間章2 勇者が視た風情の無いスキル
──────コテンパン。
そう表現しましたが、実際は一苦労しました。
なにせ、フィクションさんは腐ってもリッチ。アンデットの頂点に立つ王。
舐めプをしても強かったのです。
彼は──無償で青白い閃光を、弾として高速に放つ。
その数……百もくだらない。
石ころより小さな粒から加速していくに連れ、極大になっていく。
最後はクレーターを作るのだ。
──さながら大海の波のごとく。
うねりながら弾けながら、恐ろしい勢いで飲み込んでいく。
それだけではない──フィクションさんの詠唱──
「──ショロトル ショロトル いでよ! 我が不死の軍勢!!!!」
により、アンデットが召喚される。
これがまあ厄介なもので。
骨のコウモリさんは無数の軍勢となし、一斉に逃げ場を塞いでいく。
特に厄介だったアンデットは、あの騎士さんでしょう。なにせ、不意打ちだったけどもわたくしを叩きつけたのですから。
名をユーウェン──重厚な黒鎧を身につけた長身の騎士が。
お供のアンデットの獅子さんと攻撃を仕掛ける。
──なるほど。世界でも十指に入る実力者……というのは、あながち間違いでもないようで。
ですが──それはあくまでも魔法センスの分野に限っての話。戦闘経験は皆無絶。
なぜなら─────家を運営するための動力源の方向に進むと、途端に手を抜き始めるのだ。
…こんなあからさまだと、看板されますよ……
わたくしはフィクションさんの反応を元に、攻撃を避けながら動力源へ進み。
フィクションさんの動揺が激しかった壁を壊すと───そこは外に繋がっていました。
藍色に染まる夜──白銀に光る月の下に。
広大な面積を誇る菜園が、煉瓦でぐるりと囲われている。その中には、五センチ程の小さな花弁の青い花が咲き乱れていた。
わたくしがそこを踏み敷いた途端──フィクションさんの顔が怒りに染まる。
かと思えば、己の死の閃光を抑え──ユーウェンに下がるよう命じる。
そして──
「──神々から使役されし炎の銃火器よ、今こそ炎炎の蛇と化し、我が敵を束縛せよ!! シウコアトル!!!」
束縛に転じた。
────その瞬間
わたくしは勝利を確信した。
……さて、諸君。ここまで一つ、疑問はありませんでしたか? この世界の法則を知らずとも、子供でさえ分かる矛盾が。
──そう、何故、異世界人たるわたくしが、この世界の言語を理解できているのか。
ここまでくれば、もうお分かりだろう。
────混沌神様から、翻訳スキルを与えられていたことに。
そうでなければ矛盾してしまう。混沌神は邪神様に妨害されてもなお、翻訳スキルだけは譲渡したのです。
では──ここからもう少し踏み込んでみよう。
シウコアトル……この言葉に聞き覚えがないだろうか?
シウコアトルとは、アステカ神話に登場する炎の蛇。戦の神がシウコアトルを武器として戦った逸話があり──
メキシコで発明されたアサルトライフルの名前に採用されましたもの。
また──ユーウェンさんもそうでして。
アーサー王伝説に登場する獅子の騎士──ユーウェンと酷似している。
よく見れば、フィクションさんだってそう。
ただの単語の羅列ではなく、英語で”架空”、”虚構”という意味を持つ。……何が架空で虚構なのかは知りませんが。
兎にも角にも。どうやら──翻訳スキルは、ただ翻訳するのではなく、わたくしの世界に沿って翻訳されるらしい。
──あ、すなわち──ッ!?
メタ読みができる────!!
ジークフリートという騎士の弱点は、背中だと分かり!?
モリアーティという数学教授が、これから起きる犯人だと分かり!?
死霊魔法の詠唱は、アステカ神話モチーフだと分かり!?
────アスクレピオスという医者の最期。蘇生薬を作り上げたが神の怒りを買い──そして、天罰が下る…というのも分かる。
……なんと風情の無いスキルなのか。
つまらない。未来が分かるのは…本当につまらない。




