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番外編:07 孤独なる神の日常

いつもの如く。

そんな言葉が出てくるくらいには、何度目か分からぬような、ゼルドとの諍い。


しかしいつもと違うのは、その攻撃手法。

いわゆる格闘術。いわゆる徒手空拳。


腰を落とし、重心を滑らせるように移動する。

体重を、慣性を、拳に込めて。

腰から肩へ、肩から腕へ、その拳を加速させる。

右ストレート。或いは正拳突き。


それを片手で払い除け、取り敢えず蹴りを放つナナシ。


蹴りをバックステップで飛び退いて避けると、今度は肩を突き出し、腕を軽く組み、前傾姿勢で走り出す。日大。


バッファローの様に。

猪突猛進。全体重を一意に乗せて、ナナシ目掛け突き進む。


タックル。

蹴りも、突きも、所詮は体の一部のみを使った攻撃である。

対して、全身を余すこと無く攻撃に使う、ヒト型の生物が行える中で恐らくは最重量の攻撃。それがタックルである。日大。


が、それをひょいと躱すナナシ。そりゃ、狙いが分かってるんだから躱せない道理がない。

攻撃を外したことを理解し、減速するゼルドの脇腹に蹴りを叩き込む。

つま先で、突き刺すように抉るように、その肺の空気を全て追い出すように、一発。

叩き込まれたたった一発で、満足に呼吸すら出来ず、地面に蹲って嘔吐く。カハッ、という音とともに、無いに等しいような空気がなお絞り出されて吐き出される。

唾液と、ほんの少しの胃酸と、良く分かんないなんか液が混ざり合って口からダラリと垂れ落ちていく。


「あのさァ」


グイとゼルドの顔を掴み寄せて、ナナシは言った。


「舐めてんの?ボクのこと。」


この世界で。神と呼ばれる存在ならば。

当たり前に。当然に。使える力。


"創造"、素手よか余ッ程強力な武器を、気力の限り無限に生み出せる"如何様(チート)"じみた能力。


それを一切使わずに。

いわゆる格闘術。いわゆる徒手空拳。

裸一貫、ステゴロで戦いを挑む。

格上の相手に?そんな馬鹿なことがあるか。


"舐められて" いる。それがナナシの出した結論だ。

"下に見られて"いる。それがナナシの出した結論だ。


さんざ挑みかかって、さんざ敗北()けて、尚も理解しないのか。

ここで勝っても、"また"かかってくるのか。


苛立ち。

下に見られたこと。これで勝てると思われたこと。

何よりも諦めないその態度が、懲りないその態度が、何故だか迚もムカついた。


同族嫌悪。

彼女が過ごした孤独。その中で、才能を持っていたとて、研鑽と、努力と、何よりも諦めない心、それが無ければ生きることなど到底叶わなかったろう。

諦めの悪さ。或いは不屈の精神。

似ているのだ。二人は決して認めないだろうが。

それを理解しているのは、二人をよく知るトール・エルドただ一人"だった"。


「使えよ。能力でもなんでも。

徒手空拳(それ)で敵うと思ってんのかッ!

キミが!ボクにッ!

勝てるとでも思ってんのかッッツ!?」


ナナシがそうがなり立て、投げ捨てるように手を離すと、彼の頭はドサリと床に落ちていく。

一方で、ナナシの手にはゼルドの口から垂れ落ちた、唾液と胃酸と血液、そしてなんか良く分かんない液体が混じり合って付着していた。


「うえっきたなっ」


ひどい感想である。というか誰のせいだと思っているのか。

だがしかし、重要なのは彼女の発言内容ではない。

手に着いた液を、創造したハンカチで拭い、破壊する。"破壊"という能力のコントロールに不得手を抱える彼女なればこその、二度手間。

その間、手のみに注意を向ける、明確な隙。


1ccの空気さえも残っていないと感じる肺へ、空気を送り込む。引き換えに、血が咽るように吐き出される。剣山を肺に突っ込んだような痛みが走る。横隔膜がヒクヒクと引き攣って、まともに呼吸ができない。それでも無理矢理に立ち上がる。


何故立ち上がるのか。何故。

自分は"一位(アルカムィンティウス)"でなくてはいけない。そのために生まれ、そのために育った。

この狭い世界における、自分の総て。

自分が自分として生きるために。

そんな考えかも知れない。

酸素の周っていない頭で、何を考えていたかは分からない。記憶も無い。


それでも。それでも立ち上がって。


たった一発の目潰し。

ふらふらと倒れ込むように、その全体重を押し付けて。

指先に、ぐにっという触感が伝わる。

そのまま突き進むと、やがて突き破るような感覚が指先から伝わって来る。

生暖かい、液体のような感触。吹き出した体液が手首の先まで飛び散って来る。


反射だったのかも知れない。何故、潰れた目で正確な場所が分かったのか、理解はできない。

ともかく。ナナシはゼルドの頭をガッシリと両手でホールドすると、全力の膝蹴りが顎へ放たれた。

顎が割れる音が、骨を伝って内耳へ直接伝わってくる。

骨の破片が皮膚を突き破って、血がダラダラと溢れていく。

ナナシの膝も無事では済まない。割れた皿が、膝を突き破って表面に出ている。それでも足を止めないから、まるで短刀(ナイフ)の様にいっそ武器となって皮膚を切り裂いて行く。


共倒れ。

尤も、片膝と目だけのナナシよりも、顔の下半分と肺の一部、それから肋骨に重大な損傷を負ったゼルドの方がダメージは大きかったが。


ステゴロにはステゴロで。相手の行動に応えようとしてしまう、そんなナナシの悪癖は、目と膝を犠牲にゼルドの過去一で引き分けに近い闘いを作り出した。

なんで

番外編 孤独なる神の日常 ep:07

みたいな感じじゃなくて

番外編:07 孤独なる神の日常

っていう番外編これオンリーみたいなタイトルなんだろうって思ってる

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