クズ殺し3周年記念 IF 共闘 リライト4
4日目ですって。縁起悪いわね。
ーーどうしたものか、とゼルドは思案する。
せっかく修復していた右腕は、攻撃によって肩口まで抉れている。
幸いに足は動く。
だが。あの攻撃を再度躱せるかと云えば答えはNOだ。
壁を創造して身を守る?否。間に合わない。
……この期に及んでもまだ。ゼルドの頭に、"人に頼る"というアイディアは出て来ない。
ずっと、周りの人間は、倒すべき障害物か、踏み台か。
敵対か中立かの二択であったから。
だから、頭からすっぽりと抜け落ちていた。
故に、大層驚いたことであろう。
自身の身体を支える存在。
すぐそばでは無く、距離を置いた地点に落ちる光線。
"誰か"が、運んだ?なぜ?
"助けた"という発想は無かった。
なんの目的で、という、それだけが頭の中にぐるぐると。
だから、自分を抱える人の
「大丈夫でありますか!?」
という呼びかけに、
「あ……ぁあ」
という、返事と呼ぶのが烏滸がましいような声を返していた。
理解の範疇を越えていた。
目の前の……騎士服を着た男に尋ねる。
「どうして?」
一方、騎士服を着た……国軍の男は、何を聞かれているのかわからず、不思議そうに聞き返す。
「何がですか?」
「どうして、助けた?」
「どうしてって……
もしかして困ってなかったですか……?」
少し申し訳無さそうな顔をして、国軍の男が返した。
「いや……」
「それなら助けなくちゃ。仲間じゃないですか。」
" 仲間 "。
" 仲間 "。
" 仲間 "。
居なかった。
" 仲間 "なんて。
そんな感じで。
ゼルドは理解の埒外の事実に困惑し、処理落ちしていたのだが。
怪物はそんな事、知ったこっちゃない。
ただ静かに、三度の目からビーム。
目という目から、百幾余の光束が、自身を攻撃してきた不届き者をぶちのめすべく、一直線にゼルドへ向かい……弾かれた。
空中に浮かぶシールド。
地面から突き出た岩壁。
アレイウスと、ナナシが、二人してゼルドを守っていた。
"助けられた"。
"守られた"。
動揺。
驚愕。
そんな感情が頭をぐるぐるぐるぐると回っていく。
そんな中で、ナナシの
「キミ、腕とっとと治せよ。」
という言葉で失った腕を思い出し、愚にもつかない思考を切り捨てて自己治癒に集中する。
それを見たナナシとアレイウスが顔を見合わせる。
目と目が合い、視線を交わす。
所謂アイコンタクト、所謂以心伝心。
お互いに相手に伝わったと信じ、己が行動に神経を注ぐ。
数秒間のそのやり取りの後、降り注ぐ第四波。
ゼルドは腕の修復に専念している。
アレイウスもナナシも攻撃行動に移っている。
誰も。
誰も"防御をしていない"のである。
光線は岩壁を悠々と融解させ、
何にも阻害されること無く。
迷いなく。一直線に。
トール・ゼルドを貫かんと迫っていく。
もしも。
コンマ数秒だけ、ナナシの行動が遅れていたら。
コンマ数秒だけ、アレイウスの行動が遅れていたら。
ゼルドは死んでいた。
何が起こったのか説明しよう。
原理はダブルチェックと同じだ。
"もう一人がきちんとやってるはずだからヨシ!"
先程のアイコンタクトで、お互いに、
"攻撃行くから防御ヨロ"
とやり合っていたわけだ。
結果、どちらも防御をしなかった。
目は口ほどに物を言う、なんて言うが"ほど"は"ほど"。
"ほどほど"にしか語っちゃくれない。
そもそも口でもコミュニケーションなんて齟齬が生まれることばっかりなのに、
目でコミュニケーションなんぞ10年オーダーで付き合ってでも居なきゃ無理に決まってるだろうに。
お互いに逆方向へ全力ダッシュしてるのだ。流石に失敗に気付かぬ二人では無い。
全力ダッシュからの全力で切り返しという、足首辺りの通夜をやらねばならぬような行動。
持ち得る限り最大最速……とは言わないものの全力の八割位のパワーとスピードで。
コンマ数秒とかからずに構築される岩壁。そこに数瞬遅れてアレイウスのバリアー。
光線の膨大な熱は目の前で再生し続ける岩壁に八割ほどが消費され、残り二割はバリアーに弾かれ、なんとかゼルドはギリギリ無事、五体満足である。
が然し。
全力で切り返し、もう一度切り返しなんて反復横跳びみたいな器用な真似、できるわけがない。
ゼルドに向かって方向転換した二人は、ゼルドの目の前まで進み……
今更フットブレーキは効かない。
頭ごっつんこ。
なぁんて言うと明るいが、ガッツリ良い音がしてたのできっと相当痛かろう。
両者ともに頭を抱え蹲り、「っぅぅぁー」みたいな声にならない声を漏らしている。
普通にめっちゃ痛い感じのやつである。
「なんというか……」
掠れた声でナナシが言った。
「相性が……」
アレイウスも掠れた声で言った。
「「悪いみたい」」
「だね」「ですね」
言葉が重なった。
同じタイミング。同じ考え。
然し惨憺たる結果。
相性が良いのやら悪いのやら判断が付き難い。
下で何があろうと関係なく。
五度目。
眼球がグルリと周り、発せられた膨大な熱に空間が揺らぐ。
一斉に、百を降らぬ目、目、目。
目という目が一斉に。
ギョロリと視線が変えられ、ある一点において全ての視線が交わる。
その一点に立つは、当に今庇われているトール・ゼルド…………ではなく。
国軍騎士隊。
馬を駆り、槍を持ち、W.I.N.グループよりの武器を持つ、そんな彼らが其処に立っていた。
……時を戻そう。
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