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カタチなきセカイへ  作者: ツカサマコト
後章
29/36

6月・雨上がりの招待状


 6月になり、今日も外は雨が降っている。

 最近は梅雨で雨が多い。


 そう彼が外を眺めていると、


 「外を見ても雨しか降っていないだろ。こっちにこい」


 彼を呼ぶのは義父(おじ)さんだ。


 たまに様子を見に来てくれる義父(おじ)さんだけど、

 今日は少し陽気になっている。


 6月は彼の誕生月で今日が誕生日らしい。

 彼も今年で31歳完全におじさんという感じの年齢になっていた。


 記憶をなくして山形に来て、1年ほどたつことにもなる。


 去年は色々あって、

 お祝い事どころではなくてできなかったからと、

 義父(おじ)さんも来て、

 山形のおじさんと彼の誕生日を祝ってくれているようだが、

 祝い酒という名目でお酒を飲みたいだけのようにも見える。


 彼も主役ということでその飲みに付き合わされて、

 酔いつぶれて寝てしまっっていたようで、夜中に彼が目を覚ました。


 少し飲みすぎたせいか目を覚ますと頭が痛むので、

 彼は酔い覚ましに少し縁側で休むことにした。


 外で降っていた雨もやんでいて、

 少しひんやりして涼しい風があり気持ちが良い。


 彼が酔い覚ましをしている所に義父(おじ)さんが来て、

 彼の隣にそっと座った。


 そして、何も言わずに沈黙したまましばらく時が過ぎると、

 手に持っていた水の入ったペットボトルと1つの封書を彼に渡した。


 「これ、渡すかどうか迷ったけど。

  もう1年以上もたつし、まぁどうなるか分からないけど、

  誕生日プレゼントという訳ではないが、

  あとはどうするかは自分で決めてくれ」


 そういうと義父(おじ)さんは部屋に戻っていった。


 彼は酔い覚ましに水を一口飲んでから、

 封書を開けて中を確認すると1通の招待状が入っていた。


 それは来月7月7日のまだオープン前の建物の1つのエリアが指定されていた。

 その招待状には『あなたの思い出があります』そう書かれていた。


 忘れてしまった事に関係することがあるのだろう。

 ただ忘れたことには理由がある。忘れたままの方が良いこともある。


 でも、こうして誰かが何かをしてくれようとしてくれているのを

 無駄にするのはどうなのか。


 雨だって降りすぎて耐えられずに悪いことを起こすこともあるかもしれないけど、

 雨は恵みにもなる訳で必要な場合もある。


 それに晴れて、今のように綺麗な星が見えるのかもしれない。


 雨上がりの縁側で夜空を見上げながら彼は、

 誰かが隣にいて何かを後押ししてくれようとしている

 そんな気持ちを大事に思うことにした。


 彼がそう思うと夜空に1つ流れ星も流れた……。



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