10月・ハロウィンの幻像
彼はプログラミングをやっていたことを思い出し、
過去の記憶がもっと思い出せるかもとパソコンを購入して、
時おりリハビリするようにプログラミングの勉強をするようになった。
そんな彼がパソコンに向かっていた時、
彼の家のチャイムが鳴った。
「トリック・オア・トリート。
お菓子をくれないといたずらするぞ」
彼の前でそう楽しそうにいってくるのは、
山形のおじさんの孫娘だ。
黒とオレンジの入った帽子と服で魔女の仮装だろうか。
そう今日は10月末のハロウィンの日だ。
「えっ。いや何もないけど……。
悪戯できるものならどうぞ」
そういうと水鉄砲をおもむろに取り出して彼に水をかけてきた。
「うわっ!冷たっ!」
完全にずぶ濡れにされてしまった。
そのずぶ濡れになった姿を見て水をかけた方は楽しそうに笑っていた。
「ちょっと、シャレになっていないぞこれは……」
彼はずぶ濡れになった状態でやりすぎだろという抗議をする。
「トリック・オア・トリート。
お菓子をくれないとまたいたずらするぞ」
笑いながら完全にこちらの言うことを聞いていない感じで、
もう一度、お菓子の要求をしてくる山形のおじさんの孫娘。
「いや、今さっきないって言ったばかりだよ。
お菓子が用意できるわけないよ」
そう彼が言うと今度は軽めに水鉄砲で水をかけられた。
「ハッピーになりたければ、
また来るのでそれまでにお菓子を用意するのだ」
っと言いながら小さな魔女はどこかにいった。
とりあえず、ずぶ濡れになったのでタオルで髪などをふきながら、
魔女が戻ってくる前にお菓子を手に入れに行くために彼は着替えをすることにした。
彼が着替えをしていると鏡に自分の姿がうつった。
ずぶ濡れになった自分の姿を見て、笑われていた光景を思い出していると、
同じようなことをどこかで見たようなデジャブいわゆる既視感を感じていた。
ただ、そんなことを考えている場合ではなかった。
また同じように魔女がやってくるというのを思い出し、
彼はお菓子を調達に出かけた。
しばらくして、
「トリック・オア・トリート。
お菓子をくれないといたずらするぞ」
っと再び山形のおじさんの孫娘が本当にやってきた。
今回は、お菓子は調達済みだった彼は、
「ハッピーハロウィン」
っと言いながら彼は、
魔女に仮装している山形のおじさんの孫娘に調達したお菓子を渡した。
「う~ん。これはこれで残念。
ハッピーハロウィン。良いことがありますように」
そういうと悪戯ができなくて残念そうな雰囲気も出しながら、
山形のおじさんの孫娘はどこかに帰っていった。
濡らされるし、お菓子は取られるし、
本当に良いことがあればよいけどと彼は今日の出来事を思い返しながら、
なぜだろうか既視感のようなものが消えずに、
どこか魔女に不思議な魔法にかけられたような不思議な気持が残っていた。
【次話】 11月・__