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幸福な結婚とは? 8 ジェニファー=エフォート

更新遅くなりました…。すみません。


ー掴まれた手首の力は凄まじく

(このまま手首をへし折られるんじゃないか?)

思うぐらいだった。


「-痛っ…」思わず声が出る。

その瞬間、彼がもう片方の手でわたしのフードを

引き下げた。


「なんだ?…お前、貴族の娘か?」

彼はわたしの容姿を見て言った。


(この男…ラウラじゃない)

少なくとも温室であった彼ではないのが分かった。


彼であれば、わたしがアベルの恋人である事は

分かっているはずだ。


「動かなければ...傷つけない」

わたしが貴族の娘だと確認すると多少口調は

和らいだが表情は変わらない。



「口を開けろ」

とラウラもどきはいきなりわたしの顎と掴むと

口を開けさせて、中を覗き込んだ。


そして怪しげな薬と勘違いしたのか

「これはなんだ?」と訊いた。


「…ハァ(キャ)ンディーよ」

顎を掴まれながら、わたしは配られた

キャンディーと包み紙を彼に見せた。


「む…」

彼はキャンディーとわたしの顔を交互に見比べて

いたようだったが、掴んでいたわたしの手首を

ようやく離した。


「お前の...」と

彼が言ったところでー


「ーカイル。誰と話をしているんだ?」

彼に声をかけてきた人物がいた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「-カイル」

フードを外しながら、別の裏路地から近づいてきた

ハスキーなその声の人物にわたしは見覚えがあった。


目の前の人とまったく同一人物-同じ顔だ。

…でも泣き黒子がある。


(彼が温室で会ったラウラだわー)


ただ彼はーピンヒールではないが、

ヒールのあるブーツを履き、足元近くまである

マントで自分の身体を覆っている。


「-ラウル…来たか」


ラウルとよばれたー温室で会ったラウラはわたしの顔を

じっと見つめて、近づいてきた。


「なぜ彼女がここにいるんだ…?」


「ラウル、近づのはよせ。急所を潰されるぞ」


わたしの目の前のカイルがラウルにそう伝えると、

ラウルはぎょっとしたように足をとめた。


「ジェニファー=エフォート嬢。なぜ貴女が

 ここにいるのだ?」

咳払いし…若干距離をとりながら、ラウルはわたしに訊いた。


「ラウル…、この娘を知っているのか?」


カイルはわたしから目を離さずにラウルへ尋ねた。


「知ってる…というか…魔法管理省副長官の

 アベル=バランタイン殿のフィアンセだな」


ーラウルが正確に返答した。


カイルはその言葉に衝撃を受けたようにわたしを

二度見して口を開けた。


「ー本当か!?本当にあのっ…麗しいアベル殿の

 フィアンセなのか!?-この子豚がっ!?」


カイルはそのまま逆上し、

信じられないと言った風に叫んだ。


(いちいち失礼な反応をー)

わたしはちょっとイラっとしてしまった。


「この痴女は私の股間を思い切り掴んだんだぞ!?」


(まあ、それは合ってますけど…)

その点はわたしも認めた。


「ーベルハイム家の男が何度も恥ずかしい事を大声で

 叫ぶな」

ラウルはカイルを嗜めた。


「恥ずかしい事をしたのは私じゃない。この娘だ」

しぶとく続けるカイルを見てラウルはため息をついた。


「なぜカイルの後をつけたのです?」

ラウルはわたしに訊いた。


「ー明らかに怪しい行動をされていたので…」


(嘘を言うな!)

と言わんばかりに上から睨み付けるカイルを

わたしは腕を組み堂々と見返した。


ーそのとおり、ほとんど嘘だ。

カイルはわたしの後ろを通っただけ。


あのスパイシーで特徴的香りがわたしの興味を

引いたから後をつけたのだ。


…ただ、わたしの手首が折れるかと思う寸前まで


(今も痛い…たぶん痣になるだろう。

 女の子の身体に痣をつくるなんてー)


手首をきつく握ったカイルへの怒りがあったので

つい意地悪で答えてしまった。


「お前…どういうつもりかしらんが覚えてろよ」


カイルは低い声で私を脅すように言ってきたが、

この時点でわたしが彼の股間を握った過去()

わたしの頭からすっかり消えていたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


わたしは馬車に乗せられていた。

装飾がほとんどない目立たないものだが

ー高級品だ。


がたつきの音もせず滑るように進んでいく。


(この馬車素敵すぎるわ…欲しい)

だって毎回乗車する度にお尻が痛くなるのだ。


わたしは魔法管理省本部に行かないとアベルが

心配するーと訴えたが、それはあっさりと二人に

却下された。


「アベル=バランタイン副長官より…いわば高位の

 のお方の指示でわれらは動いているー」

ーと、ラウルがわたしに伝えた為だ。


「ー高位ってどのくらいのお方の事ですの?」

わたしは尋ねた。


数時間とは言え皇太子ルートヴィッヒとお茶まで

させていただいているのだ。


「ルートヴィッヒ1世皇帝陛下ですか?」と訊くと

二人ともぎょっとしたようにわたしの顔を見た。


たかが一介の伯爵令嬢が恐れ多くも

現皇帝陛下の名まで出すとは

思っていなかったのだろう。


ラウルとカイルは顔を見合わせて

不安そうな表情をした。


「-いや。違っているが…」

二人の口調が…どうも歯切れが悪い。

一体どなたなのか。


ー数十分後、わたしは思いもかけない場所で

思いがけない方と会うことができたのだった。


よんでいただきありがとうございます。

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よろしくお願いします。m(__)m

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