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カタチなきセカイへ  作者: ツカサマコト
前章
7/36

再会・〇・距離


 それからしばらくして、彼は大学3年になった。


 就活も視野にする中で、

 別の大学にいって連絡も取っていなかった高校の時の元部活仲間から急に連絡がきた。


 『戦場では己の力量と敵の様々な情報をクロスさせ、

  上手に活かせたものが勝利する。


  それにはすべて他社=他者との出会いから生まれる

  様々な出会いの先にこそ求めている未来があるはずだ。


  ちょうど良い場所を見つけたので同じ同志として協力し合わないか』


 っとかなんとか少し分かり難い言い方をする知り合いの誘いだった。


 簡単に言うと、


 『就活も始める頃だろうから、良いサークルを見つけたので、

  一緒に情報交流の為にも参加してみないか……。

  ……あとは出会いがほしい』


 というような所だろう。


 そこには多数の大学や専門学校などから集まるインカレサークルの誘いだった。

 怪しい勧誘というのも最初は疑ったが、

 色々調べて見るとコンピューター関連のまともな活動をしているインカレサークルのようだった。


 創設者もどうやら同じ高校のOBの人が作ったようで、

 高校の部活の延長という感じで作ったサークルっといった所だろうか。


 ともかくサークルは課外活動のような事にもなるので、

 就活に活かせるかもしれないし、

 過去の人の話など情報も得られそうと思い参加してみることにした。


 何度かサークル活動に参加してみたが、

 色々な所から集まっているインカレサークルだけに人が多くいる。


 『あまり人と接するのが苦手なので、なじめていない所はかなりあるが、

  アルバイトの経験でお客とのやり取りもするので

  昔よりはそれなり人見知りも苦ではない。


  でも、ここにいてもお金にはならないし、

  アルバイトをしていた方が良いのではないか。


  とりあえずサークル活動に参加していた事実はできたし、

  誘ってきたあいつも同時に入ることで、地味なのより優位にみられたいという、

  最初の比較される際の引き立て役的な要員を探していただけのようで、

  今ではどこかにいってしまったので役目は果たしただろう』


 ……そんなことを考えながらぼーっとしていた彼の後ろから急に声がした。


 「あれっ?先輩ですよね?」


 彼は後ろを振り返ってみると、

 声をかけてきたのはアルバイト先でも見ることがなくなり、

 もう見ることはないと思っていた彼女だった。


 ぼーっとしていた彼は寝ぼけて幻覚でも見えているのか。

 突然のことに良く状況が理解できずに何かを考える余地もなく、

 その場しのぎのように反射的に答えた。


 「えっ……あっ……そうだけど……」


 その言葉を聞いた彼女は少し微笑んだように見えた。


 「先輩もこのサークルに参加しているんですか?」


 彼女がそう尋ねてきた。

 彼は頭の中が真っ白になりそうな動揺を隠しながら、


 「まぁ……つい最近だけど、知り合いに誘われてね」


 そう答えるので精いっぱいだった。


 「ふ~ん。そうなんですね。じゃあ……。

  また先輩の後輩という事になりますね」


 どこか楽しそうに彼女が言うので、


 「いや……。

  前の時も特に先輩というようなことは、

  何もしたことないと思うけど……」


 と思わず自分に言い聞かせるようなツッコミを口に出して言ってしまった。


 「そうかもしれませんけど……」


 そう答える彼女の言葉には、

 どこか意味深な感じを含ませるような余韻を残していたように感じた気もしたが、


 ブブ……ブブ……ブブ……ブブ……


 そんな小さな違和感のことは彼女の携帯電話が鳴ってすぐにかき消された。


 「あっ……。

  そろそろ行かないと行けないので

  これで失礼します……」


 そういうと彼女はどこかに向かって行ってしまった。


 彼女がいなくなり、冷静になった彼は何が起こったのか思い返すと、

 ほんのあいさつ程度の些細な話でしかなかったが疑問と気恥ずかしさが残った。


 まず疑問として、なぜ彼女は話しかけてきたのかという事もそうだが、

 彼女は彼の事を知っていたようなそぶり、ほとんど話したこともなく、

 まともに話したのはさっきの会話ではないかと思うくらいだ。


 そもそも彼女が見たことのある顔というだけで、

 何となくで話しかけてきた可能性もあるし、

 誰かと勘違いして話しかけてきた可能性もある。


 そんな彼女に対して、

 知っているように会話を彼は合わせてしまったのだ。


 彼は彼女をよく見かけていたから知っているのは事実だが、

 それは一方的にであり、

 面識としては誰だったかと確認を取るような返しをする方が、

 他から見ると自然だった気がする。


 それだけならまだその場の感じでよく分からずに合わせているだけ、

 と言い訳も出来そうだが、

 自分から先輩として何もしていないという事も言ってしまっていた。


 そのため、一方的に意識して覚えていたような存在だったというのが、

 変に彼女に伝わってしまっていたのではないか、


 そう考えると話しができたことで知り合いという面識ができた一方で、

 これからまた会うかもしれない彼女に対して、

 何よりも気恥ずかしくてしょうがない感情の気まずさを残した。


 そんなあれやこれやの事を彼が心配しながらサークル活動をする中、

 特に何もなかったように彼女はそれからも彼を見かけた時には話しかけてくれた。


 サークルの話などが中心だが徐々に彼女とも話すようになっていったが、

 2つ年下の後輩という意識なのか、

 どこか見えない壁のようなもので何かを隠すように

 先輩と後輩というその距離感を保っていた。



【次話】女神のイタズラ?


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