表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カタチなきセカイへ  作者: ツカサマコト
後章
19/36

8月・夏祭りと絵馬

 夏の暑さを増していく中、

 また山形のおじさんの孫娘が来ていた。


 「今日はお祭りだよ。

  そういえば、前になくしたっていっていた鍵は見つかったの?」


 「いや、まだだけど」


 「じゃ、夏祭りのついでに神様にお願いしに行こう」


 そういうと、


 「お祖父ちゃん、おじ……ではなくて、

  お兄ちゃんと夏祭りに行ってくるね」


 っと山形のおじさんの孫娘は、

 山形のおじさんにそう伝えると彼の手を引いた。


 「なんか悪いけど。孫娘の面倒をよろしくな」


 そう山形のおじさんに面倒を頼まれてしまう。


 夏祭りの会場のお寺につくと、

 出店や盆踊りの音楽などまさにお祭りという感じの景色が広がっていた。


 「お兄ちゃん、あれ買って、あっ、あれもしたい」


 いつもおじちゃんとか言うのに呼び方を

 今日はお兄ちゃんとは山形のおじさんの孫娘は完全に彼にこびている……。


 誰に教わったのだろうか、

 でもお兄ちゃんと言われるのは彼も悪い気はしていないようで、

 彼も一緒につきあって行動はしていたが、


 「ちょっと、そこのお嬢さん。

  人の事をお財布扱いしていませんか……。

  神様に会うお金がなくなっちゃうよ……」


 彼がそういうと何かを思い出したように、

 山形のおじさんの孫娘は言う。


 「あっ!えっと……。これは違うんだよ。

  神様に会う前にいいことをするとちゃんと神様は見ているから、

  願いも聞いてくれやすくなるんだから……」


 これは、個人の欲を叶えただけで、

 いいことなのかと少し疑問に思う所はあるが、

 とりあえず今度は周りに惑わされずに

 しっかり神様の所に案内してくれるようだ。


 「ここだよ」


 山形のおじさんの孫娘にそう案内されると

 絵馬などが売っているお寺の売店についた。


 売っているものなどをみると、

 亡くなった人にも縁があるように供養するようなこともしているらしく、


 どうやらこのお寺は縁結びなどのまさに、

 ご縁が結べるようなものを売りにしている感じのお寺のようだ。


 なくなったのは過去の記憶なのだけど、

 過去の自分がなくなって、常に現在の自分がいるとも言えるし、


 そんな過去の自分の記憶との縁を願うのも間違いはないか……。

 などと考えながらもとりあえず絵馬を買って願掛けすることにした。


 『過去の自分が忘れた記憶と、よりを戻せますように』

 と絵馬に書いて飾ろうとすると、


 突然、強い向かい風が吹いた。

 飾っていた絵馬もガチャガチャと音を立てて揺れる。


 しばらくして風がおさまると……。

 ガチャンッと1つの絵馬が落ちる音がした。


 絵馬が落ちるなんて、

 これは縁起が良いのか、それとも悪いのか、


 そんなことを考えながら落ちた絵馬を拾うとそこには、

 『いつか結婚できますように』っと書かれた絵馬だった。


 この願いだと願いを叶ったから落ちたのか、

 それともキャンセル的な意味なのか、

 結婚ができたけど良くいかなくて別れたとかも考えられるか……。

 そんなことを彼が考えていたら、


 「あっ、それ私が届けてくるね」


 そういうと山形のおじさんの孫娘は絵馬を持って、

 買った所にいたお寺の人に事情を話して絵馬を渡して戻ってきた。


 「願い事は結んだ?」


 「あぁ。今結んだよ」


 絵馬が落ちるのを目の前で見たのもあり、

 落ちないようにしっかりと確認するように絵馬を彼は結んだ。


 「じゃ。案内ありがとう。そろそろ帰ろうか」


 そういうと今度は優しい追い風が少し彼に向かって吹いた気がした。





【次話】 9月・ツキの面影


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ