クズ殺し3周年記念 IF 共闘 リライト6
頭ごっつんこのあたりから
……やることは二つ。
一つは、光線から国軍を守ること。
一つは、ヘイトを稼いでタゲを奪うこと。
前者を達するためにまず。
ごっつんこして痛む頭を抑え立ち上がり、蹲るアレイウスへと話しかける。
「ちょっと良いかい?」
「ええ、なんです?」
「ボク向こう行くから、こっち頼んで大丈夫?」
「大丈夫です。」
……言語によるコミュニケーション。
頭ごっつんこから学んだ故の行動である。
下で何が起ころうと、仮令時が戻ろうとも、我関せずと目からビームの構えをする怪物。
急ぎ国軍のもとへ向かうナナシ。
空気を揺らし、爆ぜさせ、目を焼き尽くすような光と共に放たれた光線は、
国軍の数メートル手前で阻まれた。
巨大な盾。それも美しく光を跳ね返す、よく磨かれた銀鏡の盾。
わーい鏡だー
ビームなんて跳ね返すぞー
……とはそううまく行かない。
この空間に空気がある以上、ビームと空気は干渉し"損失"が生ずる。
この"損失"は、当然目標に直接届くことは無く、熱としてばら撒かれる。
それは空気だけでなく、ありとあらゆるものに生ずる。
熱力学第二法則、
「熱効率100%の熱機関は存在しない。」
中学高校で習うこのたった一文によって、この理不尽な法則は示される。
鏡だってそうだ。
受け取った光の100%を損失なく跳ね返すことなど出来ない。
本流では無い、この割合で言えばそう大きくはない"損失"が、それでも莫大なエネルギーを持っている。
それは、空気に熱として放り出される三割にも満たないエネルギーが、熱放射として目を潰さんばかりの光を放出するほどに。
熱放射。例えば千度をゆうに超える、製鉄所の融けた鉄が真っ赤に光る様に、高温の物体が光を放つ現象のことである。たぶん大学で量子力学とか取ると習う……かも知れない。ぶっちゃけ作者はよう分からんかった。
いかにビームの"本流"の93%を跳ね返せたとて。
7%でも莫大な熱量がそこにある。
空気だってとてつもない熱を抱えている。
要するに。必然。
融けるのだ。鏡など。盾など。容易に。
ではどうするか。
単純だ。
さっきまでと同じ。
"創り足す"。
十枚だって二十枚だって。百枚だって千枚だって。
人間には出来ない。
彼女が"神"、それも"上級神"たる所以の一つ。
創造。
時間遡行程ではないが十二分、というか百分くらいには理不尽な能力。
じゅわじゅわと、銀の盾が融けて蒸発していく。
岩壁よりかまだマシな枚数で済んだものの、市場価格に直したら幾らになるのか考えたくもないような量の銀を森にばら撒く、という環境破壊も甚だしい行為の結果、国軍は無事にビームから生還した。
たぶんこの膨大な環境破壊の後片付けは彼らの仕事だ。強く生きてくれ。
まぁ命よりかは安かろう。
「そっちのターンが終わりなら……」
舌舐めずりして、再度巨大な剣を創り出すナナシ。
持ち手だけで家が建てられそうな。
柄だけで修学旅行組の大型バス数台に、大型トレーラーのおまけが付いても余裕で停められそうな、なんなら空きがありそうな。
刃渡り数百メートル。厚さでも一メートル。
日本にあれば、かかる固定資産税だけでゆうに破産できそうな。
そんなあまりにも、バカでかい剣。
でかいという表現が通じない程のバカでかさ。
「こっちのターンだよねッ!」
体躯に見合ってる見合ってないとかそういう次元じゃなく、相対的に小さすぎて"持っている"のが見えないようなサイズの剣を。
片手で以て。
ぶん回す。
故に発生する風は、二十メートルの木々を薙ぎ倒さんばかりにぐわんっと揺らし。
先程に引き続き環境破壊も甚だしい行為である。
そのあほみたいなサイズの剣を持って走り出し。
直径にして二十メートルという"ちっぽけ"な足へと斬り付ける。
……斬り付ける?
いや、叩き付けるだろう、これは。
厚み一メートルだぞ……?
どう考えたって鈍器じゃあないか。
逆に何がどうなったらこれを剣と言えるのか。
そんな疑う余地のない紛うこと無き鈍器を
"叩き付け"られた怪物の足は。
……なんと説明すれば良いだろうか。
読者諸兄姉は、水風船を叩き割る瞬間をスーパースローで撮影した動画を御覧になったことがあるだろうか。
見たことがある方はあれを思い浮かべて頂きたい。
剣がでかすぎて麻痺しているが、足も当然途轍も無くでかいので、
その変化のスピードは相対的に水風船なんかよりも格段に遅く、
スロー映像のような風体を帯びていた。
尤も件の動画と比べれば当然早かったが。
剣を叩き付けられた足は、まず最初、剣と反対方向へと大きく歪み、たわみ、変形した。
弾かれる様に、或いはナナシの引き戻し……納刀か、残身か、兎も角剣は戻されるが、
慣性の法則に従って皮膚は、最早そこには無い剣の幻影から逃げるように変形を続け。
やがて限界に達した皮膚が一点から破け始めて。
亀裂は血を吹き出しながらどんどんと広がり……
皮膚をぐるりと一周すると、血をばっしゃああああぁぁぁぁぁと吹き出しながら破裂する。
ぐっちゃぐちゃに血に塗れた剣を担いで、サイズ的に剣以上に血に塗れたナナシが、怪物に背を向けて戻っていく。
途中で、ばかでかい剣を"破壊"したのを見て、国軍は明らかにほっとしていたが、
剣がでかすぎて忘れてるかもだけれど、
あの飛び散った血を掃除するのも君達だよ。
強く生きろ。
補足・蛇足
三割にも満たない
なんとなく適当にこんくらいかなーって。
水風船なんかよりも格段に遅く
変化のスピードは同じですが、でかい分変化が全体へ回るまでの時間が長いです




