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カタチなきセカイへ  作者: ツカサマコト
前章
12/36

隙間風/凪


 それから彼女と彼は付き合うことになった。

 そして年が明け、春を向かえ季節が過ぎていく中で、


 カレは社会人としての1年目、

 カノジョも3年制の専門学校の3年目になり、


 カレは新しい仕事場、カノジョは卒業後の就職活動などでお互い忙しく、

 お互いに自分の事で精いっぱいという感じで、

 すれ違いが多くなってきていた。


 そして付き合って1年が過ぎた正月のことだ。


 カレはカノジョの事をすれ違いが多くても好きなままだった。

 そこでカノジョは祖母をなくしていたのもあり、

 カレは自分の義父おじさんに合わせることにした。


 義父おじさんは、怒ったり感情をあまり出すところを見たことがない人で、

 漢字一文字で表すなら、まさに風や波がない海面が静まっている様子の

 『凪』という言葉があうような人だ。


 ただ、義父おじさんは役所で婚姻届けなどを受理する仕事をしているだけに、

 カノジョを紹介すると結婚を考えているのかというような話をされた。


 お互いに家族を亡くしていることを説明して、

 親戚もいない事やまだ仕事も安定していないことなど色々話して、

 義父おじさんの話を流していた。


 それからは義父おじさんも含めて家族ぐるみの付き合いもするようになり、

 少しはカノジョの気持ちの新しいやり場も作れたのかもしれないが、


 それからもカレは社会人2年目になり、

 少し仕事にもなれて少し心のゆとりも出始めても、


 今度はカノジョが社会人1年目として忙しく、

 あまり会う時間が取れないでいた。


 お互いに感情を言い合うような事もあまりなく、

 嫌いになるような喧嘩をする事がある訳でもない。


 表面上は『凪』のような穏やかな状態が続いているようにも感じるが、

 まだ人生経験の少ない未熟な者同士な訳で、

 本心という感情の海を支える綺麗な器がどうなっているのかまでは分からない……。


 共有できる時間のすれ違いなどの摩擦が徐々に隙間を作り、

 器しだいでは新たな良いエネルギーとして、

 燃えあがるような前兆にとらえる人もいるかもしれないが、


 どこからか見えない嫌な風が吹きこんでくるような……。

 そんな気配としてカレはどこか無意識に感じていた。



【次話】 エイプリルフールの真実


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