41話
オークを倒し更に奥へと進む康一達。
心配だった康一の状態も、一度戦闘を行ったことにより今は安定している。まだ不安はあるがこの分なら大丈夫だろうと、この任務とそれから先の事を考えるライアット。
そんな中、微かな異音を聴いたライアットが直ぐ様戦闘体制を取った。
「待て!」
「どうしたんですかっライアットさん?」
「――どうやらしたっぱが戻って来ないようだから探しに来たらしい」
その後言葉を聞いてシータとリフルも構え、少し遅れて康一も剣を構えた。少し待つと木々の間からオーク達が現れた。
出てきたオーク達は数は六体。先程倒したオークと比べると体躯は少し大きい。それを見てライアットはコイツらが本隊だと判断した。
「コイツらを仕留めれば終わりだ、……覚悟はいいな?」
ちらと康一を見る。康一は強く頷き肯定を示す。体の震えも先程に比べれば目に見えてマシになっている。
「よし。――いくぞっ!!」
四人の中では一番足の遅いライアットが真っ先に飛び出した。後方ではリフルとシータが魔法の詠唱に入る。そして康一は一拍置いてから駆け出す。
数の上で不利。ならばまずは数を減らす。シータは全体ではなく確実に一体を屠る魔法を選択した。
「生命を照らす暖かな火よ、貫き滅せ!『フレイムランス』!!」
魔力よって作り上げられた火の槍は一体のオークへと目掛け放たれる。放たれた火の槍はオークの体を貫き穴を開け、その熱を持ってオークの体に火が回る。
「―――――――!?!?!?」
声にならない断末魔を上げてオークは絶命した。しかし他のオークはそんな事には構わずライアットへと攻撃を仕掛けてきた。どうやらさっき倒したオークに比べても戦いなれしているらしい。
『エンチャント』
だがライアットは慌てること無く剣に魔力を纏わす。やることは変わらない。敵の攻撃を防ぎ、反撃し仕留める。基本に忠実で確かな戦法。それを一人でも高い実力でこなせるからこそライアットは強い。
オークが放つ槍を盾で上に弾く。がら空きになった胴体に剣を突き刺し、真横に切り裂いた。続けて迫るオークが斧を振るう。ライアットは腰を少し落とし盾を構える。
ギィン!と大きな音が響くが、ライアットは微動だにせずこれを受けきる。
オークは直ぐに斧を引き二発目を放とうとするが。
「生命を導く聖なる光よ――『バインド』!」
リフルがそれを許さない。光の輪がオークを捕らえる。
「やああああぁぁっ!!」
そしてライアットの脇を猛スピードで駆け抜けた康一がそのオークを切り裂く。
三体倒して数は逆転し、四対三。
すると不利を感じたオークは突如空に向かって叫んだ。
「っ!?なに!?」
突然の行動に身構える四人。
しかし何か起こる訳でもなかった。
「苦し紛れの行動でしょうか?」
「分からん。だが、下手に長引かせるのはよくはないだろう。リフル、一応周囲の警戒を。シータは魔法で援護を。康一、今回は一緒に仕掛けるぞ」
全員が了解を示し行動を開始する。
シータは詠唱を始め、リフルは何が起きても対応出来るように構える。そしてライアットと康一は同時にオークへと駆け出した。
「生命を照らす暖かな火よ、敵を燃やせ――!『ファイアーボール』!!」
オークに向かって放たれる十五を超える火球。それが弾幕となってオークへ飛翔した。
「――――!!!」
一体のオークが残り二体を庇うように前に出て、魔法を一身に受ける。
「オークが仲間を庇った!?」
本来ならあり得ない光景にシータは驚く。仲間を盾にすることはあっても、盾になるということは今まで聞いたことがなかった。
「構うな!このまま攻め込む!」
倒れたオークの後ろから残り二体のオークが飛び出す。
ライアットが盾を構えたまま康一の先頭に立ち、勢いそのままにオークをその攻撃ごと弾き飛ばした。
「そっちは任せるぞ!」
「はいっ!」
康一は吹き飛んでいまだ地面に転がっているオークに近づき剣を突き立てる。
オークは二度三度体を痙攣させ、そして動かなくなった。
「―――ふぅっ」
剣を抜き息を吐く康一。ライアットの方を見ると既にトドメを刺し終えていた。
「お疲れ様です。お怪我はありませんか?」
「心配しすぎよリフル。どうみたって無傷でしょ。ほらコイツなんかオークをふっ飛ばしたってのに、ケガどころか、疲れた表情すらしてないわよ」
そう言ってシータはライアットの体をバンバンと叩く。
それを見たリフルは乾いた笑いしか返せなかった。
「まあ、でもこれで討伐は終了でしょ?初めてにしてはまあまあいいんじゃない?」
「初めてにしては、な。これから先に備えてまだまだ鍛えねばならないことは多いが」
「は、はい頑張ります」
「真面目なのはいいけど今ぐらいもうちょっと素直に喜びなさいよ。反省なんか後でいくらでも出来るんだから」
「ふふっ、そうですね。記念すべき私達の初勝利ですもんね」
戦闘が終了したことにより少し和やかな空気が流れる。
立て続けに戦闘を行ったことで康一はまだ息が切れているが、全員負傷なく勝利出来たのは大きな戦果だった。
「とりあえず村へ戻るか―――っ!?」
村へ戻ろうと踵を返した瞬間、突如として強い威圧感が襲う。
「何……っ!?コレっ……!?」
頬を伝う冷や汗そのまま警戒を強めるライアット達。気配のする方を見つめながら戦闘体制を構え続ける。
段々と気配が強くなり、その気配の主が姿を表した。
「―――――!?」
その姿を見た瞬間、康一は無意識のうちに体が震えだした。
見ただけで解る。あれは今さっき倒したオーク達とは桁が違う。
見た目こそ体躯が更に大きいだけのオークに見えるが、纏う空気が違う。ただそこに居るだけなのに胸が苦しくなるほどの威圧感を感じる。
「ちょっとライアット。あんたさっきのが本隊って言ってなかった?」
「俺もそうだと思ってたんだがな…。どうやらとんでもない当たりを引いたらしい」
言葉こそ軽いが、二人とも目の前のオークから視線を外すこと無く警戒を強める。
「餌ガ来ナイト探シニ出シタ者ガ吠エタカラ何カアッタカト来テミレバ」
「!?」
目の前のオークが人語を話した事に驚く康一達。
「コノ程度ノ人間ニ殺ラレテイタトハナ」
「まさかこんなとこでお目にかかるなんてね」
人の言葉を理解し、群れを纏め上げることができる魔物の上位存在。
「気を引き締めろっ…!コイツは、"魔族"だっ!!」




