9月・ツキの面影
山形のおじさんの家を訪ねると
よく見かける山形のおじさんの孫娘が来ていた。
「これ、私が作ったんだ」
おじさんの孫娘はノートパソコンを持ってきていて、
何かを山形のおじさんに見せていた。
「こういうのは良く分からないんだよな」
山形のおじさんは機械にはなれていないようで、
何かを見せられているが良く分かっていない。
「もう。じゃあ、お兄ちゃんやってみてよ」
夏祭り以降、お兄ちゃんと呼んでくれるように、
なついてくれているようになったが、
いったい何をやれというのか彼がノートパソコンの画面を見ると、
そこにはちょっとした手作り感のあるグラフィックのゲームのようなものが映っていた。
「ゲーム?」
彼はそう見たままに疑問を投げかけると、
「そうだよ。最近プログラミングの勉強していて私が作ったんだよ」
最近は幼い時からプログラムを習うのは珍しいことではない。
彼自身も幼い頃にゲームのプログラミングなどを習っていたのだから。
「プログラミングか……」
そういうと山形のおじさんの孫娘が作ったゲームを彼はやってみる。
「ここ、何かおかしいくない?」
彼は何かに気付いてそういうと、
「お兄ちゃん分かるの?」
山形のおじさんの孫娘にそう聞かれて彼は気付いた。
彼は言葉と同じようにプログラミングに関する知識を忘れていなかったようだ。
――その夜
彼は不思議な夢を見ていた。
どこかの公園で幼い女の子が泣いている。
彼はその幼い女の子に近付いてノートパソコンを取り出し、
その幼い女の子に自分の作ったゲームを見せる。
自作ゲームを見せると幼い女の子は興味を持ったように不思議そうに見ていて、
泣き止むのをやめていて、そして、彼に笑顔を見せた。
はっ!
っと彼は目を覚まさす。
現実のような感覚のあった彼だがどうやら夢?
を見ていたようだ。
夢の中にいた女の子の顔も覚えていた感覚があるのに起きた今はよく覚えていないし、
何より昼間だったのが今は夜になっている。
どうやら山形のおじさんの家で寝てしまっていたようだ。
そして、山形のおじさんの家を出て、
隣の彼の寝室がある家に戻る途中、
いつもより外が明るいなと気付き彼が夜空を見上げると、
そこには綺麗に輝く満月が光っていた。
綺麗な夜空の満月だけど、
ふと、ある話を彼は思い出す。
月は太陽の光を反射して地球から綺麗に見えているけど、
でも月は地球からは常に同じ面だけしか見せてはくれず、
地球から月の裏側を見ることはできないということだ。
満月を見ながらそんなことを思い出し、
人も誰かから見られる表側だけ綺麗に見せても、
裏側でどうなっているか分からない。
自分自身の過去という裏側が見えていないのも、
本当に必要なのだろうか記憶を思い出そうとする気持ちに、
満月に何かを重ねてしまったのか彼は少し疑問と不安を感じていた。
【次話】 10月・ハロウィンの幻像