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カタチなきセカイへ  作者: ツカサマコト
前章
9/36

坂道の中心


――そしてバレンタイン翌日2月15日


 疲れていたからか昼過ぎに彼は起きた。

 携帯電話を確認するとやはり夢ではなかったようだ。

 彼女との待ち合わせのやり取りが残っていた。


 そして夕方の待ち合わせの時間、

 待ち合わせ場所に向かうとそこにはすでに彼女が待っていた。


 「ごめん。待った」


 そう初めてのデートの待ち合わせのありきたりの言葉にありそうな声かけをすると、


 「いえ、今日は私のわがままに付き合ってもらっているので、

  大丈夫ですよ。行きましょうか」


 彼女の言葉に確かに彼女がどこかに行きたいということだったがどこなのだろうか、

 昨日別れた場所の彼女が進んでいった道の方を進んでいった。


 『えっ。こっちの道って……』


 彼はそんなどこか邪なイメージを頭に思い浮かびながら、

 しばらく歩くと坂道があり、

 その坂道のちょうど真ん中あたりに差し掛かった時、


 「ここです」


 彼女が足を止めた。

 そこには、アンティークなどこか落ち着くような雰囲気のあるカフェだった。


 「ここ?」


 彼が聞き返すと、

 とにかく入ってくださいと彼女に引かれるように店内に案内された。


 内装もいい雰囲気を出していた。

 奥や壁際には本棚もあり、

 本を読みながらゆっくりコーヒーなどを飲んで過ごしている人がいた。


 そして、レジもあるカウンター席の方に彼女が向かうと、

 この店のマスターのような人が彼女に声をかけた。


 「あれ?

  今日は仕事は入ってないはずだけど……。

  それにその彼はもしかして……」


 ずいぶん親しそうに話をしている。


 「彼はサークルの先輩で、

  今日は奢ってくれるという事なので、

  お店の売上に貢献してあげようと思って連れてきただけです。

  店自慢の特性のコーヒーを2つお願いします」


 彼女はそう注文した。


 彼女とマスターのやり取りに水を差すのもあれなので、

 なぜか奢ることになっている疑問もあるけど、

 そこは黙って店の奥の席で待つとコーヒーの匂いがしてきた。


 しばらくして、

 できあがったコーヒーをマスターが席に運んで来た。


 「はいよ。男ならこのままブラックだろうから必要ないだろうが、

  席のそこにミルクと砂糖などはあるのでお好みで入れて調整しな」


 そういうとマスターはカウンターへ戻っていった。

 マスターに言われたのを気にしてか、

 とりあえずブラックのまま彼はコーヒーを飲んでみる。


 「うっ」


 昨日とは違い苦い。とても苦かった。

 甘すぎるのも苦手だか、

 苦すぎるのも彼はやっぱり苦手のようだ。


 ミルクと砂糖を入れて調整すると苦味の衝撃で良く分からなかった風味なども

 感じられるようになりおいしいと感じられるようになった。

 そんなどこか男らしくない姿を彼は彼女に見せてしまったけど彼女は笑っていた。


 「先輩も苦いのは苦手なんですね。」


 すると彼女は、


 「あと、さっきはマスターには奢ってもらうって説明しちゃいましたけど、

  あれは気にしないでください。

  後であれでしたら、ちゃんと出しますから」


 そんなマスターへの話しのやり取りのフォローから入ると続けて、

 この店で働いていることや、

 この店のどこかレトロで機械的な雰囲気がない所が、

 いつも真逆のコンピューターのプログラミングをしている同じプログラマーとして、

 彼にも機械というのを忘れられて気分転換になるのでは、

 という話で紹介してくれたらしい。


 そういえば彼女も同じサークルという事で、

 プログラマーだったことを忘れていた。


 今は3年生の専門学校で1年生として勉強をしているらしい。

 そんな世間話をしながらゆっくりと過ごしていた。


 この2日間の出来事をきっかけに連絡先の交換や世間話もして、

 彼女との距離感が短くなっていった。


 その一方で近くて遠い、どこか苦しい坂道をのぼっているような、

 それとも坂道を転げ落ちているような、

 彼は何とも言えない感情で彼女を意識していくようになっていた……。



【次話】 心の火種


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