幸福な結婚とは? 11 ジョージ=パネライ
お待たせして申し訳ありません…。大分間が開いてしまいました。
執事さんは小さい男の子を連れて部屋を出て行った。
扉が閉まるまで大公閣下は細い目を糸のようにして
ニコニコしながら手を振っていた。
「…まぁ、そんなに緊張せずとも良い。ジェニファー」
扉が完全に閉まると細い目をわずかに開けて
わたしに向かってジョージ=パネライ大公閣下は
微笑んだ。
「ーラウル、カイル...早速報告を頼むぞ」
と彼等の方を向いた。
ラウルがずいっと一歩前に出た。
「ー『魔法管理省』の内部には主だった怪しい
動きはありません…今のところ、ですが」
「それからーー」
ラウルはわたしの方をチラッとみて
「いつも通りラウラ=ベルハイムとして活動
していました。…がー彼女にはなぜかひと目で
男とばれました。原因は…香水だそうです」
「ほう……」
大公閣下はわたしの方をみてニヤリと笑った。
次にカイルが報告を始めた。
「エアリス=オーギュスト管理だった商業ギルドの
内部ですがやはり数名の貴族の関与を確認する
事ができました。
証拠数点は現在確認され、詳細は現在調査中
です」
大公閣下は机の積み木を手の上で投げてては
掴む動作を繰り返した。
「-うむ…。まだ国の調査でも目立った進展が
ないということだな…」
投げた積み木を机の上に慎重に置くと大公閣下は
こちらを向いた。
「まあ…見てのとおり…彼らはわたしの部下だ」
本物のラウラ=ベルハイムもな、と大公閣下は
続けた。
「本物のラウラは別件で国外に出ているため彼らに
影武者を頼んだのだ」
(なるほど…。周りが騙される程ラウルがラウラに
似ているか、よほど上手に入れ替わっているのだ
ろう...)わたしは頷いた。
「ーしかし、さすがだ。あのレイモンドとアベルが
気に入っただけある…」
と細目を開けてわたしを見た。
「時にー…エフォート嬢。
アベルとの婚約の話はどうなっているのかな?」
と訊いてきた。
「はあ…まだ結婚は…」
これから…とわたしが続けようとすると
「そうか!それは好都合…!」
大公閣下は手を叩いた。
(え?)
「ージェニファー...。
わが息子ヒューゴの事はどう思うかね?」
「ーは?」(何なの?いきなり…)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アベルは魔法管理省の建物の前でジェニーの
到着を待っていた。
(遅い…。どこでなにをしているんだ…?)
広場で子供らのダンスを見てから来ると行って
から彼女が戻ってこない。
教団員らの報復が心配で顔が
簡単に分からないようにフードを被るようには
伝えたが…。
(何か不測の事態が起こったのかもしれない…)
アベルはきびすを返し自分に執務室へ戻った。
彼女に渡してあるキーパーは実は改良が加えられている。
あまり言うとドン引きされるかもしれないと思い
伝えてないが、自分の魔力をマーキングしてある為
彼女が小鳥を持っていれば、場所を辿る事ができるのだ。
ーーしかも不確実に辿るのではない。
アベルは帝国の都市部周囲の地図と城下町の地図を
書棚から両方を取り出した。
地図に手をかざすとアベルは自身の魔力に集中した。
(どこにいる?ジェニー…)
これで自分の魔力をマーキングした部分-つまり
ジェニーの居場所が地図上にオレンジの点になって
浮かび上がるはずだった。
アベルは地図を覗き込んだー。
「ーーここは…」
机の上に地図を広げたまま、アベルは魔法管理省
長官である義父レイモンドの元へ向かった。
外出する許可をもらう為だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ぽかんとするわたしを置き去りにして大公閣下は
話を続けた。
「現在の帝国の調査機関はエドモンドの管理に
あたる情報省…もしくはレイモンドの魔法管理
省内の魔法情報局になる。
しかし第三者機関として…帝国内の機密を
保持・管理する機関として私がいるのだよ。
帝国の監視役…番人の役割だ。
常に帝国での重要な機密やそれにかかわる犯罪を
調べる機関としてね…」
そう言うとわたしの方を向いて、ははっと声に出して笑った。
「聞いたことがないのは当たり前だな。
…私の裏の仕事はトップシークレットにあたるの
だから」
「フランシス前皇帝は快く思っていなかったから
ただの情報屋になっていたが、今回は…ある高貴
な方から正式に依頼されたものだ。
君が通報したエドモンドの息子の関与も
分かった為だが……。
ーー事前に情報としてあったが、彼は上手く立ち
回りなかなか尻尾を掴めなかったがね」
(大公閣下が高貴な方というのなら、更に高位に
あたる現皇帝陛下しかないじゃない…)
「君は本当に飲み込みが早くて助かるよ」
何も言っていないのにかかわらず、わたしの顔色を読み大公閣下はふふ…と目を細めて笑った。
「さて…」
大公閣下は両手を擦り合わせてわたしに言った。
「…何故ここまで赤裸々に君に伝えたと思う?」
大公閣下はまたニヤリとしてわたしに言った。
「…君もトップシークレットにあたる人物だ。
君自身が気づいていないようだがね」
読んでくださり、ありがとうございます。
ブックマーク、評価していただけますと嬉しいです。
宜しくお願いします。m(_ _)m
*なろうランキング登録中です♪︎
良ければぽちっとお願いします。




