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ハカナキ  作者: 梅屋凹州
一話「誰そ彼れの少女」
7/60

4.

 昨日――では、ないです。

 おととい――でも、ないです。

 わたしは、学校から帰りました。帰って、森を歩いていました。ぶらぶら、ずっと、歩いてました。


 理由……。

 ない、です。歩きたかったから、歩いてました。


 ……はい。それで、夜になって、朝になって、たぶん、お昼になって、また夜になりそうになりました。

 そしたら、疲れて、横になって、うとうとしました。


 ――はい。森のなかで、です。

 沼――池――どっちでしょう。水がたくさん溜まっているところを見つけたので、そこの近くで、ちょうどたくさんあった葉っぱをお布団にしました。たぶん、すぐに寝たと思います。


 それから……。

 それから、夢、見てました。


 夢、です。いっぱい。たくさん。色んな誰かになる夢でした。


 女の人とか、男の人も。腰の曲がったおじいさんも、暗い――砂嵐みたいな音がするとことか、血の匂いとか、蛆がたくさん沸いてたり、御札や人形が張ってある部屋、色んな、とこです。


 それで――……。

 いちばん最後に見た、夢が、女の人になる夢でした。


 女の人……お仕事毎日いっぱい、いやなこと、いっぱい。

 お休みの日、欲しいけど、なくて、夜おそくまで、仕事、たくさんで。

 男の人、お金返してくれなくて。結婚もしてくれなくて。

 いやだな、いやだな、って思いながら、毎日、お仕事、でした。


 それで――空が、キレイだったんです。

 とってもとっても、素敵な空だったんです。青空、キレイで、風がふんわりしてて。

 だから、終わりだな、って思いました。


 私の命は、今日で終わり、って。


 そしたら、目が覚めました。

 外は真っ暗で、月があって、わたしは、わたしでした。


 でも、沼を見たら、人がいっぱい浸かっていました。

 人――人、だったのかな。

 人の形をした赤くない炎、みたいな。

 首とか手足の先がなくて、そのかわりに揺らめいてて。

 そういう人たちが、沼のなかを歩いていたんです。


 よくわかんなくて、じっと見てたら、後ろから、誰かが見てるって思って。


 ぱって振り返ったら誰もいなくて、でも、耳に誰か囁いたんです。


 “わたしのかわりに見つけて”、って。

 

 それで振り返ったら、岸辺にこの手帳がぽつんって置いてあって。

 この手帳の持ち主を見つければいいのかな、って思いました。

 

 ……これで、お話しは終わりです。


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