クズ殺し3周年記念 IF 共闘 リライト5
反動で長め(3435字)
ここシュートルズ森林地帯は、エレイア王国北部に位置する明確なエレイア王国領土である。
本来ならば、領土内での問題に対処するのは国家の持つ武力か、貴族……例えば辺境伯なんかに外注された武力か、自警団なんかの暴力か、入墨入った反社会的勢力に金を払った暴力か。
ここエレイア王国であれば、それは国軍騎士隊の役目である。治安を維持し、政権を維持し、領土を維持する。
国家の権威を知らしめる、国王の剣にして国民の盾。
血税が口惜しみけちけち一寸ずつ注ぎ込まれ、必要十分の装備が整えられた、現代の価値観と異なれこそすれ立派な軍隊。
特筆すべき点と言えば、その練度である。
一糸乱れぬ攻撃動作。
一音のずれも聞き取れぬ行進。
世界最高、と言って差し支えない練度を持った彼らはそれだけで脅威であるが、更に。
"協定"により、W.I.N.グループからの技術支援。
世界水準に対して異常な技術力を保有する彼らからの武器供与。
"埒外の技術"とも言える、火薬銃という革命的な発明品。
圧倒的軍事力である。
というよりは、"あった"が正しいかも知れない。
龍の力とかいうクソチート持ちのにのまえが、そこらの破落戸寄せ集めて、単なる火薬銃が馬鹿らしくなるようないわば埒外の"埒外の技術"、魔力と火薬のハイブリッド兵器とかいう意味分からんもんを与えやがったせいで。
とは言え、そんな彼らでもあの"怪物"と対峙し退治するのは迚もではないが不可能である。
そりゃそうだ。
猟銃一丁では熊にだって叶わない。
普段から猟を行っているいわば獣の専門家が、猟友会という軍団で挑んでなんとか倒せるのが、"数メートル"の熊だ。
じゃあその数十倍でけぇ怪物は?
火薬銃がなんだ、練度がなんだ、それだけで三桁メートルの差が覆る訳が無い。
だが。
そうですかわかりましたー……とすんなり行くわけにもいかない。
くだらない自尊心がまだ燃えているから。
仮令自分たちでは到底倒せずとも。
エレイア王国の為に。
愛する家族のために。
ほんの少しの支えに。
ほんの少しの力でも。
幸いにも、現在怪物の標的は我々ではなくトール・ゼルドに向いている。
そのトール・ゼルドは仮称ナナシと一一によって確と守られている……様に見える。
実際にはナナシとアレイウスがノーコンなアイコンタクトを取って、守られているとは言い難い状況であったのだが。
故に、行動するなら今しかない。
怪物の注意がゼルドへ向いている今しかない。
数百メートルの怪物を、単独で撃破は不可能としても。
ヘイト買ってタゲ取りしてくれてる盾役が居るなら。
その十分の一ほどのサイズの足一本だけなら。
我々だって戦える。
この下らない自尊心を燃料に。
国への、家族への、この愛を潤滑油に。
指揮の元。
静かに、然し確実に、馬が走り出した。
本来ならば発生する膨大な騒音は、馬の脚に取り付けられた特殊な機械……W.I.N.グループ謹製の逆位相スピーカーによって打ち消され、一切の注目を受けること無く、怪物後ろ左の足へと移動する。
約二十名、国軍精鋭部隊が、一斉に銃を構える。
筒状の構造のそれは、猟銃によく似た構造をしている。
古の火縄銃から、幾ばくかの変化を受けたとは言え、その原理も原型も殆ど変わらぬ最適解。
その中の一人、国王が右手を大きく上げ、
勢いよく振り下ろした。
一斉の発砲。
たかが火薬銃と侮るなかれ。
二十発の弾丸が、同時に、一点に集中するのである。
そもそもが拳銃よか数段威力の高い猟銃、ライフル銃である。
鋼鉄の板を容易く貫く銃弾、その持つエネルギーは一発頭ざっと数千J。
1m上空から力士二人組にプレスかけられるくらいのエネルギーが、僅か1cm四方に集中する。
……まぁ尤も実際には、それでは殺傷力の面で都合が悪いので、弾頭が"潰れる"事によって体内に弾丸が留まるようになっているそうだ。
そうすると、穴の径として人間ならば広い所で大体5cmくらいの穴になる。
なお、グロ耐性のない作者は調べて些か気分が悪くなったのであんまおすすめしない。
それが、二十発。
上空1mから7t超の中型トラックが落下してくるのと同程度のエネルギー。
或いは、軽自動車が7台ほど落下してくるくらいのエネルギー。
これが指先ほどの面積に集中する。
こんなもん真面に受けて傷一つ負わない、なんてあるわけがない。
火薬銃を手に、練度は一斉の同時発砲という鋭く磨かれたその牙を見せつける。
それは例えば釘が木を穿つように。表面に確実に穴をぶち抜いたが、然し。
20mにも及ぶような膨大な直径に対して削り取ったのはわずか深さ数m、直径2-3cmほどの小さな穴。
不足。圧倒的な威力不足。
この現状に国軍はどう対処するか。
答えは簡単。"手数で補う"。
背中に、腰に、全身に取り付けられた計十丁にも及ぶ火薬銃。
たった今手に持っている、弾丸の装填が行われていない火薬銃を放棄し、腰元から一丁の銃を取り出して構える。
先程から数cmずらした点に再度二十発の弾丸。
ほんの一ミリたりとも、ほんのデシ秒たりとも違えず、全弾完璧に着弾。
穴の深さは変わらずとも、広さが単純に倍である。
三度、四度の発砲と、更に穴の大きさを広げていく。
穴の直径が実に10cmほどになったとき、一人の騎士がその穴へ小さな、とは言え穴のサイズに対しては些か大きな装置を差し込んだ。
所謂指向性爆弾。
方法は様々あれども、やることは単純。
本来、爆弾というのは全方位に破壊を振り撒くものだが、
特定の方向だけにその威力を集中させる様設計された少し特殊な爆弾。
多くの場合、壁や柱など"対象物"のみを破壊するために、一方向だけに爆発の威力を向けるものが多い。
然し、製造元であるW.I.N.グループと懇意にし、特注品を融通できるお得意様である彼らは、更に特殊なものを持っている。
却説、読者諸兄姉は小学校の頃の国語で「生き物は円柱形」という作品をお読みになっただろうか。
御存知にない読者諸兄姉に内容を簡潔に伝えるならば、書いてある事は概ねタイトルと同じである。
この円柱形は仮令異世界の怪物であっても話が通じる。
例えば目前の怪物の足は、多少の歪さこそあれどもまさしく円柱形に他ならない。
要するに、怪物と退治する時ゃでかい円柱形を吹き飛ばせれば良い訳だが。
真っ向から削ってちゃ無意味無策無駄不毛無知蒙昧、時間資源の物的資源の人的資源の浪費である。
要するに、切ってしまえば良いのだ。
三次元的に、"削る"行為には相当な手間を被れども、
二次元的な、"切る"行為であれば幾分マシである。
結局何が言いたいのかと言えば、円盤状に爆発を広げる、特殊な爆弾を国軍は持っていた、ということだ。
足に埋め込んだ爆弾が、待機時間を置いてドカン、と音を立てる。
目前の巨大な"足"が大きく揺れ、断面から察するにその半分ほどが薄く削り取られている。
削りきれぬのならばもう一発。
再度同じものを埋め込み、数秒。
ドカン、という音と共に、
朽ちた木のように倒れ込む足が、
その質量故にドスン、と地を揺らしながら成功を伝えた。
故に。
大量の目が、眼が、瞳が。
瞳孔が、光彩が、眼球が。
何よりその視線が。
向いた先には、彼ら国軍が立っていた。
光線が空気に熱を与え、レンズのように歪みがかかる。
膨大な熱が、特別な能力も常識外れな装備も持たない彼らを襲う。
当然の如く。
比喩表現ではなく事実として。
血沸き肉踊り、灰も残さず蒸発する。
その熱に体液が沸騰し、内側からぱしゃん、と水蒸気爆発を起こす。飛び散った肉片が、かつぶしが踊るのと同様に高温の中で踊り。やがてはそれも膨大な熱量を前に蒸発する他に無く。まぁその後プラズマ化するかも分からんが。
死。一瞬にして。苦しむ間もない一瞬のうちに与えられたそれは、飛び散った真っ赤な血が沸々と沸騰する、まさしく地獄絵図を描き出していた。
どうしようもなく理不尽で、傲慢で、絶対的な現象。
だから。
だからきっと、彼女はそれが嫌いだ。
作者が思うに、この世界で最も狡い能力。
物語の頁を捲り戻す。起こったことを無かったことにする。
文字通りに"次元が違う"能力。
ズルだとか、如何様だとかの他に形容が思い付かないような、"絶対的な"死をも覆す能力。
"時間遡行"。
キィィィイイイイン、という音と共に、世界は逆行していく。
落ちていく太陽は天頂へ登り、舞う木の葉は再び木へと還る。
蒸発した血は地面へと落ち、飛び散った液体は再び集まる。
肉片は粘土を捏ねるように纏まっていき、"死"は失われる。
……時を戻そう。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
>祝!書籍化決定<
(日付)
補足・蛇足
もんもん入ったやくざもん
クソうま駄洒落。
ノーコンなアイコンタクト
クソうま駄洒落。




