番外編:05 孤独なる神の日常
バトルが書きたくなって書きました。
ぶっちゃけ武器とか登場毎にめちゃくちゃ入れ替わっててキャラごとに決まってないし、なんならこの回ナナシさんめっちゃキャラ崩壊してる気もするけど、書いてて楽しかったのでオールオッケー。
効果は覿面だった。
ナナシはその能力を見せつけ、神々から一目置かれる存在と相成った。
喧嘩を売られる回数は減った。
が、奇異の目が好奇の目が畏怖の目が、
視線の雨がナナシを貫いた。
若干の不快感と、つい先日に至るまで知らなかった"他人の視線"と言う新鮮な感覚を感じつつ、ナナシは新しい日常を享受する。
とはいえ、喧嘩を売ってくる相手は"減った"のみで、相も変わらず吹っかけてくるような輩はまだ居る。
その最たる例がトール・ゼルドという、彼女からすれば取るに足らぬ若輩者である。
然しながら、どうにも彼はナナシの琴線に触れる事ばかり行って憚らない。
贔屓、だとか、序列、だとか、相応しくない、だとか、要するに"余所者がデカい顔してんのが気に食わない"、みたいなことを喚かれる。
エル兄は「悪いやつじゃないんだよ」なんて言うが、ボクにはとてもそうは思えない。
彼は自分を見ることが出来ていない。
自分がいかに恵まれているのかも、自分がどれだけ弱いのかも理解せず、何も考えること無く印象のみでナナシに敵意を向ける。
気に食わない。
……トール・エルドには、ナナシの主観では見えない部分も見えていた。
実のところ、ナナシもゼルドも一緒なのだ。
ナナシは、その才能と自由と言う、ゼルドに無いものを持っていた。
ゼルドは、その家族と友人と言う、ナナシに無いものを持っていた。
互いに持っていないものを持って、互いに羨み合って、互いに憎み合っていた。
思考回路が同じ二人だから、きっとこれは同族嫌悪と言う奴では無いだろうか。
却説。
今日も今日とて飽きずに懲りずに学ばずに、
喧嘩を売ってきたのは件のトール・ゼルドである。
時間遡行、という離れ業を見せられて尚挑んでくるのは、蛮勇と言うべきか勇気と言うべきか馬鹿と言うべきか。
兎も角、
堂々と名乗り上げてトール・ゼルドはやって来た。
「トール・ゼルドここに見参!!
仮称ナナシ、お覚悟!!」
ナナシは
はぁ、と溜め息を吐くと、手に武器を創造し始める。
どうせ放っておいても攻撃してくる。
ならば、全力で迎撃するまで、である。
ナナシがその手に作り出したのは、蒼く輝く大斧である。
それはさながら宝石のように、この世界に満ち溢れる謎の光を受けてキラキラとその色を瞬かせる。
彼女の体躯に合わぬ巨大で鈍重な斧を、ナナシは事も無げに「ブン」と振り回すと、トール・ゼルドにその切っ先を向ける。
対するトール・ゼルド、両手を左後ろへ回して背に隠し、右足を軽く曲げ前方に、腰を深く入れて……所謂"抜刀の構え"をするが、抜くのは刀では無い。
右手で深く握り込み、左手を補助的に添えた先にある構造物、真鍮のような、重みの無い金色に彩られたそれは、通常サイズの倍にもなろうかという…………金属バットである。
「金属バットで抜刀の構え?バットだけに?(ナナシ)」
ナナシの呟きに応はなく。
トール・ゼルドは静かに腰を更に下へと入れ込み、深く曲げた右足と、わずかに曲げられた左足の両足に、バネの様に、力を蓄えていく。
静かに、静かに、殆ど微動だにしない外見に反して、徐々に徐々に、その両足に腰に胴に肩に、そして腕に力が蓄えられていく。
バットと斧という、互いに取り回しの悪い武器を選んだが故に、先手を見合って硬直する両者。
動いたのは、ナナシであった。
斧を両手で構え、中段から一度振り下ろすと、その勢いに乗せてグルリと回転させ、天からその刃を肩口へ振り下ろす。
「腕なら再生できるだろッ!!(ナナシ)」
対するトール・ゼルド、抜刀の構えから右腕でバットを引き抜くと、そこに腰の回転を載せる。加速していくバットに、足で地面を蹴飛ばすと勢いは更に増していく。
放つ神速のバットは、ナナシの胴、脇腹を目掛け弧を描く。
互いに全力のクロスカウンターが炸裂する。
ナナシの斧は、その勢いのままゼルドへ向かう。
が、しかし。
先に当たったのは、トール・ゼルドの攻撃であった。
バットはナナシにヒットし、その勢いで吹っ飛ぶナナシ。
引っ張られた回転軌道上の斧は、ジャイロ効果をモロに受けて回転軸を傾け、肩口を外れた斧は地面へ深々と突き刺さる。
斧を握っていられなくなったナナシは手を離し、それから次の斧を作り出した。
「武器を手放したって、また作れば良い。
武器破壊の意味が無いってのは、なかなか理不尽だよねー。(ナナシ)」
トール・ゼルドは、握り込んだ右手を軽く緩めると、バットを持ち直し、ナナシへ走り寄って、
上からバットを顔面向けて振り下ろす。
ナナシはそれを斧の柄で受けると、右手を緩め、半身で受け流す。
そのまま、バットのエネルギーで斧の回転に勢いを付け、射程内まで近づいたゼルドの肩へと振り下ろす。
ところがぎっちょん。
バットを強く握り込んだゼルドは、受け流された勢いのまま前方へ倒れ込んだ。
故に、斧は肩へは当たらず。
トール・ゼルドの頭上を通り、彼を変な髪型にするのみであった。
一時の幸運。
しかし、僥倖は一時のみ。
倒れ込んだゼルドは、まさに格好の的である。
いかに斧の取り回しが悪いと言っても、ここに攻撃が間に合わぬ程では無い。
ナナシは振り下ろした斧の回転を殺さないようにしながら、握る手を刃に近づける。
そのまま刃はゼルドの肩へ迫り、
ゴト、と云う音と共に彼の腕は失われた。
ナナシは斧をブンブンと振り回すと、
「まだやるかい?」と尋ねた。
ゼルドは倒れ伏して返事も無かった。
最近更新した気で居たらもう半年くらい更新してなかったです。ごめんなさい。




