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カタチなきセカイへ  作者: ツカサマコト
後章
33/36

11月・スピリットマリッジ


 翌年、11月1日。


 10月末のハロウィンの夜は死者の霊が家族を訪ねてくるとも言われているのもあり、


 その翌日の今日、何かの縁が結んでくれるかもしれないと願掛けのように

 彼女の願いを叶える日に彼は選んだ。


 

 そして彼は、彼女の仕事仲間の力を借りてQ部(キューブ)の部屋の中に、


 彼女が仮想空間に残していた記録アルバムの中で見つけた

 彼女の両親が式を挙げた長崎の綺麗な海の見える式場を再現してもらっていた。



 ちょうど結婚式の当時に彼女のお母さんは妊娠を発覚したらしく、


 この場所で、彼女はお母さんの中に生命を受けて家族として認識された……。

 そんな彼女の始まりの場所……。


 Q部(キューブ)の技術はすごく、本当にその場所にいるような空間を再現してくれていた。



 その時、Q部(キューブ)の入口の扉が開いた……。



 扉が開くとそこにはウエディングドレスを着た彼女がそこにはいた。


 彼女の着るウエディングドレスは、

 特別にこの日の為に作った特殊な構造色で出来たドレスになっている。


 構造色で作られている為、

 ドレス自体には色はついていないはずが、見る角度などで様々な色彩に見える。


 それは純白という白色よりも穢れのない本来は透明でいながら、

 人には何色にも見える多彩な色を持つ、矛盾したような二面性のある不思議なドレス。


 色は、色の三原色が基礎となり、全てが混ざると黒く見える。

 光は、光の三原色が基礎となり、全てが混ざると白く見える。

 逆に色の白は色の三原色とは別に特殊で色を混ぜても作れず単独で存在している。

 光の黒は光の三原色とは別に光が存在しない所の存在で黒い光は存在しないと言われている。


 構造色はその物自身には色が存在しないけど構造による光の干渉の仕方で色が存在する。

 あるように見えても本当はない……。


 まさに彼女そのものを表したようなドレスになっている。


 今、見えている彼女もQ部(キューブ)という空間と、

 特別な最新技術を合わせて再現した偽りのものだ……。


 実体のある特殊な人型のロボットにドレスを着せて、

 空間マッピング技術でロボットに彼女の姿を重ね合わせて形だけ再現したものだ……。





――式は進み


 誓いの指輪の交換が始まる。


 彼女との思い出として見つかったのは、

 彼女が残した仮想空間のデータがあるくらいで、


 形のあるものはない……はずだった……

 が唯一、彼女が大事に保管していた彼女の両親の形見の結婚指輪も残っていた。


 その指輪を少し直して新しく作り直した指輪を彼が持っている。


 彼が指輪を取り出し、

 彼女の手をつかむと特殊な技術により、それはとても暖かい温もりを感じた。


 彼はこれも、ただ似せているだけの偽りだと分かっていても……

 視覚、聴覚、触覚で彼女を感じてしまうと……

 嗅覚に味覚……五感の全ての感覚も記憶の刺激と共に彼女の存在の錯覚を起こす……



 彼が彼女の手に指輪をはめて、

 彼女の手を持ったまま、彼女の顔を見た時に彼女が微笑みを彼に見せる……



 その微笑む彼女と彼の目があった瞬間……

 その黒く、宇宙のように美しい黒い瞳に吸い込まれるような感覚に落ちた……




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