43話
ジグーが吼え、槍を振るう。先程と違い、手を抜くこと無く放たれる一撃。並みの戦士ならそのまま仕留められる一撃を。
「グゥッ!!」
ライアットは盾を使いそれを逸らす。
正面から受けるのではなく当たる瞬間に角度をつけることで受け流した。
そして盾を構えたままジグーに向かって体当たりを仕掛ける。
ドン!、と衝突音を響かせるがお互いに飛ばされること無く競った状態になった。
「ソノ程度ノ力デ押シ勝テルト思ッタカ?」
「まさか、それが目的ではないさ」
ライアットの返答にジグーが疑問を持った瞬間、ジグーの足元に魔法陣が表れる。
ジグーが驚いたようだがもう遅い。
「生命を導く聖なる光よ、敵を捕らえよ!『バインド』!!」
光輪が何重にもジグーの体を縛る。
「ムゥッ!?」
すかさず光輪を破壊しようとするが、ライアットがそれを許さない。ジグーが身動きをとろうと足掻く度にそれを制していく。
そして全身を縛られ、身動きがとれなくなるジグー。
それを確認し距離を取るライアット。
「今だ!シータ!!」
「了解っ!いくわよ、全力全開!生命を照らす暖かな火よ、敵を燃やせ!―――吹き飛べっ!『フレイムストライク』!!」
一際大きな火球。それに込められた魔力もかなりのもの。
それをジグーに向かって真っ直ぐに放つ。
「グッ、オオオオオオ!!!」
大きな爆発を起こり火柱が上がり、ジグーは爆炎に包まれた。
「やりました!」
「どうみても直撃だもの、当然!」
手応えを感じ喜ぶシータ。全力で放った一撃を食らわしてやったのだ。そう思うのも無理はなかった。
「待て」
ライアットは爆炎から目を逸らさずに言った。
確かにシータの魔法はジグーに当たった。威力も申し分ない。しかし、肌を突く威圧感が拭い去っていない。まだジグーの死体を見てはいない。
「どうやら、まだ終わりではないらしい」
煙が晴れていく。その中でいまだに立ち続ける影。
片腕は無くなり、全身を焼かれながらも槍を突き立て立ち続けるジグーの姿があった。
「……ロス」
「え?」
「ヤッテクレタナッ!!女アァ!!貴様ハバラバラニシテコロシテヤルッ!!!」
怒号と共に駆けるジグー。満身創痍でありながらも体から溢れる殺気は減るどころか増していた。
「シータ!」
「わかってる!取り敢えず勢いを止めるっ。生命を照らす暖かな火よ、『ファイアーボール』!」
すぐさま火球を放つ。詠唱を短縮したことにより威力は落ちるが足止めは出来ると踏んだ攻撃。
それは防がれること無くジグーへ当たるが。
「嘘っ!?止まらない!?」
直撃したはずなのに足を止めるどころか勢いを殺すことも出来ない。
尚も向かって来るジグーを止めるためにライアットが立ち塞がる。
「なんとしてでも止めてみせる!『フィジカルエンチャント』!」
自身に魔力を施しジグーの突進に備える。
ここで止めねば後ろの二人だけでなくその後ろにいる康一も危ない。
盾を構え迎撃の形を取る。
「邪魔ダアアアア!!」
立ちはだかるライアットに向け槍を振るう。
片腕しかない腕でなぎ払うように振るった攻撃をライアットは呼吸を合わせ盾で逸らした。
これでさっきと同じように盾で押し込んで動きを止められればと一歩踏み込もうとした瞬間。
「二度同ジモノガ通ジルト思ウナヨ!!」
ジグーが放った蹴りがライアットの脇腹に直撃する。
「がっ、はあっ!」
鎧越しからでも襲う衝撃に顔を歪ませながらライアットは蹴り飛ばされていった。
「ライアット!」
「シータさん下がってっ!」
ライアットを蹴り飛ばしたジグーはすかさず二人に接近する。
リフルはシータの前に立ち詠唱を始める。
「生命を導く聖なる光よ、我らを守りたまえ!『バリア』!!」
ジグーとリフル達の間に光の壁が表れる。
「無駄ナ足掻キオッ!!」
叫びを上げながら槍を叩きつけ光の壁を破壊しようとするジグー。
リフルもバリアが壊されぬように追加で魔力を込め続ける。
「うっ…、くぅっ」
一度、二度三度と振るわれる度に壁にヒビが入る。
いくら魔力を込め補強しようとも、ジグーの力はそれを上回っている。
なんとか援護しようとシータも詠唱を始めようとするが。
「サセルモノカアアアア!!」
一際大きく振りかぶって下ろされた一撃が壁を壊し、地面に叩きつけられた。
「きゃあああ!!」
衝撃によって飛んだ破片が二人に襲いかかる。
近くにいたリフルは破片で肩を負傷してしまう。
「リフルッ!!」
倒れたリフルに駆け寄り傷の具合を見る。
血は出ているが重傷と呼ぶまでに深くはない。これならばまだポーションでなんとかなる範囲だ。
早く治療しなければと思ったが。
「サア……トドメダ。女ァ」
目の前のジグーをなんとかしなければならない。
リフルは負傷。ライアットはまだ距離がある。自分も詠唱したところでジグーの槍の方がどうしたって早い。
「万事休すってわけね…」
慢心していて訳ではない。しかしどこかで自分達ならば問題ないだろうと過信していたのは事実だ。
シータは追い詰められているこの状況でどうすべきか思案を回していた。




