幸福な結婚とは? 13 レイモンド=バランタイン
ちょっとR15でしょうか…レイモンド×リリス描写ありです。
アベルは魔法管理省長官室を訪れていた。
義父にジェニーの不在と行方について報告する
つもりだった。
長官であるレイモンド=バランタイン公爵は
上機嫌で、アベルを見ると
「わが国の魔法研究論文発表はずば抜けてレベルが
高かったぞ…?聞いたか、あの割れんばかりの
拍手を…」
と誇らしげに言ったが、アベルの表情を見ると
すぐに
「どうした…何があった?緊急事態か?」
と訊いた。
アベルはレイモンドへ躊躇いながら報告した。
「ジェニーが拐われました…理由はわかりませんが
大公閣下の邸宅内に拉致された様です」
レイモンドは報告を聞くと
「うーむ…」と唸りだした。
アベルは義父へ
「人攫いやサヴィニアンの残党であれば、
報告する間も無く向かったのですが、
相手が大公閣下とあれば話しが違いますので…」
と悔しそうに言った。
レイモンドは苦笑して、
「いや、相手が誰であれ報告はしてくれ…アベル」
ジェニーの事になると頭のネジが2~3本吹っ飛ぶ
息子を窘めた。
レイモンドは更に続けた。
「義叔父上は…力押しでぶつかって勝てる相手では
無いしな…」
レイモンドはしばらく考える様子を見せると
アベルに訊いた。
「…鳳凰様はお遣いは出来るのか?」
義父の提案にアベルは少々のけぞってしまった。
義父の言葉にしどろもどろになって答えたが、
「ええ…。気分を害さなければ御遣いもしてくださる
でしょうが…相手方がびっくりするのでは…?」
(鳳凰様に伝書バトの役目をさせるなんて…)
とアベルは戸惑った。
その間にレイモンドはサラサラと手紙を書くと
「では此処へ行っていただきたいと頼んでくれ。
この手紙を渡して返事も貰いたいとな」
レイモンドは思い出していた。
(なにせ…小さい頃やっていたボードゲームでは、
ジョージ叔父上に勝てた事が一度も無い)
他の誰にも負けないのだが、どんなに優勢なゲーム進行でも
ジョージ相手だとなぜか最後にはひっくり返されてしまう。
あの細目で…何を考えているか悟らせない表情で、
頭脳戦において誰よりも手強い相手だった。
今回の帝国内の騒動を誰よりも遠くから冷静に見て
いたのは、フランシス前皇帝が皇位をめぐり敵と判断した、
パネライ大公自身に他ならなかった。
リリスの忠告もあり、レイモンド自身気にしてはいたのだ。
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「ジョージ=パネライの動向には気を付けておけよ」
不夜城に戻る前のリリスが言った言葉だった。
「閣下…それはどういう…」
意味なのか、レイモンドが訊こうとした時
「私が何故お前を選んだと思う?」
リリスは妖し気に微笑んだ。
「知識欲でいえばジョージに勝てる者はいない。
お前ですらな」
リリスはレイモンドのタイを引っ張りながら言った。
「お前の見た目と魔力は非常に魅力的だが、
それだけでは無い」
「それは…ファウストとやらの話でしょうか?」
レイモンドは訊いた。
話に夢中になっていたレイモンドは、リリスに
次々に放る様に服を剝がされていったのに
気が付かないでいた。
(知識と欲の為に悪魔に魂を売った錬金術師の男らしいが…)
リリスはレイモンドのトラウザーに手を掛けた。
「メフィストを呼びだした相手がファウストだった
らしいが、私ならジョージに呼び出されても
行かないだろうな。
ーー後の魂を得る為に契約する相手だとしても」
「それはどういった意味でしょうか?閣下…」
レイモンドは屈んでいるリリスへ尋ねた。
「ーーお前は素直で可愛らしいという事だ」
リリスは花の様に艶やかに微笑んで見せた。
その言葉にレイモンドは大きく顔をしかめた。
「ジョージ=パネライもデルヴォー家の血を色濃く
引いていると言う事を忘れるな。
姉のバルミュラは女である分感情的な所もあった
が、ジョージはルートヴィッヒとは違った意味で
中身が魔物に近い性質を持つ男だ。
しかもしたたかで忍耐強い。…幼いころからな」
リリスはふっと静かに嗤って言った。
「頭の弱い悪魔なら出し抜けるかもしれん。
…私相手では無理だろうがな。
レイモンド…あいつとやるなら、
自身で真正直に戦いは挑まん方が得策だぞ。
あいつが動けない程、強い相手の力を借りた方が
手っ取り早くていい。――まあ、今となっては
ルートヴィッヒ以外にはいないが」
ーーそれからまだ力なく垂れ下がっている
レイモンド自身を口に咥えたのだった。
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