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幸福な結婚とは? 1 アベル=バランタイン

小公爵アベル=バランタインは、婚約者である

ジェニファー=エフォート伯爵令嬢への対応に

正直戸惑っていた。


彼女は異世界から来てからというもの

ほとんど社交界には出席していないが、

今後はそういう訳にもいかない。


また結婚すればいずれ公爵家の莫大な土地と資産の管理を、今後バランタイン家の女主人として

してもらわなければならない。


勿論少しずつ勉強してもらえばいいのだ。


しかし今彼女の関心は薬草の研究と

その成果に伴う商品開発と販路の確保に

夢中のようなのである。


いやこの際、はっきり言おう―。上記の事など

今はどうでも良い。彼女が何に夢中でも別にいい。


問題なのは、この婚約と言う蜜月のはじめと

言っていい時期に彼女がアベルと過ごす時間が

ほとんどとれないのが問題なのだ。


勿論彼女だけを責めるわけにもいかない。


アベル自身も大学と副長官の仕事を兼任している

ため、わずかな空き時間をなんとか捻出して彼女と

会おうとしている姿が、何故だか彼女の

(いや多分()()()だろう)

負けず嫌いの魂に火を点けたらしいのだ。


「アベルが勉学と仕事に頑張っているのに

 わたくしが楽な身分で遊んでいるわけにも

 いかない…!」

と頑張りはじめたのである。


アベル的には

(楽な身分でいいのだ。いずれそうなるのだから)

と思っている。


出来れば自分が開いた時間にジェニーに会いたいし

彼女との仲を更に深めたい…と考えていたのが

全くアテが外れ、ため息が出る毎日なのである。


「…おい、副長官がまたため息をついているぜ」

「やはり二束のわらじってやつが大変なんじゃ

 ないか?勉強もだが課題も多いらしいからな」


部下の言葉に聞こえないふりを決め込んだが、

正直『何馬鹿な事を言ってるんだ』と

八つ当たりだと分かっていても怒鳴りたくなる。


大学の勉学の予習・復習も課題も終わっているに

決まっている。


ジェニーといつ会う約束が入るか分からないのだ。

 

心おきなく会う為に出来る事は全て済ませておく

―健気なアベルなのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


魔法管理省には事務員も含め職員が合計2千人弱

いる。


勿論トップオブトップはレイモンド長官だが

その下にアベルが続きスタッフ長、

国家魔法安全保障管理省、魔法科学担当省、

情報活動局、広報局、法律顧問局など

いくつかに分かれている。


その中で広報局の局長がラウラ=ベルハイムで

ある。


魔塔解体時に一度解雇され、再度魔法管理省で

採用された実力もあるダークブロンドの美女だった。


「あら…副長官様-今伺おうと思っていましたの」


彼女は書類を持ちながらアベルの方に歩いてきた。


30歳に届くかそこらだろうー仕事場に相応しい

黒の露出の少ないドレスではあるが

身体にはぴったりとしていて

豊満な胸や尻部のラインがハッキリと分かる。


むしろ露出したドレスよりも男の不埒な想像を

掻き立てる代物だ。

彼女は自分の魅力を良く分かっているー。


背が高い上にヒールがまたつま先立ちかと

思われる程高いものなので、

並ぶとアベルと目線が大分近くなる。


彼女がつけている香水は甘いというよりは、

エキゾチックな香りだ。


「こちらの確認をお願いいたしますわ」

とアベルへにっこりと笑った。

ー泣き黒子がまた目を引くのだ。


「…あら、珍しいですわね」

彼女がアベルの顔を見ながら言った。


「-何がですか?」


「いつもはわたしの顔など見ずに書類だけ

 受け取られますのに」


(そんな失礼な事をしていただろうかー?)

「…そうでしたか?」

アベルは首を傾げて訊いた。


「ええ。本当に珍しい」

ラウラは花が開くように艶やかに笑った。


(いくら何でも顔も確認しないのは駄目だろう)

「…以後気を付けます」


アベルは書類を受け取り自分の机へと戻った。


(はあ…ジェニーに会いたい…)

机に突っ伏しながら、なかなか会えない恋人を思って

またため息の出るアベルだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


魔法省の仕事の都合でバランタイン邸に

一度荷物を取りに行かなければならなくなった為、

アベルは一度帰宅し、エントランスへ向かった。


すると「ジェニ―様が温室へいらしてます」と

執事が教えてくれた。


「ーわかった。ありがとう」

と彼女の元へ向かおうとすると―。

慌てて執事が

「お待ちください!ご一緒の方がいます!」

とアベルを止めた。


「…?何?」

執事の慌て方が怪しくて、なんだか嫌な予感がする。

―が、アベルは敢えて執事に訊いた。


「一緒にいるのは男…?」(―まさかリリスか?)


「はい。一緒にいらっしゃるのは、食品医薬品

 管理局の局長ロベルト=シュナイダー侯爵閣下

 でございます」


よんでいただきありがとうございます。

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よろしくお願いします。m(__)m

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