24話
「はい、こちらが今回の依頼の報酬になります。頼まれたとおりに三等分にしておきましたので、それではお疲れさまでした」
クーガーは礼を言って三つの小袋を受けとる。そして広間に戻るとそこで待っていたルセアとソーマ。クーガーは二人にそれぞれ報酬を渡した。
「ありがとう」
「どうも。いやーそれにしても帰りは魔物が出なくてほんっと良かったわー」
「私からしたら物足りないのだけれど」
「俺からしたら行きのヤツだけでお腹いっぱいなんですよ」
「貴方は結局何もしてないじゃない。私とクーガーで全部倒したのよ?」
「お前が真っ先に敵に突撃したからでしょーが!?それをクーガーに助けてもらったんでしょ!!それに俺は依頼主のオッサンを守ってたんだからなにもしてない訳じゃないの!!」
ギャーギャー騒ぐ二人を尻目にクーガーは席に座り一息つく。あの戦いでゴブリンを討伐した後、依頼主である商人を村まで送り届け、そこで一泊したのち早朝に村を出発してウォレスへと戻りギルドへ依頼完了の報告を済ませて今に至る。
「おっ?やけに騒がしいと思って来てみたら、なんだお前ら戻って来てたのか」
いまだに収まらない二人のやり取りを音楽代わりに聴きつつ、これからどうするかと考えているとたまたま通りがかったシグマが声を掛けてきた。
「あんたか」
「相も変わらず愛想がないなお前は」
「男に愛想よくしても仕方ないだろう」
「そりゃそうだ」
そう笑ってシグマはクーガー達と同じ卓に座る。朝から追われていた書類仕事がようやく一段落し、一息ついていたらその休憩 中にルセアとソーマの声が聴こえたので覗きに来たらしい。そう言われた二人は互いに騒がしいのはお前のせいだと、また言い争う。まだ続けるのかとため息を吐くクーガーにシグマは今回の依頼はどうだったと尋ねる。そしてクーガーから依頼中の出来事を粗方聞くとシグマは腕を組始めた。
「なるほどな、しかしあの周辺でそんなにゴブリンが出るとはな…」
「普段は出ないのか?」
「なくはないが、数は少ないんだ。……ちょっと調べてみるか。なにもないと思いたいがな。お前らも依頼終わりだから今日は休んでおけよ」
今の現状を考えて何もないとは言い切れず、それを証明するために調査をしなければなとシグマは考える。
元々は戦場で頭を使わず魔物相手に武器を振るうだけでよかったのに、今では朝から晩までいろんな事に考えも気も回さないといけない。
そこまで考えてせっかくの休憩なのに休憩になっていないと気付き、苦笑いをする。どうやら休憩は終わりにしないといけなさそうだ。
それじゃあな、とシグマは休憩を切り上げ執務室へと戻っていった。途中から言い争いに飽きたのか疲れたのか分からないが大人しくなっていた二人もシグマを見届ける。
「さて時間はあるけどこれからどうしますかね~」
「そう言えばクーガーって魔法は使わないのの?使っているところを見たことがないけれど」
初めて一緒に戦闘を行ったが、いまだ駆け出しの冒険者である自分からみてクーガーの戦い方がレベルが近い自分達とは違うと感じたルセア。依頼に行く前に共有したステータスを思い出しても初級の魔法位なら扱えると思ったからこそ出た疑問だ。
「まだ使ったことはないな」
前の世界では当たり前のように使っていたが、この世界に来てから何度か試したものの成功した試しはない。最初はステータスの低下のせいだとと思っていたが、レベルが上がりステータスも上がったのに初級の魔法もまともに使えずにいた。
「意外ね。あれだけ戦えるのだからてっきり使えるものだと」
「どうも上手く出来なくてな」
歯切れ悪く答えるクーガー。それを見たソーマが何かを思い付く。
「それならヨダ爺のところで教えてもらうといいんじゃないか?」
「ヨダ爺?」
「今はもう現役を退いてる元冒険者の爺さんだよ。魔法が得意な人で、時たま後輩に魔法の指導をしてくれるんだよ」
「あら、いいんじゃないソレ。確か今日ならギルドの裏庭に来ているんじゃないかしら」
ソーマの話を聞き、受けてみるかと考えるクーガー。初級の魔法とはいえ使えるようになればそれだけでも戦闘でとれる行動は増える。どうせこの後に予定など無いのだから構わないかと行くことを決めた。
「おっ。行きますか?なら俺が案内してやりますよ」
このあと予定もないし丁度いい暇潰しだと笑うソーマ。対するルセアは少し残念そうな顔をしていてクーガーはどうしたと尋ねると。
「私は依頼が終わったら家に顔を出すようにと父様に言われてるから一緒には行けないの。でも貴方が上手くいくことを期待しているわ」
頑張ってね。と言い残しその場を離れるルセア。それを見送った二人も裏庭へ向けて歩きだす。その道中。
「そう言えばあいつは父親に呼ばれたと言っていたが――」
「あぁ。あいつの親父さんってウォレスの騎士団の将軍の一人なんだよ」
それを聞いてクーガーは驚く。確かに言葉遣いとかはそれとなく貴族みたいだと思っていたが、それに比べ戦闘中の猪突猛進の行いでそうは見えなかったからだ。
「やっぱりお前さんも驚くよな?でも本当なんだぜコレ。アイツなんか戦場なんかに出ないでも悠々自適に暮らしていけるのに。何を思って冒険者になったんだか」
確かに貴族の、それも騎士団の将軍の娘という立場なら戦う必要などない。それなのに危険な冒険者になったのにはそれ相応の理由があるのだろうと思うクーガー。しかしソーマですら分からないことをクーガーがいくら考えたところで答えなぞ出るはずもなく、少ししたところで思考を切り上げソーマと共に裏庭へと歩いていった。




