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5話

「おい、大丈夫か?」


 戦闘が終わり、クーガーはオテロに近づいて傷の具合を確認した。

血は未だに流れているが、それも少量になっておりきちんと手当てすれば問題ない程度だった。


「あぁ…つっ、背中を一回切られただけだ。傷薬を塗ればそのうち治るさ。それより、他の奴らは大丈夫か?」


 とこっちに向かって来る男二人を見ると、多少の傷はあるが、どちらも無事なようだった。


「オテロさん大丈夫か!?すまない、俺たちを助けに来たばかりにこんなケガをして…」


「なぁに大した傷じゃないから気にするな。お前達が無事でよかったよ、それにコイツが来てくれたからなんとかなったしな。礼ならクーガーに言ってやってくれ」


 そう言ってオテロはクーガーを指差す。

男達はそれぞれにクーガーに礼を言った。


「ありがとう!あんたのおかげで助かったよ!」


「おかげで家族の元に無事に帰れる。本当にありがとう」


「そうか、まぁ…大きなケガがなくて良かったな」


 人に素直に感謝されることに慣れていないクーガーは頬をかきながら答えた。その様子が面白かったのかオテロは声を上げて笑う。


「まったくお前さんは、充分すごいことをやってのけたんだ。もうちょっと胸を張ったらどうだ?」


「余計なお世話だ」


 ばつが悪そうに答える姿を見てオテロはまた笑う。それに少しイラッとしたのかクーガーは傷薬を手に取り、オテロの傷口に乱暴に塗り付けた。


「痛っ!!おいっ、塗るならもうちょい優しくやれって!これでも立派な怪我人なんだぞ!?イテテっ、もういいって!後は俺がやるからもうやめてくれ!」


「なに遠慮しなくていい、傷が早く治るようによかれと思ってやっているんだ」


 ほらあんた達も、と予備の傷薬を男達に渡す。


「イタタ、わかったわかった!さっきのことは悪かったって!」


「そうか、ならもう少しで終わるから少しじっとしててくれ」


 そう言って今度は丁寧に薬を塗っていく。

少しして終わったと告げると、オテロはまったくひでぇ目にあったとぼやきながら男達に声をかける。


「すまねぇが、先に村に戻って村の奴らに無事に終わったことを伝えてもらえねぇか?皆も心配しているだろうしよ。俺はこんなんだから走って行けないからよろしく頼むわ」


 二人は二つ返事で頼みを引き受け、一足先に村へと走って戻って行った。


「俺たちもそろそろ行くとするか。肩を貸すか?」


「いや大丈夫だ、自分で歩ける。っとそうだ、手ぇ空いてるなら俺の斧を持ってくれねぇか?」


「それぐらいは構わない」


 斧を持ち、クーガー達はイルガ村へと歩きだす。その道中でオテロは尋ねる。


「なぁクーガーよ。お前さんはいったい何者なんだ?」


 いきなりの質問にクーガーは足を止める。


「何者って?」


「言葉の通りさ。さっきの戦いを目の前で観ていたが、はっきり言ってあれは異常だ」


 真剣な顔でオテロは語る。


「俺だって元冒険者だ。いろんな奴らを見てきたし、その中には勿論才能がある奴だっていた。だけどお前の戦いかたは違う、あれは才能に任せた戦いではなく、相手に合わせてその都度自分の行動を変えて戦う。そんなことが出来るのは、かなりの数の戦いの経験を重ねた奴らぐらいさ」


「……」


「お前のエンチャントの様子も観たが、あの術の掛かり具合から、お前のレベルや魔力の値もそんなに高くないとなんとなく考えがつく。だから聞きたい、そんなお前が何者なのかと、どうしてあんな戦いが出来るのかを」


「それは……」


 クーガーは一瞬、また誤魔化そうと考えたがやめた。今さらどう取り繕おうと意味はないと考えて、意を決して話すことにした。


「……突拍子もないことだが、俺はこことは違う世界から来た」


「…………は?」


 クーガーの言葉にオテロは口をぽかんと開けた。クーガーはそれにしても構わず話を続ける。


「神様って奴にここに送られて来たの」


「……俺を馬鹿にしているのか?」


「していないさ。だが他に言葉がない。そうとしか言えないんだ」


「―――まてまてまて、じゃあなんだ?…その、神様に送られて来たとして、何の目的で?それにさっきの戦いの説明は?」


「この世界に来るだろう勇者って奴の手助けをしてほしいらしい。……だが俺には荷が重くてな。代わりに俺のレベルやスキルのほとんどを渡してもらったんだ。戦いについては前の世界での経験としか言いようがないな」


 クーガーは包み隠さずありのままを話した。オテロはまだ信じきれないようで。


「本当に本当か?」


「嘘をつくなら、もう少しまとまな嘘をつくさ」


「…………………………わかった。お前さんの言葉を信じよう」


 長い長い思考の末、オテロはクーガーの話を受け入れた。


「そうか、それであんたは俺をどうするんだ?」


 いくらオテロが温厚な人物でも他の世界から来たという怪しい男をそのまま受け入れることはないだろう。村から追い出すだけならまだしも、捕らえられてもおかしくはない。さてこれからどうするかとクーガーは思考を巡らせていると。


「ん?別にどうもしないさ」


「…………なに?」


 オテロの言葉に今度はクーガーが口を開けた。


「他の世界から来たという話を来たっていう話にはさすがに驚いたが、それが本当ならいろいろ辻褄があうからな。それにお前さんが悪党でもない限りどうこうするつもりはないよ」


「そんなのでいいのか?」


「お前さんは俺だけじゃなく村の奴らも助けてくれた恩人だからいいんだよ。ってこんなやり取り、村に来る前にもやっていなかったか?」


 確かフランクを見つけた時にしたよな、とオテロは言った。


「そういえば…やったな」


「なら、この後のこともわかるだろう?さっさと村に帰るぞ」


 そう言ってオテロは再び村に向かって歩き始めた。クーガーはその様子をみて苦笑いをする。


「……これじゃ難しく考えてた俺が馬鹿みたいじゃないか」


 さっきまでどうやってこの場を切り抜けようかと考えていたのに全てが無駄になってしまった。全く本当に豪快なヤツだなと思いながらもオテロの後に続く。

心なしかその足取りは軽かった。

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