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カタチなきセカイへ  作者: ツカサマコト
後章
26/36

3月・ペアの偶像


 3月に入り、まだ冬の終わり頃という感じもあるが、

 これから春に向けての季節も変わり始めようとする時期だろうか。


 午後、山形のおじさんの家を訪ねると、


 「おぉ~。来たか。まぁゆっくりしていきな」


 山形のおじさんに家の中に招き入れられた。


 「あっ。お兄ちゃん来たんだ。ほらこっち」


 招き入れられて、早々に山形のおじさんの孫娘にどこかに案内される。


 「ほら、今日はひなの日だよ。」


 そう山形のおじさんの孫娘に言われて部屋の中を見ると

 そこには、豪華な雛人形が飾られていた。


 今日は、3月3日雛祭りの日だったようだ。


 彼は女の子の行事であまり馴染みがなかっただけに、

 珍しそうに綺麗に飾られている雛人形を眺めていた。


 彼は雛人形を眺めながら雛祭りについて、

 『雛祭り……

  雛人形は形代(かたしろ)と呼ばれる人形の一種で、

  神や霊が依り憑く依り代ともされていて、


  娘の身代わりとして、

  娘に襲い掛かろうとする病や災厄を雛人形にうつして避ける

  とも言われている厄除けのような行事でもある。


  物に憑依させる概念は、

  ある意味で式神やイタコのようなものと繋がるものが、

  何かあるのかもしれない。


  もし本当に身代わりになってくれたとしても、

  何か見返りや代償は……


  いや……


  お供え物をしているし、

  こうして信じる事も十分意味があるのか……」

  

 っと色々興味を持ちながら彼が雛人形を眺めながら考え込んでいると、


 「ほら、そろそろ食べよう」


 そう山形のおじさんの孫娘に呼ばれて、

 雛人形を眺めるのをやめて食卓に彼が向かうと、

 ちらし寿司など主役の孫娘の為に色々と用意されていた。


 それから、山形のおじさんの孫娘も眠りについた頃に

 再び彼がまた雛人形を眺めていると、


 「雛祭りと言えば、これだよな。ほらっ」


 そういうと山形のおじさんが白酒(しろざけ)を彼にふるまった。


 お酒の酔いがまわったのか彼がぼーっとなっていると、

 ぼんやり彼は雛人形を同じように眺めていた……

 誰か知り合いのような人がいたことが思い浮かんだ。


 とある街中のお店のショーウィンドウに飾られた雛人形を眺める女性。


 『誰だったかな……』


 彼はそうぼんやり思いながら夢現な状態のまま眠りについた。



――翌日


 眠っていた彼を揺さぶって起こそうとする山形のおじさんの孫娘がいた。


 「ねぇ。お兄ちゃん。手伝って……」


 どうやら雛人形の片付けをしているようだ。


 『雛人形を片付けないで出しっぱなしにしていると

  婚期が遅れるなどと言われたのだろうか……


  一時的に雛人形をうしろ向きに飾って終わったことを知らせればとか、

  雛人形は形代という理由で守り神としてずっと飾るとか、


  色々な考え方もあり、

  結局は思い込み次第の物は言いようの迷信に近いけど……』


 などと少し眠いのもあってか、

 面倒くさくてさぼりたい気持ちと葛藤しながらも彼も片付けを手伝っていた。


 「はいっ。最後にこの主役の()()をしまったら、おしまいっ」


 っという最後の何気ない山形のおじさんの孫娘の言葉だったが、

 彼は『()()』という言葉に

 何かが憑依したような何か引っかかるものを一瞬感じた。


 でもそれは、ほんの一瞬のことで手に取っていた女雛(めびな)を見ても、

 もう彼は何か引っかかるものは特に感じない。


 彼は不思議な感じに包まれたが何かの気のせいと思いながら、

 雛祭りの主役の男雛(おびな)女雛(めびな)をしまった……。


 その日は雛人形を片付けるのにも良い晴れた天気で、

 家の中にも光がさし、家の中にできた日向(ひなた)で片付け終わりに休む彼を

 春の少し暖かい風が癒すように吹き込んで包み込んでいた。




【次話】4月・散り櫻の幻想

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