クズ殺しキャラクター短編 NANASHI KASHO
仮称ナナシ
「夜」
物心付いたときには独りだった。
学ぶべき大人も居ないし、話し相手も居ない。
成長がない、だからボクは子供だ。
"子供"という言葉が嫌だけれど、心のどこかはその言葉に何時も逃げ込んでいる。
自分の情報が無い。
仮称ナナシだって、自分で付けた識別記号に過ぎない。
だから、自分を誤認されると嫌だ。
性別は、数少ないボクの情報の一つだ。
間違えられるのは好きでは無い。
だから、怒りが湧く。
自分の意に添わないから。
けれど、"大人"ならばそれを愛想笑いで誤魔化すのかも知れない。
"子供"なボクにはそれが出来ない。
そういう運命を恨めば良いのか、子供でいる自分を恨めば良いのか、分からない。
ボクはいつか大人になれるのか、はたまた子供のまま終わるのか。
エル兄はボクを子供のままで居させてくれた。
その居心地の良さに甘えていたかも知れない。
エル兄はいつかボクを大人扱いしてくれるだろうか。
いいや、そんなわけは無い。
エル兄はもう死んでしまった。
いつかエル兄に、大人になった自分を褒めてもらいたかった。
もう叶わない夢だ。
夜が嫌いだ。
宵闇はこういうくだらない思考を強制してくる。
月灯りでいくら誤魔化そうと、人工灯でいくら灯そうと、宵闇はボクの心へ入り込む。
いくら考えたってこんな事は変わらない。エル兄は生き返らないし、ボクは子供のままだ。
だからこれは無駄な思考だ。
分かっていても辞められない。
……一つだけ、決めた。
ボクは大人になろう。
何時の日か死ぬその日まで、エル兄に誇れる自分で居よう。
そう決めた。
そして思った。
ポエミーな思考を強制するこの夜は、矢張り好かないと。




