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カタチなきセカイへ  作者: ツカサマコト
後章
32/36

カイキ


 ……。


 それから、11月になった。


 山形のおじさんの家から黒一色の服装をしている彼が出てきて、

 夏祭りをしていたあのお寺に向かっていた。


 夏祭りに来た時とは違い静かなお寺……。


 その一角に緑から黄褐色、そして赤褐色へと紅葉して、

 色鮮やかに染まった大きなケヤキの木が佇んでいる……。


 そんな綺麗な樹齢何年もするだろうか、

 その紅葉したケヤキの木の下にある一つのお墓の前で彼が立ち止まった。


 そのお墓にお供え物をした彼は、誰かに話すように言葉をかける。


 「忘れてしまった事が多いかもしれないけど、

  キミが僕の中からいなくなって今日でちょうど三年……。


  遅いかもしれないけど、キミと過ごして楽しかった事は少し思い出した……。

  でも、キミとの最後の瞬間はまだ思い出せない……。


  思い出すときっと死ぬほどつらいから優しいキミが、

  持って行ってしまったのかもしれないね……。


  本当はそれもキミとの大事な思い出だから受け入れないといけないのだろうけど……。

  ごめん。どうしてもまだ思い出せないんだ。


  キミは未来を夢見て行動していた事を聞いたよ……。


  まさか、自分に万が一の事が起こった時の為に、

  あんなことを義父(おじ)さんに頼んでいたなんて……。


  そんなキミの夢には気付かずに自分勝手に生きていた自分がどれだけ子供じみていたか……。

  年齢的には年下のキミだったけど本当に大人びていて憧れだった。


  キミが残した……。一生のお願い……。


  望んでいるものになるかは分からないけど……。


  みんなの力を借りて、なるべく叶えられる形になるようにしようと思う」


 彼はそう独り言を報告するように語りかけた後、

 手を合わせて目をつぶりながら、長くその場に留まり続けていた……。


 その時、明るかったその場が昼間なのに夜のように暗くなりだした。


 彼もその異変に気付き上を見上げると紅葉した綺麗なケヤキの向こうの空に

 常に光輝いている太陽が黒く影がかかったように日食を起こしていた。



 太陽と月が重なり合い、

 太陽が出ていれば明るいというあたり前に思っていた日常が、

 夜のように暗く、何か怪奇な雰囲気の非日常な空気感に変えていた。



 それは、ずっと前から決まっていた事が起こっただけなのかもしれないが、

 その日の彼には誰かが何かを伝えようとしている……。


 そんな気持ちにもさせていた……。



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