7月・七夕の願い
居候生活から2か月が過ぎた頃、
お昼が過ぎて起きると、
山形のおじさんの孫娘が来ていた。
「ねぇ。おじちゃんは誰か会いたい人はいるの?」
山形のおじさんの孫娘にそう聞かれると、
しばらく会話のやりとりが続いた。
「いや、特にはいないと思うけど……、
もしかしたら忘れているだけもしれないかな」
「会いたい人を忘れているってことあるの?」
「おじちゃんは、ちょっと、うっかりさんで、
思い出を大事にしようと思って秘密の所に持っていったら、
鍵をしてしまったんだけど、
その大事な鍵を失くしてしまったみたいで、
取り出せなくなったんだ」
「大事だった鍵がなくて困ってるの?」
「困っているかは分からないけど、大事にしていた思うから、
すごく気になるし、早く鍵が見つかればいいなぁって思っているよ」
「そうなんだ。良く分からないけど。はい。これあげる」
「これは?」
「今日は七夕だから、願いが叶うといいね」
「あぁ。七夕の短冊か。」
「もし、願いが叶わなそうなら、もうすぐ夏祭りもあるから、
その時にお寺の神様にでもお願いするといいよ」
「お寺に?」
「前に一緒に遊んでくれたお姉ちゃんが言っていたけど、
そのお寺はなくなったものとも
縁をつないでくれる神様がいるらしいから」
「なくなったものと?」
「おじさんのなくした鍵も見つけてくれるかも」
そんな山形のおじさんの孫娘とやり取りをした後、
貰った短冊に彼は、
『過去の思い出とまた出会えますように』
そう書いて飾った。
その日の夜は星がきれいだった。
都会ではあまり見えない星もこっちではこんなにきれいに見えた。
しばらく夜空を窓越しに見ていた彼は、
「七夕か……。
織姫と彦星はせっかく結ばれたのに、
仕事より2人の時間を優先したことで、
離ればなれにさせられたんだよなぁ……」
夜空を見ながらウトウトとしながら、
彼がそうつぶやくと、
『だから、ちゃんと仕事はしっかりしないとね』
どこからか女性の声がしたような気がした。
少しウトウトしていたので夢だったのかもしれないが、
彼は少し色んな意味で何かキュンとした……。
【次話】 8月・夏祭りと絵馬