表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カタチなきセカイへ  作者: ツカサマコト
前章
13/36

エイプリルフールの真実


 そしてまた春を向かえた。

 カノジョも社会人として2年目が始まろうとしていたある日、

 ひさしぶりにカノジョが泊まりに来ていた翌日の朝の時だ。


 ひょんなことからカノジョがカレに少し言い争うような事になった。


 「最近、距離が私達にあるよね」


 「いや、そんなことはないよ……」


 「よく、義父おじさんに結婚の話をされると避けていたよね」


 「いや……それは別に……。

  避けているという訳ではなくて……」


 「本当に私のこと好き?」


 「もちろん。好きだよ」


 「じゃあ、これ」


 「婚姻届け?」


 カノジョが出したのは婚姻届けだった。


 「本当に結婚してとは、まだ言わないけど、

  本当に好きだったら名前くらい書けるよね」


 カノジョはカレに問うように言う。


 「えっ?」


 思ってもみないものが出てきて、

 カレは戸惑っているとカノジョは、


 「書けないの?ただ書くだけでいいんだよ」


 そうカノジョに迫られると普段とは違うカノジョの態度にカレは違和感も感じつつ、

 戸惑う視線の中に入ったカレンダーを見て、カレは何かに気付いて言う。


 「あっ!でも、今日は4月1日。エイプリルフールの日だよ。

  嘘っぽくなるから明日にしよ。もしかしてこれドッキリじゃないよね」


 カレはそういって一度冷静になる時間を作ろうとしたが、

 カノジョはそのことを知っていたようにカレに言う。


 「知ってるよ。でもね。

  エイプリルフールには本当は嘘をついてはいけない、

  真実だけをいう逆エイプリリルフールっていうのがあるんだよ」


 そんな話をカレにした。


 「えっ。何それ?」


 カレはそんな話は初耳で聞き返すとカノジョは具体的に説明をしだした。

 そのカノジョの説明によると、


 エイプリルフールができる時のきっかけの話しには、

 4月1日に今とは違い年の始まりとしていて、お祭りをしていたけれど、


 新しい王様が今の1月1日を新年の始まりとすることを採用した時に、

 4月1日を嘘の新年と言いながらいつものように祭りをして、

 バカ騒ぎをする多くの市民がいたそうだ。


 それをよく思わなかった王様が、

 バカ騒ぎをした市民を強制的に捕まえては処刑したそうで、


 その中にはまだ13歳の少女もいたことからショックを受けた市民が、

 王様に抗議して4月1日を嘘の新年としてバカ騒ぎすることを認めてもらったのだとか、


 その後、13年に1度は処刑された13歳の少女が犠牲になっていたことを忘れないように

 嘘をつかない特別な年にする風習があったけれど、

 13年に1度というのもあって世界的に広まっていった時には忘れられていったそうだが、

 最近はその話が注目されているのだという。


 そう説明するとカレにカノジョは、


 「知らないの?」


 とずいぶん具体的な話を真剣に話をするカノジョに


 「ごめん。知らなかった」


 と答えたカレにさらに教えるように言う。


 「なんで、その話が注目されいるのか、知ってる?

  今年がその真実だけを言う13年目になる年なんだよ」


 カノジョの言葉に何も言えずにカレが沈黙していると、


 「実は私ね。その特別な話を聞いて、最近少し距離間を感じていたから、

  そろそろお互いの気持ちをこれからはっきり確かめる機会として良いかなぁ

  っと思ったの」


 カノジョの言葉に相槌のようにカレがつぶやく


 「それで、今にいたると……」


 その小さなつぶやきもカノジョに聞こえるほど部屋は静かだった。


 「うん……もうお互いそれぞれの道も見え始めていると思うし、

  お互いの為にも別々に新しい道を進むのも仕方がないのかなとも思っているから、

  一緒にいるにも何か変えないといけないと思って、

  今日は、はっきり本当の気持ちが知りたいの……」


 カノジョが真剣に話しているように感じたカレは、考えさせられ沈黙する。

 しばらく沈黙が続いた後、少し寂しげな声でカノジョがカレに聞く、


 「それでどうする?」


 その言葉を聞くと、カレはしばらく沈黙をした後、


 「う~ん。わかった。書くだけだよね」


 そう自分に言い聞かせるように決断するとカレは婚姻届けに名前を書き始め、

 書き終えると……


 「ありがとう。じゃあ、私、ちょっと出かけてくるね」


 カノジョは書き終えた婚姻届けを大事そうに持って出かけて行った。

 

 「えっ……あっ……うん……」


 そのままカノジョを見送ってから、

 しばらく待っているとお昼が過ぎた頃にカノジョが戻ってきた。


 カレは戻ってきたカノジョに聞く、


 「どこいってたの?」


 と言葉をかけるとカレにカノジョは、


 「見てわからないの。買い物。」


 カノジョはお昼ご飯ようの買い物に行っていたらしい。

 そしてカノジョは出かける前よりも機嫌がよい感じだった。


 「はいっ。これ」


 カノジョがカレの前に食べ物ではないものを出した。


 「不動産物件の資料?」


 カノジョが出したのを見てカレはそうつぶやくと、


 「これからも一緒にいてくれる気持ちがあるみたいだから、

  お互いに仕事もしているんだから、

  どこかもっと一緒にいられるように一緒に住める場所を探さない?」


 カノジョは同棲の提案をカレに持ち掛けたが、

 カレはその前に気になっていることを聞く、


 「もしかしてさっきの婚姻届け出したの?」


 カノジョはその言葉に対して、予想していたかのようにカレに言う。


 「出してないよ。

  嘘をついてはいけない日というのは、

  エイプリルフールの嘘だもん。」


 カノジョはあんなに具体的に言っていた話が嘘だという。

 その言葉が嘘ではないのか疑うくらい真実味を感じていただけに

 カレは言葉を失っていると


 「ネットでは、

  そんな話も本当にあるみたいな噂があったみたいだったけど、

  嘘じゃないかって話で今は決着したみたい。


  それに本当だとしても私なら、

  嘘をつかずに真実だけを話すのではなく、

  嘘をついても生きられることを証明することの方が、


  その13歳の女の子の供養になると思うけどなぁ……

  嘘も人間の特権。

  使い方や感じ方しだいで囁きは天使にも悪魔にもなるけど……」


 どうやら具体的な話にはネットで本当かどうか論争が出るくらい作られた話があったからのようで、

 カノジョが作った作り話という訳でもなかったからと納得するとことにしたカレは、


 「じゃあ。さっき書いたのは……返してよ?」


 そうカノジョにからかわれたことに対して複雑な気持ちはまだあるけど、

 少し険悪な感じだったのも嘘だったとわかるとほっとしてか、

 少し子供っぽくカノジョにじゃれるような感じでお願いすると、


 「返すも何もあれは私のだよ……。

  それに気持ちは嘘だったってこと?」


 そういわれると確かにカノジョが持ってきたものだから返せというのは違う気もする。

 それに気持ちも好きでもっと一緒にいたい気持ちも確かだったので、


 「嘘ではなかったけど……」


 少し照れた感じでカレが言うとカノジョは笑顔で、


 「大事に大切に保管しておくから……。

  いつかちゃんとした気持ちで伝えてほしいし……。

  だから、だしたつもりで今はもっとお互いに一緒にいられる時間を作ってみよう」


 その言葉をきっかけに一緒に住める場所を二人は探すことにした。



【次話】 新たな活動源


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ