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2話

 オテロの案内で二十分ほど森の中を歩くと村の入り口が見えてきた。


「着いたぞ、あれがイルガ村だ。とりあえず村のモン達にお前さんの事を説明しなきゃならんから、少しの間入り口で待っていてくれ」


 そう言ってオテロとフランクは村の中に入っていった。オテロが戻って来るまでやることもないのでクーガーは村の様子を眺めていた。

小さな村だが子ども達が無邪気に走り回っていたり、行商人が商売をしに来ていたりとわりと活気があるんだなという感想を抱いていると二人が戻ってきた。


「おぅ、待たせたな。話は付いたぜ。とりあえず俺のウチまで案内するからついてきな」


 わかったとクーガーは頷き、オテロとフランクと共に歩き出した。







「お帰りなさいアンタ、フランクも。あら、そっちはお客さんかい?」


 家の中から出迎えてくれた女性を見てクーガーは驚いた。オテロの妻ということで、恰幅の良い、肝の座った人だと勝手に考えていたが、実際には端正な顔立ちで女性らしい体型をしている人だった。そういえばとフランクを見る。どうやら母親の血を濃く引いたらしい。父親に似なくてよかったなと、そんなどうでもいいことを思っている間にも話は続いていく。


「おぅ、名前はクーガーっていってな、森で迷ってたフランクを保護してくれてたんだよ。行く当てが無いっつうもんだからつれてきた」


「まぁ!?そうなのかい?、じゃあ恩人さんだねぇ。何もないとこだけどゆっくりしていきなよ」


 そのやり取りを見て思わず頬が少しゆるむ。たまたま息子を見つけただけなのに恩人といって家に迎え入れるこの夫婦のお人好し加減に少し心が温かくなる。


「礼を言う。それじゃあ、邪魔をする」


 言い馴れてない礼を返して、今は素直にこの好意を受けることにした。







 家に上がり一時間程、クーガーは記憶を思い出す切っ掛けになるかもしれないと適当に理由をつけ、オテロに話を聞いていた。


 この大陸では昔から人と魔族が争い続けていた。そして十年前にそれまで個別に村などを襲っていた魔族達が徒党を組み、大陸の各国に侵攻を始めた。特に中央に位置するローランド王国には、他の国の倍近い数の魔族達が攻めてきた。

これに対して国王のエルバートは自ら騎士団を率い、ローランド王国に属する冒険者ギルドにも応援を要請し魔族を迎えうった。結果は各国とも魔族を退けることは出来たがそれぞれ多大な被害をうけた、特にローランド王国は国王エルバートと、夫と共に戦いに赴いた王妃アリシアが戦死、騎士団と冒険者の実力者もそのほとんどが亡くなった。

それから国王の一人息子のリオンが当時僅か五歳ながらも王位に即位。周りの臣下に支えられながらも王国の復興に取り組む。しかし各国の復興するはやさより魔族達の勢いが強く、人々は少しずつ追い詰められていった――


「とまぁ、今の状況を砕いて言うとこんな感じか。どうだ?なんか思い出したか」


 オテロはコップの水を飲み干しながら尋ねた。それに対しクーガーは首を横に振る。思い出すも何もこの世界に来たのはついさっきなので記憶があるわけでもないのだが。

そんな事など知らずに、まぁこんなんで思い出したら苦労はねぇか、とオテロは頭を掻きながら苦笑いする。


「それにしても、なんでローランド王国だけ魔族の攻撃が激しかったんだ?」


「エルバート国王が魔族の討伐に力をいれていてな、騎士団で討伐の遠征は勿論、場合によっちゃ冒険者ギルドにも協力を要請するぐらい積極的だった。噂じゃそれで国王に恨みのある魔族が集まったなんて言われているんだ」


「詳しいな」


「昔は冒険者としてローランド王国の冒険者ギルドに所属していたからな。だが十年前の戦いで傷を負っちまってな、こうして前線から離れてアメリアとフランクと暮らしているのさ」


 ほらよと言いながらオテロは袖を肩口までまくる。すると肩から腕にかけて深い傷がしっかりと刻まれていた。その傷跡をまじまじと見ていると


「まぁ今は全盛期ほどじゃないがある程度は戦えるからな、そんじょそこらの魔物ぐらいならなんとかなるさ」


 がははと力こぶを作りながら笑う姿をみて、余計な気を使わせてしまったかとクーガーは苦笑いした。


「おっと魔物との戦いで思い出した。そういえばお前さん今は何も持っちゃいないが、武器とかは何を使うんだ?さすがに素手ってことはないだろう」


「扱える武器は鎚だ」


「鎚?鎚ってぇとハンマーとかか?へぇ、ドワーフでもないのにそりゃまた随分と珍しいな」


 だろうなと返すクーガー。元の世界でもいるにはいるが、剣や槍などに比べ圧倒的に数は少ない。クーガー自身も全く扱えない訳ではないが基本一人で戦うので大振りであるハンマー等はあまり使った記憶はない。

ふとオテロは少し考え込んだあと、何か思い付いたのか、ちょっとついてこいとクーガーを連れ出し、そして庭にある小屋へと案内した。


「ここは?」


「倉庫っつうか、武器庫だな。親父が加治屋でな、まぁだいぶ昔に死んじまったが。ここには親父が生きてる時に作った武器が置いてあるってわけだ」


 オテロは小屋の中に入り、奥の方で何かを探し始める。


「おっ、あったあった」


 お目当ての物を見つけたオテロは手にした木箱の中から一本の金槌を取り出しクーガーに見せてきた。


「…?これは?」


「親父が自分で作り武器として使ってたスレッジハンマーだ。先端のハンマーヘッドにはアダマント、柄には振り回しても耐えられるように柔軟性と強度を兼ね備えたティグリルの木を使った世界に二本と無いであろう一品だ」


 余程自慢の逸品なのだろう。すらすらと言葉が出てくるオテロの顔は誇らしげだ。


「よく作れたな、素材だってどっちも貴重なものだろう?」


「親父が加治屋で稼いだ金をこのハンマーを作るためにつぎ込んだからな。おかげでガキの頃は苦労したもんさ」


 昔を思い出したのか、しみじみとした表情で語るオテロ。


「それで、これを俺に見せてどうしたんだ」


「なに、この先手ぶらだとなにかと不便だろう?だからこれをお前さんにやろうと思ってな」


 軽い感じで父親の形見をくれてやると言ってくるオテロに対してクーガーは正気かと答える。


「待て、さっきの話だとアンタの父親が相当な熱意を持って作り上げた武器だろう?それを人に渡すだなんて」


「確かにこれには親父の思いが込められている。だがな――」


 受け取りを拒否するクーガーの目を真っ直ぐに見つめオテロは続ける。


「これは武器なんだよ、武器は使われなきゃ意味がないんだ。直感なんだがお前さんなら使いこなせるかもしれないと感じた。だったらそういう奴に渡したほうがいいだろ?」


 武器は振るわれてこそその真価が生まれる。飾られるだけの武器なんざ価値はないと。だからこそ振るえる者に渡したいと。


「どうして今日会った奴にここまでするんだ?フランクを見つけた礼ならここにつれてきてもらっただけで充分なのに」


「これについてはそんなんじゃないさ。親父が作ったこの武器をこのまま倉庫にしまっておくのは忍びなくてな。まぁそれとなんだ、なんとなくお前さんなら十二分に使ってくれると思ったから、だな。だから是非とも使ってやってくれ、頼む」


 そう言ってオテロは頭を下げた。少ししてクーガーはハンマーを受け取る。


「……わかった。そういうことなら、ありがたく使わせてもらう」


 クーガーはオテロの真意を深く理解した訳ではない。だが今日会ったばかりの男に頭を下げて頼む姿をみて何かを感じた。


「おぅ、ありがとうな」


 オテロはどこか安心したような表情をしていた。


「さてそれじゃそろそろ戻るか」


 ここにはもう用がないからなと二人して小屋を出ると


「オテロさんっ!オテロさんはいるか!?」


 村人だろうか、一人の男性が息を切らせながらオテロ宅まで駆け込んできた。


「どうした!?何かあったのか!?」


 その様子にただ事じゃないと感じたオテロは男性に駆け寄り話を聞く。

男性は呼吸も整いきらないまま話を始めた。


「大変だ村の近くにゴブリンが出やがった!!」

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