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カタチなきセカイへ  作者: ツカサマコト
前章
11/36

聖夜の想い


 それから、秋が過ぎ冬になった。

 冬といえばクリスマス。そんなクリスマスイブの前日。


 インカレサークルの帰り、彼女と一緒に帰っていた。


 サークルでクリスマスの夜はクリスマス会をするので、

 そんな話題を話していた。


 「そういえば……

  クリスマスの日はサークルのクリスマス会がありますけど、

  先輩は、明日は誰かと過ごすんですか?」


 彼女は彼にそう何気なく聞いた時だ。


 「一緒にいたい……」


 彼は思わず、心の中で思っていた言葉が、

 唐突に口から出てしまう。


 「えっ?それってどういうことですか……」


 彼女も彼につぶやくように聞き返した。

 彼は彼女も20歳になり、先輩と後輩という関係から一歩変えたいと、

 ずっと思っていたから気持ちを誤魔化さずに彼女に言う。


 「ずっと気になっていたから……。

  もし明日、誰かと過ごすなら一緒にいたい」


 思ってもいなかった発言だったのか彼女は彼の気持ちを確認するように聞く、


 「それは、私の事が好きってことですか?」


 そうはっきりと気持ちを確認するように聞いてきた彼女の言葉に

 少し理性を取り戻したのか、


 「あっ……うん……」


 少し彼女の答えを聞く怖さも出てきて、

 彼は彼女から顔をそむけながら小さめに返事をすると、


 「ごめんなさい。少し考えさせてください」


 そういうとその場から彼女は立ち去ってしまった。


 彼は思わず、人生初めての告白というのをしてしまった。

 あの感じだと断られたのだろうか。


 あまりにも先輩と後輩という最後の壁をずっと保つために秘めた思いがもどかしく、

 彼女の後輩として聞いてきた発言より、もっと一緒にいたいという気持ちが……

 思わず壁の向こう側を考えずに壊してしまうような不器用な行動に出てしまった。


 家に着くと、彼はなんであんなことを言ってしまったのか後悔していた。


 それから時間が過ぎ、その夜、彼女から連絡が来た。


 その内容は夏に花火をした噴水のある公園に呼びだしだった。

 考えさせてくださいと言っていたので、どうやらその返事という事だろうか。


 彼の発言が原因で壊れてしまった壁、

 その場から立ち去るほどだった返事となると気まずいが、

 どんな回答でも聞かないのはどうかと思い彼は公園に向かった。


 公園はクリスマス前という事で、

 クリスマスのイルミネーションで飾られていた。


 噴水の前のベンチに行くと彼女が座っていた。

 彼に彼女は気付いたがすぐに下を向いてしまった。


 そんな彼女を見て、彼女の隣に彼はそっと座った。

 彼女は何も言わずにしばらく沈黙が続く。


 数時間前までは見えない壁越しに仲良くしてきた関係性だったのに

 壁を壊した加害者に何らかの杭を打ち付けるのは、被害者としても気まずいだろう。



 長い沈黙にそんな事を彼が頭の中で考え出し始めた時、

 彼女が口を開いた。


 「まだ、少し心の整理ができていないですけど……。

  明日、一緒にいてください」


 そう彼を見ながら答える彼女に彼は、


 「えっ?ダメじゃないの?」


 と確認を取るように彼が彼女に聞くと

 彼女はその時の彼の表情を見て落ち着きを取り戻したのか。


 「じゃあ。ダメです。」


 そう彼に返した。思っていなかった返しに、


 「えっ、あっ、ごめん」


 彼は慌てるように戸惑いを見せると彼女が言う。


 「じゃあ。私の目を見て、

  私の事をどう思っているか言ってください」


 彼女が彼の目を見ていうと、

 彼は視線を一度外すと一呼吸してもう一度彼女の目を見て、


 「好きです」


 そう彼は答えるとすぐに彼女から視線を外してしまった。


 「まだ、お互いにこれからですね。

  でも……もう2人でいる時は、先輩と後輩という訳ではないんですよ。

  明日から大丈夫ですか?」


 彼女がそう言いながら笑顔を見せると公園のイルミネーションと

 そこにいる彼女は今までで一番綺麗なものに感じた。


 そして、二人の関係が溶け固まろうとするのを見ていたかのように

 空からは雪が降り始めていた。




【次話】 隙間風/凪

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