幻影
……。
「あつい……。のどがかわいたなぁ……」
そうつぶやきながらリビングを抜け、
寝ぼけまなこでキッチンへ向かう小さく幼い男の子。
見た目は、まだ幼稚園の園児といった所だろうか。
そんな幼い男の子は、
どうやら飲み物を求めて、キッチンの方へ向かっているようだ。
キッチンの冷蔵庫が男の子から見えると、
男の子は足早に冷蔵庫へ向かって駆け寄る。
そして冷蔵庫にたどり着いた男の子は、
冷蔵庫を開けて冷蔵庫から飲み物を取り出した。
そうとう、のどが渇いていたのか。
グビグビと男の子は勢いよく飲み物を飲む。
男の子は飲み物を飲み終えると、
のどを潤して満足したのか気分よさそうに元の部屋へ戻ろうと、
また足早に来た通路を戻ろうとした……その時……。
「いたっ」
男の子は何かにつまづいて大きく転倒して、
うつ伏せに倒れこんでしまった。
何につまづいたのかは、男の子は分からなかったが、
その時にでた男の子の声と音に何かが反応して、
何か遠くの方で別の物音が聞こえた。
男の子は物音が気になり注意して耳をすますと、
ものすごい勢いで誰かが、こちらに近づいてくるような足音のようだ。
足音が男の子の方へどんどん近づいて来る……。
そして、男の子の近くでピタッと足音が止まった。
そう思った時、うつ伏せに倒れている男の子はなぜか、
うつ伏せから仰向けにひっくり返された。
ひっくり返され、
仰向けになった男の子の今度は両肩に足の膝が乗っかてくると、
そのまま男の子を仰向けで固定するように馬乗りで、
格闘技のマウントを取るような状態になった。
馬乗りになったことで、
男の子の視界に近づいて来た人の顔がうっすらと見える……。
『えっ!』
男の子はすごく驚いた表情を浮かべた。
それもそのはずだ。家にいたから両親かと思っていたが、
見たこともない男の人が男の子の瞳には映っていたからだ。
その男の人と男の子の目が合うと男の人は、
僕を足で固定したまま、
両手を振りかぶり僕の顔に向けて、
大きく振り下ろそうとする……。
【次話】 ユメと日常