装着
「我が名はゼニス。 君が望めば力を与えよう。」
そう言った少女は軽い足取りで少年に近寄った。
宝石のように光る赤い眼を少年に向け少女はこう続けた。
「現状に不満はないか? 叶えたい願いはないか? 力が欲しくはないか? 契約を結べば君に力を与えよう。」
矢継ぎ早に問いを浴びせかけられた少年は、驚きながら答えた。
「ちょっと、ちょっと待ってくれ。訳がわからないよ!」
次の瞬間また空が光った。
その光は、危機感を感じさせるような禍々しい赤い光。
それが先程の白い光条と似た軌道にわかれ、その一つがそこまで遠くない位置に落ちた。
「はやいな......」
少女はそう言うと、早口で少年に告げた。
「このままではあの赤い光に我もそなたも殺される。そなたの家族も消されるだろう。 我は戦えない。 君が望めば力を与えよう。選びたまえ、今が選択の時だ。」
少年は状況が理解できていなかったが、少女が嘘をついていないことは感覚でわかった。
つまり、何もしなければこのまま殺される。
そう感じた少年は、唾を飲み口を開いた。
「力が欲しい。」
その言葉を聞いた少女は満足げに言った。
「契約成立だ。時間がない、略式契約でここを凌ぐとしよう。」
赤い光が落ちた地点から何かが近寄ってくるのが少年の目にも見えた。
それが人を殺すための機械だと言うのは一眼でわかった。
あと5分もしないうちにこちらにたどり着くだろう。
「手を出して。」
少女にそう言われた少年は、機械を気にしつつ手を差し出す。
少女に手を握られると、ちくっとした鋭い痛みを感じた。
手を離され四角い機械を渡された。
「これで略式契約は完了だ。それを使ってアレを倒すとしようか。」
さっき何かをされた影響か、説明されずともそれの使い方はわかった。
機械の側面のボタンを押し、文言を発する。
「装着。」
体が何かに包み込まれていく。
瞬く間に全身が白いスーツに包まれた。
「さあ、君の力をふるいたまえ。」
少女にそう言われ、前をみると機械が銃を構えてこちらを狙っていた。
銃声が響き機械の左腕ガトリングから弾丸が発射された。
普通ならこのまま人間はミンチになって終わりだ。
だが少年の体は弾丸を全て避け、機械の懐に迫る。
機械はその動きに反応し右腕のブレードを少年に振るう。
その攻撃も少年には当たらなかった。
(不思議だ、体が自然に反応する。)
攻撃を避けながら少年は、自らの体の動きに驚いていた。
機械の弱点もわかっていた、胸のコアを砕けば終わる。
懐にいられてはまともに攻撃できないと判断し、機械は少年と距離をとった。
機械の胸が開きミサイルが射出されようとしているのが見えた。
ミサイルが発射された瞬間、少年は大きく踏み込み開き薄くなった胸の装甲ごとコアを貫いた。
ミサイルが制御を失い地面に落ちる、そのいくつかの爆発音を最後に戦いは終わった。
どこに隠れていたのか、いつの間にか少年の隣で少女は機械の残骸を眺めていた。
少女は白いスーツの少年に言う。
「お疲れ様、正式契約の話をしようか。」
答えようとしたが少年は体力を使い果たしその場に倒れた。
少女は光の消えた夜空を見上げ、ひとり呟いた。
「終わらせてあげるよ、かみさま。」
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