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カタチなきセカイへ  作者: ツカサマコト
後章
24/36

1月・新年の運だめしと音色


 ピンポーン!


 チャイムが家に鳴り響く……


 「んっん~」


 彼は寝ぼけていると、


 ピンポーン!ピンポーン!ピンポーン!


 家のチャイムが何度もなり、さすがに彼も気付いて、

 寝ぼけまなこで玄関に行ってドアを開けると


 「新年あけまして、おめでとうございます」


 山形のおじさんの孫娘が新年の挨拶に来たようだ。


 「ねぇ。お兄ちゃん。今日はお正月だよ」


 お正月というのを聞いてくるという事は、


 「あぁ。そうだ……。はいっ。あけましておめでとう」


 やっぱりこれが目当てか……っと彼は挨拶を返すと同時にお年玉を渡した。


 「ありがとう。でも、それよりお祖父ちゃん達がそろそろいくって……」


 お年玉というよりは、山形のおじさんの遣いで来たようだった。


 そう、毎年正月は人が多くなるということで山形のおじさんの家は、

 少し離れた所にある神社の手伝いをしにいくのだそうで、

 今日は、その手伝いをしている間の孫娘の遊び相手役を彼は頼まれていたのだ。


 山形のおじさんの所に行き、みんなで神社に着くと、

 「じゃあ。ちょっと手伝いに行っているから孫の面倒を頼む」


 そう山形のおじさんは言うと先に神社の社へ向かっていった。


 残された彼は、

 「初詣だから、神様の所にお願いしに行こう」


 っと山形のおじさんの孫娘に言われて、

 神様に挨拶をしに行くために、

 まずは神社の入口の大きな大鳥居に一礼して向かった。


 『今年は、良い年になりますように……』


 彼が、そう神社の神様への新年の挨拶を終えると、


 「ねぇ。新年の運試しだよ。おみくじ引こう」 


 っと山形のおじさんの孫娘に言われるがまま、おみくじを引いた。


 「あっ。私、大吉だ~」


 一番良い大吉を引いて、嬉しそうにする山形のおじさんの孫娘を横目で見ながら、


 彼は自分の引いたおみくじを見る。


 「大凶!」


 彼は思わずびっくりして声にだしてしまった。


 「お兄ちゃん、大凶ってすごい。

  ここの神社は少なくて出にくいのに何かに憑かれているのかな。

  私と真逆だね。」


 彼の表情など反応を見て笑顔で言ってくる山形のおじさんの孫娘だが、


 「でも、この神社の大凶は本当に出るのは珍しいことだから逆に運があるかもしれないよ。

  それに悪いおみくじは、

  神様がおみくじで教えてくれたことで気付けるようにしてくれたということだから、

  これから悪いことが起こりそうとか気付きを大切に心にとどめて置いて、

  もっと神様の力の手助けも貰えるかもしれないから神社に結んでいくと良いんだよ」


 山形のおじさんの孫娘は悪いおみくじを引いた彼をフォローするようにいうと

 彼はおみくじを結び付けれる場所に向かった。



 おみくじを結び付ける場所は、

 この神社の御神木の桜の木の下に用意されていた。


 桜とは言え、さすがにまだ花を咲かせていないので、

 春になるまではただの木のようにしか見えないだろう。


 この神社は、桜の木で作られていたり、

 桜の木に因んだ逸話などがあることから桜の木を御神木にしているのだとか。

 その為、おみくじを結び付ける所も桜の枝で出来ていた。


 彼がそこにおみくじを結び付けようとした時、

 

 「あっ!利き腕と反対の手で結ぶと、

  神様も見ている所で困難な行いを達成することで凶が吉に転じる

  って願掛けがもあるから利き腕じゃない方で結ぶと良いんだよ」


 っとまた山形のおじさんの孫娘からアドバイスをもらった彼は、

 ちょっと苦労をしながら利き腕とは反対の手で大凶だったおみくじを結び付けた。


 そして、アドバイスをもらったのも含めて彼がほめるように


 「ずいぶんと物知りだね。ありがとう。」


 そういうと山形のおじさんの孫娘は、


 「実は、前に時折遊びに来てくれていたお姉ちゃんが、

  ここのお手伝いで巫女さんをしていた時に、

  この神社の事を色々と話して教えてくれたのを覚えていたんだ」


 と謙遜するように照れくさそうに言うのを見て、


 『人の話をしっかり覚えていて、

  人に教えられることも十分にすごいことだと思う。

  それに比べて過去を忘れている自分は……』


 と彼がマイナスに考え込みそうになった時、

 どこからか音色が聞こえてきた。


 「あっ!始まったみたい。見に行こう」


 そういうと山形のおじさんの孫娘に彼は手を引かれて連れられて行く。

 その瞬間、まだ子供の手なのに一瞬、何かが重なったように感じて彼はドキッとした。


 連れられて行った先では、

 音楽に合わせて、巫女さん達が舞を踊っていた。


 「これはね。あの神楽殿っていう舞台みたいな所で、

  神様に奉納するための歌や踊りをする神楽って言うんだよ」


 山形のおじさんの孫娘にまた1つ彼が教わっていると

 彼の手に花びらが……。


 『桜?』 


 そう疑問に思った彼が見上げて神楽殿の方を見ると、

 神楽殿の後ろにいくつか木がある中で、対になるように2本の桜の木が満開で咲いていた。


 1月の冬なのに桜が咲いているその不思議光景に

 彼も不思議な表情をしていると、


 「あっ!もしかして桜が咲いているのに驚いてるの?」


 その言葉に不思議な光景を目の前にして言葉が出ない彼は、

 うなずくと山形のおじさんの孫娘は補足して教えてくれる。


 「冬に咲く桜もあるんだよ。知らないの?。

  この神社の御神木は春にしか咲かない桜だけど、


  この神社は桜に縁があるから、

  春夏秋冬でそれぞれで咲く色々な種類の桜の木が植えてあるんだよ」


 桜は春に咲くものとイメージの固定概念あっただけに、

 その壁が崩れて、彼はとても不思議な気持ちに包まれている中で、

 神楽の綺麗な舞と音色もよりいっそう美しく感じさせ、


 さっきマイナスなことを考えかけたことやドキッとしたことも

 どこかに浄化されるように消えていくようだった……。


 『そういえば、初夢で綺麗な……。誰かが出て来たような……。』


 彼はふと、朝に起こされる前に寝ぼけて見ていた初夢で何か大切なものを見ていたような

 何か靄が掛かったようなイメージが頭の中をよぎった気がした……。

 



【次話】2月・疑心暗鬼と言霊


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