れ出す。


 ────邪神がこの世に降臨した。

 小説のコンテストに落選したショックにより、かるーいスランプに陥っていました。

 がんばって三日七時投稿に戻します。

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